ブライアンのこしゃくな対応
「ほうアインを上げてきたか、まぁオレでもそうするな。」
ブライアンがノーマンズのポジションを確認しながら言った。
「どうするよ?」
サムが聞いた。
「なぁに、アインが上がってきても俺達の有利には変わりない、このまま追加点を狙う、そして奴らの息の根を止める。」
それを聞いたサムがニヤリと笑った。
ピピッ
審判の再会する合図がなった。
ブルーウッドのスローインから試合は再開される。
スローインのボールは素早くブライアンへと渡たり彼は先程までゆっくりと言っていたのとは真逆の速いスルーパスをサムへと送った。
そのボールにサムも反応している。
意表を突かれたレイアンはすぐさまサムを追う。
誠は前に出るか出ないか迷ってしまったがギリギリまで待つ事を選んだ。
「ポジションが大事なんだ、ゴールとボールを結んだ線に入るんだ。」
誠はそう言いながらポジションを修正してボールに集中した、なかなか動きを見せない誠にやりにくさを感じながら突進していくレイアンが背後から追いつきサムにプレッシャーをかける。
誠はサムがレイアンのプレッシャーを感じた事を察して膝を落とし両手を膝の位置まで下げ肩幅ほどに開いて一歩前に出た。
サムは右足のつま先でボールを引っ掛けボールをすく上げたシュートを打った。
誠は自分の右斜め上を横切ろうとするボール目掛けてジャンプした。
「キャッチ出来ない、それなら!」
誠は空中で左手にボールを預け右手でバレーのアタックにようにしてボールを弾き出した。
ノーマンズはコーナーキックのピンチを脱するがブルーウッドにペースを握られている、1人少ない事を意識しすぎるのとブライアンのテンポチェンジに対応出来ていない。
ブライアンに対抗しようと中盤の人数を増やしているがそれを嘲笑うかのようにブライアン以外の中盤はデフェンシブに動き、ブライアンはキープしたボールをすぐさまフォワードへのスルーパスを繰り出すのだ。
つまりノーマンズの中盤にボールを持たせず人数をかけた中盤の守備をブライアンの素早い球離れで交わされているのだ。
そしてブライアンの素早いパスには意図がある。
ノーマンズのもデフェンスは1人少なくなった。そのデフェンスとキーパーの間のスペースを狙っているのだ、その最大の意図は誠がキーパーである事。
誠は素人キーパーだ。
キーパーに大切なのはポジションニングとタイミング。
誠はブライアンが正確に出すデフェンスとキーパーの間のパスに前に出るのかそれとも待ってデフェンスに任せるのかその大切なタイミングが掴めないのである。
そんな誠に考える暇を与えずブライアンはまたパスを出した。
「どうする?待つか?」
誠はつま先立ちになったが一瞬ためらった、その場で構えようとした。
「誠!出らんかっ!」
権之助が大きな声かけたその言葉にハッとして誠はダッシュでボールに向かった。
間一髪、誠のクリアが間に合った。
「いかんな、やっぱり出るタイミングがわかってない。どげんしようなねぇ。」
権之助はまたもやあごひげさすりながら言った。
レイアンも息を切らせながら大声で指示を出している、ノーマンズの仲間も声を出してコミュニケーションを取りながら走り回っている。
なんとか自分達のペースにしたい、しかし思うように自分達のボールにはならない。
必死にボールを追いかけている。
観客にもそれは伝わっているがなんともならないもどかしさがある。
現に自分には関係ないとした顔をしてイスに座っている薫生も右手の人差し指のタップが早くなっている。
それを隣で見ていた絵麻が気づいて声をかけた。
「おや?薫生ちゃんゲームやめてたんだね。」(点)
ちょっとムッとした顔で薫生が絵麻を見た。
「ゲームをやめた?それや!ナイスやんか絵麻ちゃん!」
「???」
権之助が振り向き絵麻に向かって投げキッスをした。その飛んできたキスを薫生が横から手を出し握りつぶして捨てた。
「なんでやねん!」
ガクっと権之助がコケた昭和の匂いがする男である。
「せぇぇい!」
権之助が誠に声をかけた。