だがやるしかない。
誠を含め肩で息をするノーマンズデフェンス陣、それを見てアインはボールを呼んだ。
アインはボールをもらうと素早く反転してブレイスがボールを呼ぶ声を無視して長くて速いスルーパスを出した。
「ジャクソン、レニゾン追いかけるんだ!」
そう声をかけられた2人は走り出したがキーパーはそのボールををクリアした。
「いいか!あのボールは増えるから準備して追いかけてくれ!」
アインが言う。
「何を勝手な事言ってるんだアイン!オレにボールを回せ、ゲームメイクはオレがやるんだ!」
ブレイスが怒って言い放った。
アインはブレイスの言葉にいちいち反応する事辞めた、デフェンス陣の負担を軽くするにはもっと相手陣内で試合を進めないといけない。
そうは言ってもノーマンズの攻撃は単発である。アインからのそのボールしか攻撃がないと言っていい。
それでも何かを変えないとこのまま相手の攻撃だけで時間だけが過ぎて行く。
そんなアインの言葉にノーマンズデフェンス陣は彼にボールを集め出した。
そしてそこから長いボールで攻撃をする。
少ないながらもボールが回ってくる事に、ジャクソンとレニゾンはチャンスを見出し諦めずに走り出す。
だがアインからのパスへの対応を早めたブルーウッドFC、やはりアインの今のポジションではゲームメイクをするのは難しい。
だがやるしかない。
ハードなデフェンスを仕掛けてくるブルーウッドにアインとアンドリューがパスを回し掻い潜って前線へとパスを送る。
パスの精度は高くないがそのボールにジャクソンとレニゾンは諦めずに走り出した。
その姿勢にデフェンス陣のモチベーションも保たれている誠もしかりだ。
「少しずつ攻めの時間が増えてきたな。」
肩で息をしながらレイアンが呟いた。
「ヘイ、お前完全に仲間から無視されてるな。全然ボール触ってないじゃん、後半はもうボール触らないで終わっちゃうなかな?」
ブライアンがブレイスを挑発した。
「オレにボールを渡せよ!全然攻撃になってないじゃないか!」
カッとなりながらブレイスが叫ぶ。
「僕ちゃんにボールが回らないとオレらがキツくなってくるんだよ。」
ブライアンはニヤケながら呟いた。
ブレイスが叫びまくっているがアインは眼中になかった。
もうこの攻撃だけでいくと彼は決めていたからだ。アインは1人相手を交わしてまた前線へと速いパスを出した。
いいコースにパスが出てレニゾンが走り出していた、その途中でブレイスがパスコースにいきなり入ってきた。
「オレのボールだ。」
ブレイスはそう言いながらトラップしようとしたがアインの速いパスを見事にトラップミスをした。
ボールは大きく跳ね方向が変わってしまった。
アインは目を閉じ苦やしそうな表情を浮かべた、しかしレニゾンが諦めずにそのボールをブルーウッドのデフェンスの背後から追いかける。
「レニゾンが並んだ!」
誠の言葉にアインが目を開いたその瞬間、並ばれたデフェンスはレニゾンに体をぶつけその勢いでレニゾンは勢いよく転がった。
ピーーーーーーー!
「ファウル。」
審判の声が響く。
レニゾンが立ち上がって来ない。
ノーマンズの皆んながレニゾンに駆け寄ってくる中ブレイスはボールを追いかけガッチリと腕に中に持った。
「大丈夫かレニゾン。」
レイアンが声をかけた。
「足首が・・・。」
レニゾンは押された時に右足首をひねっていた。
「足首をひねったみたいやね。」
仲間に支えられるレニゾンを見ながら権之助はそう言いそしてベンチを見た。
ウイリー投入だろう。
そう思ったがベンチの様子が変だ。
上着を脱ごうとしたウイリーにコーチのステーブが何か言っている。
「あんた気はたしかか?」
フォープスは怒りを通り越し呆れてもうあんた呼ばわりで言った。
「くっ、まぁまぁレニゾンはすぐ復活するかもしれないじゃないか、ベンチに戻って来るまで待とうじゃないか。」
「だからあんた気はたしかかって言ってんだよ、見てみろよ仲間に支えられないと歩けないんだぞレニゾンはウイリーを投入して早めに点を入れれば逆転も可能だ!」
フォープスの言葉を無視しながらステーブはレニゾンが戻ってくるのを待った。
「なんばしようとやあのコーチは?なんでウイリーばはよぅ投入せんとや?ちょっと行ってくる。」
我慢出来なくなった権之助はベンチへと歩き出した。
「腫れが出てきたな、まずはアイシングをしっかりして病院に行った方がいいな。」
サッカー経験者のウイリーの父、ブリッジがレニゾンの足を見ていった。
「ほらレニゾンはプレー出来ないんだ。ウイリーを投入しよう。」
フォープスがステーブに言った。
「ま、まぁこのフリーキックを見てから考えよう。」
「なっあんたバ・・」
フォープスの肩をブリッジが掴んで首を横に振った。
「まずは見届けようフォープス。」
フォープスの肩に乗せたブリッジの左手は穏やかだったが逆の右手の拳は少し震えていた。
「あのバカタレコーチにガツンと言ってやらないかん、えっ英語出来んの?英語はちょっと〜言えんのんかい!」
権之助は1人ボケツッコミをしながら早歩きが加速していった。