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17 風でめくれたスカートの下にジャージを履いてた時くらいのやるせなさ


 気が付いたら異世界に居た俺は、モンスターに襲われそうなところを二人の少女に助けられた。

 その後更にドラゴンに襲われたが、拾ったパンツを被ることで窮地を脱することが出来た。


 そして二人を街に送ったはいいが、何故かその片方、リイラが謎の黒づくめに追いかけられているのを発見。

 話を聞くと、もう一人の少女ミレーも危ない状況にあるらしい。

 これを放っておいては恩返しも出来ない。


 俺とリイラは、ミレーがいるらしい屋敷へと乗り込むことにした。

 そして今まさに、門番を撃破したところだ。


「行くぞ!」


「うん!」


 やる気十分なリイラを連れて、いざ門の内側へと踏み出す。

 立派な門も大きな穴を空けられてしまっては台無しだ。

 勿論、俺の魔法で空けたんだけどな。


 ちなみに、門番のおっさんは殺してない。

 俺の放った必殺技はおっさんの横スレスレを通って、門を貫いたところですぐに消した。


 前と同じテンションで放ったら奥の屋敷まで貫通してしまうのは間違いない。

 ミレーを迎えに来たっていうのに、攻撃に巻き込んでしまったら本末転倒だ。


 門番の厳つい方は無言で俺を見ていた。

 多分実力の差を感じ取ったんだろう。

 何か言いたそうだったが、厳ついおっさんと話す時間なんて今の俺には存在していない。

 完全無視だ。


 門から屋敷まで少し距離があったが、今の俺は魔法で強化されている。

 あっという間に扉の前に着いた。


 何か罠があっても困る。

 リイラが到着するまでに安全を確保しておくべきだな。


 昨日までの俺とは違う。

 慎重に、かつ大胆に行くぞ。


視界良好(マジックロケーション)


 たった今思いついた魔法を、しっかりとしたイメージを持って発動する。

 目の前の扉、そしてその向こう側へと俺の魔力の波が広がる。

 そして返って来る。


 その反射の仕方で扉の向こうが大まかに把握出来た。

 前回のような失敗はしない。

 範囲は俺の前方十メートル程。

 特に誰もいないし、この扉にも罠は無いようだ。


 ついでに言えば、鍵も掛かっていなかった。

 豪華な扉を開けて、中を覗いてみる。

 

 魔法で把握していた通り近くには誰もいない。

 それどころか、広いホールのどこにも人影はない。

 階段の踊り場や、二階部分にもだ。


「お邪魔しまーす」


「鍵、開いてたの?」


「開いてたな」


 追いついてきたリイラと言葉を交わしながら、中へと踏み込んだ。

 豪勢なシャンデリアっぽいものに灯りはついておらず、薄暗い。

 奥に引きこもってるのか?

 どうにも、怪しい。


「気を付けろよ、もしかしたら待ち伏せされてる可能性もある」


「うん!」


 俺は最初からパンツを被っていて戦闘態勢。

 リイラもスカートを外して腰に纏めてある。

 まるでカーテンみたいだな。


 そして開かれた先にあるのは陽射しのように眩しい黄色のパンツ。

 素晴らしい。

 だけど、露骨にガン見するのも恥ずかしい。

 探索を続けながらも頑張ってチラチラ見よう。


 そうして屋敷を探索した俺達。

 それなりに広く、いくつも部屋があった。

 中にはあのエロティカルな教師のものっぽい部屋も確認出来た。


 しかし、屋敷の中には誰もいなかった。


「どうなってるんだ!?」


「ミレー、どこ行っちゃったんだろう?」


 俺の声がロビーに響く。

 返って来るのは心配そうなリイラの声だけだ。


 ミレーとリイラが寝かされていた部屋にも勿論行った。

 ベッドがいくつかある、医務室のような場所だ。

 ミレーの姿も荷物も、何も無かった。


 どうなってるんだ?

 ここはミレー達が通う学院の建物。

 森では生徒達が実習の真っ最中。

 誰もいないなんてことがあるのか?


「ここには誰もいない」


「リイラ、下がっててくれ」


「う、うん」


 俺の考えを中断させたのは、低くて渋い厳つい声。

 開け放していた入口付近に立っていたのは、門番の厳つい方だった。

 

 露骨に警戒して見せると、厳つい方は何も持っていない手を少し上げて、肩を竦めて見せた。

 何だ、敵意は無いアピールか?


 さっきは一方的に勝てたとは言っても、それは俺の頭に輝くパンツのお陰だ。

 油断する理由にならない。

 どれだけ高性能な武器を持ってても、俺が油断して槍を突きこまれたらきっと死ぬ。

 それだけはご免だ。


「どうあってもお前には敵いそうにないからな。それに、お前を通してしまった時点で私は門番失格だ。今更どうこうするつもりは無い」


「そんなこと言っていいのか?」


「構わん」


 きっぱりと断言する厳つい方。

 堂々と門番失格なことを言ってる。


 若干胡散臭いけど、今は少しでも手がかりが欲しい。

 信じてみることにする。

 何か知って風な口ぶりだったしな。


「学院の奴らはここにはいないのか?」


「居ない。普段は、というのが正しいがな」


 厳つい方の言い回しは、どこかキザっぽい。

 なんだこいつ。兜を外した姿を良く見るとイケメン風だな。 

 敵だ。

 カッコイイ奴は全員敵だ。


 けど、今はミレーを助けるのが先だ。

 ちっ、命拾いしたな。


「どういうことだ?」


「私も詳しくは知らないが、希少度(レア度)の高いパンドラパーツを使用して首都セイルニアと自由に行き来が出来るらしい」


「マジか」


 ミレーから教えてもらったところによると、この国で重宝されている≪パンドラパーツ(パンツ)≫にはレア度がある。

 当然、レア度が高い程に強力な魔法を発動出来る。

 そして、パンツそれぞれに得意な魔法の系統というものがある。


 厳つい方が言うには、あの教師は転移の魔法が使えるようだ。

 もっと詳しく話を聞いてみた。

 

 基本的にこの屋敷は無人。

 何か用事がある時にだけ使用される。

 所用の間も時間が空けば首都へと戻っている為、この屋敷に滞在していることはほとんど無いそうだ。


 今も、実習中の生徒が戻ってくる期限までは戻って来ることはない。

 何か急な用事でも出来ない限りは。

 その場合は、屋敷の一室にある通信用の魔導具(マジックアイテム)を使って門番が連絡をするらしい。

 

「連絡して教師を呼び出してもらえませんか?」

 

「それは出来ない」


「そこをなんとか」


「凶悪な賊に門を破られたまではまだ同情の余地があるが、賊と組んで雇用主を呼び出すような真似をしてみろ。良くて奴隷落ちだ」


 粘ってみたが、きっぱりと断られた。

 それどころか、お願いしてしまうと酷い目に合うと言われてしまった。

 流石にそんな鬼畜なことは出来ない。


 ……いやでも、他に方法が無いなら止むを得ないんでは?

 うん、仕方ないな。

 恨むなら雇用主を恨んで欲しい。


「悪いけど、今は手段を選べないんだ」


「待て、落ち着け、話せば分かる」


 お願いしてもダメなら、力づくでも。

 そんな思考に偏った時だった。


「残念ながら、通信用の魔導具は破壊しました」


「タクト、あそこ!」


「げ」


 ねっとりした声がした。

 リイラが指差したのは二階の手すりの上。

 そこにいたのは、昨日リイラを追っかけていた黒ローブの男だった。



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