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18 交通手段を追いかけて

総合評価100pt達成しました!

ありがとうこざいます!


 黒ローブの男。

 顔はよく分からないが、どこか戦闘狂っぽい雰囲気を感じる。

 リイラを追いかけ回して楽しそうにしてたのを見たせいで、嫌悪感が強い。


「ふふ、うふふふふふふ、なんて芳醇な、死……がくっ」


 だから返り討ちにした。

 動きは素早いものの、俺の眼でも追えるレベル。

 ≪念動力≫で動きを止めて、≪闇の見えざる手≫でぶん殴った。


 この黒ローブは明らかに暗殺者タイプ。

 門番の厳つい方と違って、パワーや耐久力は低そうに見える。

 そう思ったのは、間違いじゃなかった。


 一発目で大きく体勢を崩して、二発目で沈んだ。

 気絶する時も嬉しそうだったのが気持ち悪かった。

 なんだこいつ、変態か?


「あのドネスをこうも簡単に。やはり、尋常ではない」


「何か言いました?」


「いいや、何も。それで、これからどうするんだ?」


 厳つい方に脅迫(おねがい)して教師を呼び出してもらおうと思っていた。

 が、連絡用の魔道具はこの黒ローブが壊したらしい。

 一応確認しておくか。


 黒ローブは厳つい方がくれたロープで厳重に縛っておいた。

 協力していいのか聞いてみたら、賊が奪って使用しただけだ、とのことだった。

 今は有難いからいいけど、俺の悪行が増えていってる気がする。

 まぁ、今は気にする必要もない。


 厳つい方の案内でやってきたのは、客間のようなところ。

 さっきも確認した場所だ。

 そこにあった鏡が割られていた。


「もしかしてこの鏡が?」


「通信用の魔道具だ。確かに壊されているな」


「わー、粉々だー」


 割れた鏡をリイラが興味深そうに眺めている。

 しゃがみこんでいるせいで、太ももとパンツが強調されていい。

 とてもいい。

 是非とも正面から禁断のトライアングルへと突入したい。


 しかし、屋敷には誰もいない。

 通信用の魔道具も破壊された。


 こうなったら取る手段は一つしか無い。


「リイラ、俺達も首都へ行こう。きっとミレーもそこにいる筈だ」


「うん!」


 決定。首都まで追いかける。


 厳つい方が言うには、転移の性能は不明。

 人数や重量、距離に制限があるかもしれないし、ないかもしれない。


 制限があるなら。

 屋敷から近くへ飛んで、そこから馬車等でミレーを運び出したかもしれない。

 もし無ければ、ミレーごと首都へとひとっとびされているのは間違いない。

 

