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ふたりは女子高生《Ri's》バンド  作者: azakura
2章 Teen's Music Servival 予選
9/13

2次選考 結果

 全組演奏終了後、参加した十七バンドの前で通過バンドが発表される。選ばれたのは【ストロベリー・シロップ】、【なつみかん】、【ドリーマーズトレイン】の三組。リズの名は呼ばれなかった。


「始めて二ヶ月ちょっと……、無理だったかな」

「ちょ、リカちゃん……!?」


 目を狭めたリカは、ショートの髪を振りまくように会場を出て行った。


「レベルが違いすぎる……。あれが優勝候補の演奏……」


 外の階段の端に座って、膝を抱えてうずくまるリカ。横を通る者たちの数は次第に減っていく。すべて敗退バンドだ。勝ち残った三組は本選の説明を受けている最中だろう。


「うまくいったと舞い上がってた私が……バカみたい」


 リカが弱々しく呟くと、


「落ち込んじゃってる? こんな所でうずくまってさ」


 なこの声。落ち込んでいる音色ではない。


「あの演奏を間近で聴けばこんな気持ちになるのも当然でしょ」


 顔を上げたリカは、ギターケースを背負って真正面で立つ相方にそっけなく言った。


「そっか」


 返答は、怒っている口調ではなかった。


「そういえばリカちゃんには【パラレルタイム】を解散した理由を話してなかったよね」

「……? 今、話すの?」


 なこは黙ってうなずいた。


「二年前に友達に誘われてバンドを組んで、順調だったんだ。ファンも増えたし、バンドも知られるようにもなって。けど、あたしだけが注目されるようになったのも事実、かな」


 ふいに、【ストロベリー・シロップ】の瑚南の言葉を思い出したリカ。


「“なこバンド”だとか、“なこのワンマン”とも言われるようになったなあ。メンバーは気にしないって言ってたけど、つらそうな顔してたのは……気づいてた」

「解散はなこから切り出したの?」

「うん。メンバーのあんな顔を見てたら、ね。一緒にやり続けられる雰囲気でもなかったし。解散を提案したらあっさり受け入れてくれたよ」


「そうなんだ……」

「その時にこう言われたんだ。『なこなら一人でもやってける』って。でも、そうは思わなかった。“何か”が物足りないとは思って。その“何か”はしばらくわからなかったけど、リカちゃんと出会って気づいたんだよ」

「私と?」

「うん、リカちゃんの作った曲を聴いた時。あたしにないものを持ってるって」


 そうしてなこは、愛嬌のあるくりっとした瞳に力を込めて、


「あたしだってリカちゃんに負けないくらい音楽が好きだから、音楽を職業にしたい。でも、一人じゃ足りない。だから……リカちゃんが隣にいてほしい」

「なこ……」

「リカちゃんが隣で歌ってくれて、いい曲を二人で作れて、思ったんだ。リカちゃんと組んで本当によかったって。音楽の神様がリカちゃんと出会わせてくれたんだって」


 恥ずかしくなるほどの真っ直ぐな想いに、リカは目頭が熱くなる。ぐっと涙を堪えて、なこの顔を改めて見たら、


「あのさ、売れるバンドに必要なのは演奏力だっけ? いや、違うでしょ」

「うん」

「“演奏”で世界を変えるんじゃない。“音楽”で世界を変える、でしょ?」

「うん」

「リズの曲は何度でも聴きたくなる曲。だからリズは何度でも聴いてもらえる、そんなバンドだって証明しようよ」

「うん!」


 リカが失った自信は、まだ完全には取り戻せていない。けれどハートに熱が入る。


「まだ選考は終わってないよ。やれることがあるよね」


 二次選考は敗退した。しかし本選に選ばれるのは二次選考を突破した五組のほか、一組がプラスワン枠で返り咲ける。二次選考での演奏が動画共有サイトに投稿され、最も再生されたバンドが勝ち上がるルール。二十五組のうち、たった一組の狭き門。


「そうだね、リズをもっと知ってもらわないと。ストリートでも高校でも、どこだっていい。私たちの曲を聴いてもらおう」


 リカは立ち上がった。冴え冴えしたツリ目がキラリと反射する。

 そんなリカの手を取ったなこは笑顔で、


「うん! やってやるぞ!」

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