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オーデナリージャンプ  作者: 市丸 時化人
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声に出さないそれぞれのエール

僕は急いで団地の()()()にやって来た。

土曜、日曜とおばあちゃんの一時退院でレシーブにかける時間はないと思う。


今日がラストチャンスだ。

昨日は突然、父さんが現れ正直びっくりしたけど思わぬ形で

伝える事が出来てしかも協力してくれている。


「よし!やろう。」


どうでもいい事かもしれない。

けど挑まずにはいられない自分がいる。


自分なりのコツは掴めているつもりだ。


なんだか今日は調子がいい。

このままいってしまうかもしれない。

と思った瞬間にボールが乱れた。


調()()()乗りすぎた。


「よーしよし、いい感じだ。」


始めのトライで80回を超えた。

これは先が見えて来たぞと思えたのもこれまでだった。


1時間ほどの間に80回を超えたのはこの一回だった。後は50回を超えるのがやっとだ。


「落ち着け、そう一回落ち着こう。」


ぶっ続けでレシーブをしていたので

休憩をとってみた。気持ちと腕の痛みを落ち着かせる意味も込めて。


休憩を取る事で集中力がなくなるんではないかと気にしていたが思い切って取る事にした。


「ふぅ、調子は悪くないんだ。」


僕は自分に言い聞かせるように呟いた。

周りからみたら壁に向かってブツブツと独り言を言ってる

危ない少年に見えるかと客観的に考えたらなんだか笑えてきた。


「はははっ、まだ笑う元気もあるぞ。よし!やろう。」


少し笑い飛ばして、自分で自分を元気つけた感じだが気持ちは切り替えられた。


僕はレシーブを再開した。




昨日はなんとなく帰りの道を変えた。

そうしたらあの場所で誠にあった。


今日も誠はあの場所でレシーブをしている。しかもサッカーボールで。


紫がかった腕を見た。

何回も何回も失敗したんだろう。

しかし誠は今日もあの場所にいる。


遠目から誠を見る。


他の子よりはるかに小さい。

しかし彼はその体で自分の考えた事に挑戦している。


サッカーを辞めた時は少々寂しかったが彼が挑戦することを始めてくれて

少しだけサッカーを辞めてよかったと思う。


少しだけだが。


見つかると彼のやっている事に水を差してしまう。

むやみに頑張れとは言いたくない。

自分の納得するまでやってほしい。


「ただいま、薫生~おるかい?」


「お父さんおかえり~」


「よぉし、早速やおろかの~」


「お父さん、僕は()()()()()のが得意だからそれをするよ。」


「おう、任せた。」


「後はお父さんがするけん、終わったらコンビニ弁当買いにいこう。」


「ちが~う、今日はモスチキン!」


「KFCやろうもん。買いに行ったらそのままお母さんを迎えに行こう。」


「わかった。パパパっと終わらせるよ~」


「わはは!頼もしいやんか。」


権之助と薫生はモスチキンとバーガーを買ったその足で絵麻がいる

病院の駐車場で彼女と待ち合わせをした。


薫生はおばあちゃんの顔を見たいと言ったが面会時間が過ぎていた為、駐車場で待ち合わせとなった。

権之助と薫生は缶コーヒーとフルーツジュースを片手に絵麻を待っていた。


「遅くなってごめんね。」


「お母さん、おかえり~」


「なぁん、急ぐ旅じゃございませんって。」


「??そうなんだ。」


絵麻は一瞬、誠の事を聞こうかとしたが知らないフリをした。


「さぁ、出発。」


3人は帰宅して、薫生が丸めた洗濯物を見て笑いながら順番にお風呂を済ませた。


権之助は家に帰ってから落ち着きがない。普段はソファに座ったら動こうとしないのに

今日はソファに座ろうともしない。


お風呂から上がった絵麻が声をかけた。


「権ちゃん、オフロどうぞ。」


「あっそやね、入ろっかね。」


権之助がお風呂から上がるとテーブルの上にはチキンとバーガーが並べられていた。


「飲む?」


絵麻が短く聞いた。


「あ~まだいらんかな、薫生、遅うなったけん食べていいぞ。」


「僕もまだいらない。」


「なんで、お腹すいたでしょ?」

絵麻が薫生に言った。


「セイ君と一緒に食べるんだ。何をしてるのかはわかんないし助けることも出来ないけど、

待って美味しいチキンを一緒に食べることはできるよ。」


絵麻は微笑んで二人に温かいお茶を出した。



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