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7 その姿はまさに変態


 まずは、二人の治療だな。

 回復魔法も問題なく使える感じがする。

 異世界ものでも作品によっては存在しない作品もあったりするから、ちょっとホッとした。


 まずは怪我の酷いミレーに手を翳す。

 さっきまでの非常時と違って、落ち着いてイメージを思い浮かべる事が出来る。

 でも失敗するのも嫌だから、分かりやすい単語をキーワードとして唱える。


治療(ヒール)


 魔方陣から温かな光が溢れて、ミレーの身体を包み込む。

 全身の傷が塞がっていく。よしよし、しっかり効果があるな。


 リイラにもかけて、完治させる。


 二人とも、傷はなくなったが目を覚まさない。

 この世界の回復魔法は体力までは回復出来ない仕様らしいから、まだしばらくかかるかもしれない。


 そうなると、このまま起きるのを待つのも良くないかもしれない。

 ここは危険な場所だ。


 メルギオスはなんとか倒した。

 でも、他にも強いモンスターが沢山いるらしい。

 今の俺はパンツのお陰で魔法が使えるけど、何が起こるか分からない。

 

 もし同じくらい強いモンスターが襲い掛かって来たら、二人を守れるとは断言出来ない。

 パンツを拾ったくらいでそんなに自信満々になれる筈もない。

 知らない場所では気弱で大人しいオタク高校生だからな、俺は。


 決めた。

 二人を連れて街へ行こう。

 

 近くに貴族の治める街があって、ミレー達はそこに立ち寄ってからこの森に来たと言っていた。

 訓練期間が終了次第、街へ戻るとも言っていた。

 きっと、学院の関係者が待機している筈だ。


 二人を送り届けて事情を話せば、快く迎え入れてくれるだろう。


 街の位置なんかは、魔法でなんとかならないかな。


 このパンドラパーツ(パンツ)の中には、俺の知らない知識や情報が詰まっている。

 自動で流れ込んできたもの以外にも、検索することで色々知ることが出来る。

 まるで大手の検索サイトみたいだな。

 あやかって、調べものの時はパンツ先生とでも呼ぶか。


 何か良い魔法が使えないかな……お。これなんてどうかな。

 周囲の地形を把握する魔法!


 キーワードは、俺が連想しやすければなんでもいい。

 つまりは、俺のセンスだ。

 さっきは初めての戦闘で慌ててたのもあってシンプルだったけど、かっこよく攻めたい。


 うーん、便利系の魔法は難しいな。

 誰に見られる訳でもないし、非戦闘時はシンプルでもいいか。

 戦闘する機会がもしあれば、かっこいい感じのを披露しよう。


 さて、これを使えば周囲の詳細な情報を手に入れることが出来る。

 どうせなら詳しい方がいい。


 周囲の様子を知るだけだし、キーワードはいいか。


 完全な無詠唱で魔法を発動する。


 俺の足元に魔方陣が広がる。

 丸い魔方陣の外周から、まるで波紋のように円が大きく広がっていく。

 それに従って、地形が俺の頭の中に浮かび上がる。


 おお、これはなかなか――。


「――づっ!?」


 慌てて魔法をキャンセルした。

 びっくりした。


 短時間で頭に飛び込んでくる情報量が増えすぎて、パンクしそうになったっぽい。

 っていうか、魔法が強力過ぎた。

 地面を構成する砂の一粒一粒、葉っぱの一枚一枚の形を把握するとか無駄でしかない。


 あー、なるほど。

 キーワードを使わなかったからか。


 イメージが固定化されてないまま発動したせいで、無意味な最大出力で発動されたわけだ。

 例えば、地図化(マッピング)、なんて口にしていれば、そうならなかったかもしれない。


 キーワードって大事だな。覚えておこう。


 しかし、まだちょっと頭が痛む。

 なんか怖いし、ここは別の方法を試そう。


 目的のものがある方向を指し示す魔法。

 ミレー達が来た街、で何とか教えてくれるかな?

 うん、いけそうな気がする。

 

道案内(ナビゲート)


 俺の掌の上に小さな魔方陣が浮かび上がって、更にそこから立体的な矢印が出現する。

 魔方陣が消えて手を下ろしても、矢印は消えない。


 向きを変えてみる。矢印の指す方向は変わらない。

 俺の少し前の決まった位置を保ったままついてくる。


 うん、これならなんとかなりそうだ。


 後は二人を抱えて……抱えて?


 問題がある。


 二人は美少女。

 上半身は革製の鎧を着ていて、所々に金属のプロテクターも装着している。


 が、下半身はミニスカートだ。

 しかもかなり短い。

 健康的な太ももがこちらを覗いていて、俺も覗き返したい衝動に駆られる。


 二人を抱えようと思ったら、見栄え的には二人同時にお姫様抱っこするしかない。

 ミレーの上にリイラを乗せるようにして、同時にだ。


 そうなると、女の子の太ももをがっつり触ることになる。

 いや、触りたいんだけどね。

 滅茶苦茶触りたいんだけど、女の子とろくに絡んだこともない小心者には、荷が重い。

 

 肩や小脇に一人ずつ抱えるっていう手もあるけど、そんな荷物みたいな運び方をするのは申し訳ない。

 二人は、命がけで俺を逃がそうとしてくれた恩人だからな。

 しっかり送り届けて、また今度会ったらお礼を言うんだ。


 ちなみに、リイラをミレーの隣に運んだ時は、腋の下に手を差し込んで足を引きずるようにして運んだ。

 ちょっと柔らかい感触もしたけど、鎧のせいでよく分からなかった。


 それどころか、一瞬死体を運んでるような気分になった。

 運んだことないけど。


 ……仕方ない。

 そろそろ覚悟を決めよう。

 

筋力上昇(パワーアップ)速度上昇(スピードアップ)


 魔法を使って筋力と速度を増加させる。

 これで二人を抱えたままでも、森の中をさくさく移動出来る筈だ。


 さあ、まずはリイラをミレーの上に乗せるとこからだ。

 引きずる訳にもいかないし、そっと持ち上げる必要がある。


 ミレーに比べて華奢なこの太ももの下に腕を、腕を――。


念動力(キネシス)


 魔法で二人の身体を浮かべることにした。


 なんですぐに思いつかなかったんだろうか。

 かつてないシチュエーションに、俺の豆腐メンタルが混乱してたのかもしれない。


 魔法は色々出来て便利だけど、結局俺が魔法の選択をしっかりしないと意味がないんだな。

 覚えておこう。


 二人の身体を、なるべく揺らさないように浮かべたまま移動を開始する。

 木が立ち並んでいてぶつけそうだから横にはしない。直立の体勢だ。


 おかげで、直立不動の美少女がスライドして俺の周囲をついてくるとかいう謎の光景が生まれてしまった。

 なんかあれだ。

 シューティング系のゲームとかのボスでいそうな感じだな。


 っていうかこれ、人に見られたら新手のモンスターか何かと誤解されないかな。

 俺、パンツ被りっぱなしだし。


 パンツを被って美少女二人を周囲に浮かべて迫ってくる男。

 間違いなく変態だな。

 俺がそんなの見たら、間違いなく全速力で逃げる。そして通報する。



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― 新着の感想 ―
[良い点] パンツ丸出しで魔法を放つ世界とは、また独自性が強いですねぇ。なかなかカオスな情景がイメージできそうです。 さくさくテンポよく進んでいくのが良いですね。 情景説明に心情描写を多く含み、スム…
2020/02/08 20:54 退会済み
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