表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/19

16 パンツ被ってリベンジだ!


 屋台で買ったのは、何かの串焼き六本。

 五本で銅貨一枚だったがおまけしてくれた。


 安くなるのは嬉しいが、物凄い変態を見るような怯えた目だったのは辛かった。

 なんだよ、ちょっとパンツを被ってるだけじゃないか。

 そのせいだな。泣きたい。


 さっきは全力疾走してたから気にならなかったが、視線が痛い。

 串焼きを頬張りつつ、更に辺りを警戒しながら歩いてる分余計だろう。


「もぐもぐ、おいしーね、タクトさん!」


「おお、美味いな。汚物を見る目で見られてなければもっと美味い」


 けど仕方ないんだ。

 俺はこのパンツを被っていないとぶっちゃけ無力。

 リイラはそれなりに戦えるらしいが、昨日の黒ローブや門番には敵わない。


 特に、あの黒ローブは油断した瞬間襲い掛かって来てもおかしくない。

 パンツを脱げば死ぬ。デッドオアパンツ。

 どういう状況だよマジで。


 腐ったタマネギを見るような人々の視線に耐えながら、例の屋敷の前まで来た。

 ここまで来れば人通りも少ない。

 お陰でパンツを被ったままでも堂々と歩くことが出来る。


 貴族街だから不審者として即斬られそうな気もするが、多分大丈夫だろう。

 用件だけ済ませたらさっさと逃げるつもりだしな。


「リイラ、ここで待ってるか?」


「ううん、私も一緒に行くよ」


「分かった。今度こそミレーを迎えに行くぞ」


「うん!」


 建物の陰から出て、屋敷に向かって歩く。

 立派な門の前には二人の門番が立っている。

 昨日と同じ顔だ。


 丁度いい。

 昨日のリベンジとしゃれ込んでやる。


 門番達が俺達に気付いたようだ。

 厳つい方は訝しげな顔をしている。


 爽やかな方は、小憎らしい顔だ。

 俺のことを馬鹿にしてるのがヒシヒシと伝わってくる。

 これだからイケメンは嫌いだ。


 どんな顔しててもイケメンってか? おおん?

 性格の悪さが顔に滲み出てくるくらいボコボコにしてやろうか。


「止まれ」 


 厳つい方が口を開いた。

 足を止めて、リイラにも立ち止るよう掌で合図をする。

 門番までの距離は、約五メートル。


「次は容赦しないと言った筈だが……なんだそれは。お前の趣味か? それとも、気でも狂ったか?」


 厳つい方の視線が、俺の頭に向いた。

 呆れている。

 いっそ呆れを通り越して憐みを感じる。


 違うんだ。

 俺だって好きで被ってる訳じゃ……好きだけど。

 好きだけど、そうじゃない! 今この状況を楽しむ為に被ってるわけじゃないんだ!


 なんて弁明しようかと悩んでいると、リイラが一歩前に踏み出した。


「お願い、ミレーに会わせて!」


「そのような者はいない」

 

「俺達はミレーを迎えに来た。そこを退かないなら、――押し通る」


 俺は本気だ。

 この二人は門番という仕事を全うしているだけで、罪は無い。

 だけどそんなこと、俺には関係ない。

 ミレーを迎えに行くのを邪魔するなら俺の敵だ。


 パンツを被ってでも、俺はミレーに会いに行く。


「ぷっ、あはははは! あー、おっかしぃ」


「おいサンジュ」


 爽やかな方が笑い出した。

 なんだこいつ。

 厳つい方がたしなめて、なんとか笑いを抑え込んだ。


「いいじゃないすか先輩。パンツを被って粋がってる変態くらい、オレ一人でヨユーっすよ」


「……まったく」


 厳つい方が呆れ気味に腕を組んだ。

 爽やか……ウザい方が得意げな顔をして槍を構えている。

 こいつ、俺達を苛めて遊ぶつもりだな。

 

「ふぅ」


 ウザい方が足に力を込めた瞬間には、もう魔方陣は形成されている。

 前に一つと後ろに二つ。

 全部バッチリ見えてるぜ。


暗黒の奔流(ダークストリーム)!」


 魔方陣から黒く禍々しいエネルギーが荒れ狂い、渦を巻いて放たれた。

 三方向同時発射。その為の三つの魔方陣だ。


「ぐぅぁ!?」


 一歩踏み出したばかりのウザい方を捉えた。

 しかし、それだけじゃない。


「きゃっ!」


「ぎぇ!」


「なっ!?」


 お前らに構ってる時間なんか無いんだよすっこんでろ!


 俺の心から浸みだした暗黒の奔流は、リイラのすぐ横を掠めて背後へと解き放たれた。

 スカートがめくれてかけてリイラが慌てて抑えたが、黄色いのが見えた。

 イエスイエスイエスパンツ!

 やっぱり丸出しよりも、隠れてる状態から一瞬見える方がエロい。


 ついでに、後ろから奇襲をかけようとしていた黒ローブ二人も渦に巻き込まれて吹き飛んだ。

 三人共が建物や門に叩きつけられて一撃ノックアウト。


 高威力のかっこいい魔法を三つ同時発射。

 後ろの奴らに気付いた時には一瞬焦ったけど、やってみるもんだな。


 少し頭が重くなるような感覚があったが、まだ大丈夫。

 パンツが高性能過ぎるな。

 ちょっと怖くなるが、今は頼もしい。


「馬鹿な。なんだその力は」


「言っただろ、押し通るって」


「冗談はそのふざけた格好だけにしてもらおう」


 普通に会話してるだけなのに、厳つい方がイライラしてるのが伝わってくる。

 パンツ被った男に襲われて、しかもそいつが強かったらどう思うか。

 そりゃふざけるなよってなるわ。


 なるんだろうけど、俺は一切ふざけてるつもりはない。

 至って真面目だ。


 これは今の俺が誇る最強装備だぞ。

 見た目なんて関係あるか。

 ミレーを迎えに行けるなら、それで十分だ。 


「この格好も全部俺の本気だ。言っとくけど、容赦はしないぞ」


「いいだろう。掛かってこい」


 厳つい方が槍を構えた。

 明らかに強い。もう風格が強い。

 だけど、今は俺の方が強い。

 つまり、俺の頭のパンツの方が風格があるってことだ!

 見ろこの立派な刺繍のレースを!


闇の見えざる手(ベリアルハンド)


「あ、足が……!?」


 厳つい方の足元に、小さ目の魔方陣が二つ出現している。

 そこから伸びているのは、俺にしか見えない魔法の手。

 これで厳つい方の両足を抑え込んでいる。


 ≪念動力≫よりもカバー出来る範囲は狭いが、ピンポイントな分パワーはデカい。

 力のありそうな相手だったし、念には念を入れていこう。


 俺の前に大きな魔方陣が形を成して、光が集まってくる。


「く、足が、動か、ん。くっ」


竜の爆熱光(ドラゴンブラスト)!!」


 俺は身動きの出来ない相手に向かって容赦なく、安心と実績の最強魔法をぶっ放した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