第14羽 千羽鶴
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▽13年前▽
「ママ!行ってきます!」
「カレン、パパを困らしちゃダメよ。行ってらっしゃい。」
「家のこと頼んだぞ。行ってくる。」
「あなた、気をつけて。」
それは、何時もの光景。
採れた野菜を町の市場へ運ぶ。ただそれだけ。
空いた時間で、娘のカレンに甘いおかしを食べさせ、夕方には帰ってくる。
ただそれだけ。
その日、何時もの時間を過ぎても帰って来ないので、心配した私は村外れの街道まで様子を見に行った。
街道先の曲道に見慣れた荷車と、飼い馬が無惨な姿で横たわっている。
それを見付けた時、私は血の気が引き一瞬、他人事に思えたのを覚えている。
「カレン!あなた!」
娘と主人の姿が無い!
魔物に襲われ、街道脇の林に逃げ込んだに違いない。
私は、無我夢中で手掛かりを求め林の中を進んだ。
「ビィィィー!グチャ‥‥クチャ‥クチャ‥」
何かが何かを食べている‥‥
私は一心不乱に、辺りの石をその何かに投げつけながら、大声で叫びながら、落ちていた木の棒を振り回し近ずいて行った。
私の迫力に驚いたそれは、お腹が満たされたのか鷲の翼を広げ、バサバサと飛び立ち闇夜に消えて行った。
それが食べていた物‥‥いや者だ。
食いちぎられた頭の無い娘と、内蔵を引き摺りだされ屍となった主人だった‥‥‥
その時点で、私は発狂していたのだろう。
何を考えていたかは分からない。ただ、主人の内蔵を体に戻し、娘の頭を広い首と胴を繋げ遺体を並べて、その間に私が横たわり3人で朝まで過ごした事までは分かっている。
それからの記憶が殆ど無い。
そして今‥‥
「ブラッ‥‥ブラック‥ブラックアイ!」
「あぁ‥すまん。」
私は暗闇でも見通す目を手に入れて、鷲の翼を持つ魔物を探すため、ブラックアイと呼ばれる殺し屋となった。
仲介人で、情報屋のラモスが、
「ブラックアイ!例の鷲羽魔物、ここから南のサビス村の近くに出たらしいぜ。」
「なっ!何!何時だ!」
「一週間前だ。キングヒュドラスを討伐しに行った冒険者達が見たってよ。」
‥‥やっとだ‥‥ついに現れたか‥‥
待ってろ!必ず殺す‥‥ブッ殺す!
□
久々に有翼の獅子なったは良いが、あれは何だったのか?
苛立ちを隠しながら、マリア達を助けた後だ。
日の光りを浴びた時‥‥
白い毛にエメラルドグリーンの鬣。
この世界に来て200年余りだが、初めてだ‥‥人間を助け善行を働くと、あの姿になるのか?
レベル1000のその上が有るのか?
分からん‥‥
「チャコ!今日こそお風呂に入るわよ。いらっしゃい!‥‥チャコ!」
止めろ!その名で呼ぶな!首の後ろを摘まむな!
「ミャー!ビャー!シャー‥‥」
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「ねっ?気持ち良かったしょ~チュッ!」
「(チクッ!)ミー‥」
何故?何故マリアに逆らえ無い?
俺‥‥もしかしたら、マリアの事が好きなのか?
ヒョッとて、この胸の痛みは‥‥恋?
青春もクソも無かった。
中2で終った俺の青春‥‥記憶にあるのは、病院の白いベット。
中2でクラス変えがあった為、同じクラスの奴が誰か知らん。
そして、担任と名乗る奴がクラス全員で折ったと言って、千羽鶴を持って来ただけだ。
ベットと千羽鶴が俺の青春だった‥‥
愛とか恋とか、意味も分からん。
ただ、分かるのはマリアに優しくされると、チクッと針が刺さる痛さを感じ胸が熱くなる。
これが‥恋?‥‥なのか?
なのかなあ?
やっぱり分からん。
生暖かい目で、宜しくお願いします。