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ふたりは女子高生《Ri's》バンド  作者: azakura
終章 《音楽》で世界を変えること
13/13

《音楽》で世界を変えること

 そして時が経ち。


 ――『第3回 Teens(ティーンズ) Music(ミュージック) Survival(サバイバル)』の本選から三ヶ月後。


 すっかり冬の季節。駅ビルの前を並んで歩くリカとなこ。ビルに埋め込まれた大型ディスプレイに“彼女たち”が映った時、二人は揃って立ち止まり、見上げた。


「ほんとにメジャーデビューするんだね。少し前まで同じ場所で競ってたなんて信じられない」

「羨ましいなぁ。あんなふうにMVを撮ってもらうのがあたしの夢なんだよね~」


 ディスプレイの映像は【ストロベリー・シロップ】のミュージック・ビデオ。そして彼女らの記念すべきデビュー曲はというと――……、


「曲、取られちゃったね」

「私たちで決めたことだけど、やっぱり変な気分」


 ……――リズが三ヶ月前のコンテストで歌った曲――『マジック・プラネット』。

 本選終幕後に審査員の倉霧兜汰から、グランプリと契約を予定するメジャーレーベルの担当者とともにこんな提案を受けたのだ。『リズの曲は素晴らしかった。【ストロベリー・シロップ】のデビュー曲として提供していただくことはできないか?』と。まさかの提案に驚いたリズの二人だが、リカとなこは相談し合い、曲の提供を決意した。


「演奏のうまいバンドがいい曲を歌うのが一番。そういう発想をすれば、ああいう形になるのも当然だと思う」

「下手だとこういうことになっちゃうんだっていう授業料だと思えば、まあ」


 本音を言えば、リズの曲として大切にしたかった。リカとなこが初めての共同で完成させた思い出深い曲。


「まあでも、まさか作曲家デビューが先になるとは思わなかったけど」


 リカはくすっと苦く笑うと、なこも釣られて笑って、


「だね。先に作詞家デビューしちゃうとは。印税が入ったら家族と旅行に行こうかな。リカちゃんは?」

「スクールの学費につぎ込むよ」

「あたしも旅行以外はそうするつもり」


 楽曲提供の他に、倉霧からこんな激励もあった。『“売れる”という意味でば、リズがグランプリでも私は文句なかった。けれど君たちは才能で結果を残しただけに過ぎない。最高の形で売れるためには準備が必要だ。その準備ができればリズは売れるバンドになる』と。“準備”として倉霧がコネクションを持つ音楽スクールへの入学を勧めてくれ、コンテスト三位の実績から学費の半分を免除してくれるそうだ。二人はすぐに承諾し、今は高校の後や休日に音楽スクールへと通い、プロになるための指導を受けている。


 ディスプレイに映る【ストロベリー・シロップ】を見つめたリカは、


(あの舞台はまだ遠い。課題が山積み。でも絶対にプロになって、また多くの人に聴いてもらいたい。だからがんばらないと。――なこと一緒に)


 ちらりとなこを見たら、彼女はニコッと、異性だったら即落ちしそうな笑みで、


「リズを結成したころはあたしが引っ張らなくちゃって張り切ってたけど、違うよね。あたしが引っ張るし、リカちゃんにも引っ張られるし。二人で上を目指そうよ。って、告白の気分で言ってみたり」


 はにかみが可愛らしい。男だったら惚れるだろうな、とリカは思った。


「迷惑をかけることもあるけど、改めてよろしく」

「うん、よろしく。あ、一つお願いしてもいい? 怜那ちゃんのサイン欲しいな。言ってなかったけどあたし【まどもあぜるⅡ世】のファンなんだよね~☆」

「この流れで? まあいいけど。あ、ファンだったんだ。だからあの番組見てたんだね。怜那も会いたがってたよ。最近はバタバタしてたけど、今度怜那も連れて遊びに行かない?」


「やった~。デートプランを考えなくちゃ!」

「デート? いや、私も一緒に行くから」

「冗談だって。三人でおいしいものいっぱい食べようね」

「なら表参道の――……」


 リカとなこは歩き出し、話に花を咲かせる。


 本当に変わったと、今更ながらに思う。

 なこと出会って、作り手として、届ける側として音楽に触れるようになって。

 灰色の世界はもう、目の前にはない。


 音楽おもいを聴いてもらう、この上ない喜びを知ってしまったから。


(なこ、ありがとう)


 ――――どうやら“音楽”で世界は変えられるみたいだ。

これにて完結です。

最後までお読みになってくださった方、ありがとうございました。

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