 どちらにせよ、急ぐ必要がある。

 リイラの話から推測して殺されてはいないだろうけど、それもいつまでの話か分からない。


 そう、ここは異世界。

 分からないことだらけだ。

 パンツから魔法が出るような世界で、俺の常識が通用するわけがない。

 つまりは何が起こってもおかしくない。


 首都に連れて行かれたミレーが、用が済めばすぐに処分されるかもしれない。

 リイラに刺客を差し向けるような連中だ。

 ぐずぐずしてられない。


「それじゃあおじさん、俺達は行きますんで。あとよろしくお願いします」


「まったく、ふざけた奴だ。通報しておくから、とっとと行け」


「よっしゃあ、行くぞリイラ!」


「うん!」


 目指すは首都セイルニア。

 後のことは全て門番の厳つい方に丸投げして、俺達は屋敷を後にした。





 時間は惜しい。

 だけど、着の身着のまま旅立つ訳にはいかない。

 昨日装備を整えた馴染の武具屋へと向かっていた。


「で、首都ってどうやって行くんだ?」


「うーんと、学院からこっちへ来た時には魔獣馬車だったよ。それで大体三日くらいかかったかな」


「馬車で三日……。魔獣馬車っていうのは、普通の馬車と違うのか?」


「全然違うよ!」


 魔獣馬車というのは、文字通り魔獣が引く馬車のことらしい。

 魔獣は速度は馬に劣る場合が多いものの、特筆すべきはそのパワーとスタミナ。

 馬に比べて多くの荷物を引いても速度はほとんど変わらず、最高速度も長時間維持出来る。


 荷が増えたり距離が長くなる程、魔獣の方が有利になるらしい。

 ここから首都へも、学院が誇る魔獣馬車で三日。

 普通の馬車だと五日か六日はかかるそうだ。


 全然違う。

 三日ですら長いと感じるのに、六日なんて経ったらミレーの安否が不安で仕方がない。

 ここは、魔獣馬車一択だ。


 しかし、魔獣馬車はこの世界でも貴重なものらしく、所有しているのは一部のお金持ちのみ。

 都合よく首都へ向かう魔獣馬車があったとして、乗せてもらうには相応の報酬がいる。

 つまり、お金だ。


 今の俺の所持金は銀貨七枚と銅貨九枚。

 これは、俺の体感で七万九千円くらい。

 お小遣いにしては多いけど、生活費として考えるとかなり不安に感じる金額だ。


 武具店に向かう道すがら、定期馬車便の乗り場があったから覗いてみた。

 価格調査ってやつだ。


「どう?」


「首都セイルニアまでは……一人銀貨二枚だってさ」


「うう、結構高いんだね」


 払えない金額ではない。

 けど、これは普通の馬車の値段だ。

 魔獣馬車だと一体どのくらいになるんだろうか。


 お金の無さを嘆きながらも、俺達は出来るジジイのいる≪オリット武具店≫へ到着。

 オリットというのは爺さんの名前だそうだ。


 昨日の戦いで装備に多少ガタが来ていたのでその修理。

 ついでに首都へ向かうことを伝えて、知恵を借りることにした。

 

「魔獣馬車か……冒険者ギルドへ行ってみることじゃな」


「冒険者ギルド?」


「運が良ければ、魔獣馬車を持つ貴族や商人が護衛を募集しとるかもしれんぞ」


「なるほど」


 これはいいことを聞いた。

 そうだよな。この世界には、テンプレの如く冒険者ギルドがある。

 ギルドといえば依頼。

 依頼と言えば護衛!


 依頼という形ならタダ乗り出来る上、報酬までもらえる。

 なんという一石二鳥。 

 やっぱりこの爺さん、只者じゃないな。


「ダメだったとしても、馬さえ用意出来るなら昔儂が使っておった馬車をくれてやっても良いぞ」


「ありがとう爺さん。とりあえず冒険者ギルドに行ってみるよ」


「おうおう、そうすると良い。じゃがな」


「うん? どうした爺さん?」


「そのパンツはそろそろ取った方がええんじゃないか? 趣味に口出しするつもりはないんじゃが、そのままだと衛兵に捕まってしまうじゃろ」


「げっ」


 屋敷からここまで、俺はパンツを頭に被りっぱなしだったことになる。

 なんてこった。

 あまりにも頭にフィットしてて忘れていた。

 

 パンツを被るのは、この世界では異端。

 良くて汚物を見る目で見られ、悪ければ捕まってしまう。

 気を付けないと。


「そ、それじゃあこれを」


「うむ、確かに」


「戻って来たら詳しく話すんで! あざっした!」


「お爺さん、またね!」


「気を付けていってくるんじゃぞ」


 防具のメンテナンス代金銅貨五枚を支払って、店を後にした。

 おススメのお店なんかも聞いたから、冒険者ギルドの後は食糧やその他必要なものを買い込む予定だ。

 がぜん楽しくなってきた。


 ちなみに、転移の魔法は俺も使えるっぽい。

 が、行ったことのある場所という制限があるせいで今回は出番がない。

 そうそう上手くいかないもんだな。



少しでも面白いと思っていただけたら、最新話下部から評価をお願いします!

大変喜びます!

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