第1羽 金髪美人
読んで頂き、大変ありがとうございます。
俺は猫だ。
まあ、今のところ猫だ。
あれから妙になつかれ、おちおち寝ても居られない。
イライラしていると、御者の声が届いてきた。
「クルタの町が見えて来ましたよ。」
やっとだ。
俺は文字や地名を覚えない。なんせ猫だから。
村は酒場、町は冒険者ギルドを塒に決めている。
愛嬌を振れば必ず飯にありつけるからだ。
やっと馬車が停まったので、干し肉マリアとおさらばして、ギルド支部で夕飯と洒落込む事にした。
マリアとの別れ際、
「あっ!チャコまっ‥‥」
引き留める声を無視して、乗り合い馬車を後にした。
ギルド支部の酒場に入った俺。
晩飯の時間らしく、一仕事を終えた冒険者で混雑している。
気の良い沢山の冒険者がくれた、お溢れにありつけた。
当然、腹の皮が突っ張れば目の皮弛む。
そう言うことで、俺は酒場の端の長椅子の下に潜り眠りこけた。
又、夢を見た‥‥
▽▲▽
「君の空への情熱に引かれてね、次の世界では空を飛べる能力を授けようと思うんだ。」
粋な計らいだ。
俺は2つ返事で、
「是非!お願いします。因みにどんな鳥ですか?」
「鳥や虫ではないよ。猫さ。翼のある猫だよ。」
猫??
化け猫か?妖怪猫又?
「それって、魔物や妖怪ですか?」
「まさか、私はこう見えても神の端くれだよ。
ライオンさ。鷲の翼を持つ獅子だよ。」
たしか、インド神話やヨーロッパ‥‥ベネチアの象徴‥‥
「それって、聖獣の〇×÷★#%◎‥‥ですか?」
「やはり私が見込んだ事はある。」
△▼△
という、昔の事を夢でみていると、
「おーい!誰か一緒にパーティ組む奴いねーかー!」
ん?朝か。
如何にも駆け出しの若僧が、朝からハシャギやがって、うっせーなっ。
大方、レベルを上げて冒険者ランクをアップしたいんだろう。
冒険者ランクはAからEの5段階。
レベルは1から100を20づつ区切り、Eから始まりAで100だ。そして100以上がS級になるわけだ。
伊達に冒険者ギルドを塒にしてる訳じゃねえからさ、知識だけは無駄にある。
「この町の外れにある墓地に現れたスケルトン退治だ。ほかには居ないか!」
「私もお願いします。」
あれは、昨日の干し肉娘。俺のストーカーか?
違うな。
魔法職の冒険者と言ってたから、朝イチで貼り出される依頼を見にきたんだろう。
俺には関係無い。
晩飯に喰った鳥の唐揚げの油がまだモタレてるなあ。
腹ごなしに散歩でもしよう。
この町の名は確か‥知らん。
文字も読める書けもする。
しかし、記憶するが面倒だから敢えてしない。
地名にも興味が無い。
耳から入るくだらない事は記憶する。
このくだらない事に、生死を分ける情報が盛り沢山だからだ。
ギルド支部を後にした俺は、建物の屋根に上がり
気儘に散歩していると、町外れの石壁にたどり着いた。
以外にも、この町は結構広かった。
途中、ベランダに干してあった魚を拝借くらいで、大して印象に残らない町だ。
石壁をヒョイと登り外を見渡すと、回りには木々が広がり、その奥には墓地が見える。
墓地の回りだけ、瘴気がやたらと濃いのがわかる。
あれ?最近、墓地というキーワードを聞いた気がすなあ。
考えても仕方がないので、暇潰しに墓地にいって見た。
瘴気の濃い原因は直ぐに分かった。
スケルトンだ。それも5体。
スケルトン‥も最近耳にしたなあ。
5体の中に1体だけ、スケルトンウォーリアーが混じっている。
スケルトンは片手に剣だけ。ウォーリアーは剣に盾、そして兜を被る戦いに特化したアンデットモンスターだ。
人の声が。
「ここだ、みんな油断するなよ!」
((((‥‥おう‥‥))))
4人組のパーティだ。
思い出した。ギルドでスケルトン退治のメンバーを募っていたな。
駆け出し達だが問題ないさ。
棍棒や斧、ハンマー等の打撃系の武器があれば大丈夫だ‥‥
あらら。剣士職が二人。剣を構えてやがる。
もう1人は、盗賊職。小さなナイフを両手に握り戦闘態勢。
あとは後衛の魔法職‥‥あの尖り帽子に黒いローブ‥‥干し肉娘のマリアだ。
杖を構えてるが‥‥。
もうミャーミャー笑うしかない。
肉体を持たないスケルトンには、魔法は通じない。殴打や打撃での攻撃だけだ。
細い剣やナイフじゃ話しなんねえ。
ましてや駆け出し魔法職の魔法なんか知れている。
奴等には僧侶職のホーリー系だけだ。
そして中には1体ウォーリアーが混じっいる。
ウォーリアーには魔法を繰り出す奴もいるからな。
始まった。
やはり、スケルトン4体の攻撃は何とか凌げているが、ウォーリアーの存在が大きい。
駆け出し連中、ギリギリだ。
肩で息をし、疲労の色が濃くなっている。
観るもの見たし、帰るか。
「‥あっ‥グッ‥チャコ‥そんなとこに‥いたら‥ガッ‥危ないよ‥‥グフッ‥‥」
だから、その名で呼ぶんじゃねぇ!
油断した。
つい身を乗りだし観戦して見付かった。
俺に気を取られた隙に、1体のスケルトンがマリアに襲いかかり、それを杖で防御した勢いで後ろに飛ばさたマリア。
帽子とローブが取れ、
そこに居たのは金髪美人の女性だった。
生暖かい目で宜しくお願いします。