君の喜ぶ顔が見たい
2021年 結婚記念日に外食した時のお話
結婚記念日に外で食事をする。
せっかくの記念日だ、ホテルのレストランでフランス料理のフルコースを予約した。
席についたときは夕暮れだったが、食事が進むとともに次第に日が落ち夜景に変わる。超高層のレストランから見る夜景は美しかったが、正直、料理の味については全く分からなかった。シェフには悪いが私には牛丼のほうが合っている。だが、妻が喜んでくれている。その笑顔に私は満足する。
まだ結婚前、私は妻をイチゴ狩りに誘った。
妻がイチゴ好きなことは分かっていたし、いつかは行こうと思っていた。絶対に楽しんでもらえる、それは切り札のようなものだった。笑顔の妻が言う。
「あなたもイチゴが好きなの?」
一人暮らしの男がイチゴなんか食べるものか。高級品だし、特に買おうとも思わない。そう言うと妻は顔を曇らせ「それじゃあ悪いよ、別のところに行こう」と言う。
分かってないなあ、分かってない。私は答える。
「君は大好きなイチゴが食べれてうれしい、僕はイチゴを食べて喜ぶ君の顔が見れてうれしい、ハナっから目的が違うんだからいいんだよ」
妻が目を丸くする。ほら、分かってなかった。
「だから一緒に行こ」
「うん」
その気持ちは結婚した今でも変わらない。
味の良く分からないフランス料理、だがそんなものはどうでも良い。私にとってのメインディッシュは妻の笑顔なのだから。