第11羽 リール
読んで頂き、ありがとうございます。
「チャコ!チャコ~!」
夜風に当たり宿屋の屋根で寝ていたら、マリアの声で起こされた。
「ミャー」
「おはよう~チャコ。早起きさんね!」
「ミャー」
「チャコ、私の髪が長くない?そろそろ切りに行こうかな。」
やめれ。
綺麗な金髪が勿体無い。
長い金髪が俺は好き‥大好きだ。
「ミー」
「やっぱり!チャコもそう思う?決まりね。
ヘアーカットに行こう!」
「ミャーミャー(違う!違う!)」
マリアに思考操作の魔法は使いたくないし‥‥。
その前に、朝飯~!「ミー(グウ~)」
理髪店までの道すがら、足にまとわり付いたり、背中に飛び付いたり。
と実力行使に出たが無駄だった。
そんな時だ、
「おはよう~マリア!お出かけ?それが相棒のチャコね。」
「リール!おはよう。そう!私の彼氏!それで髪を切りに理髪店に。」
「チャコ宜しくね。リールよ。」
「ミャー」
これだ!リールと言う獣人の猫娘の思考を操作して、行く手を阻止する。
(ランクスリー!インストール・イメージ)
「‥ねぇマリア、理髪店よりさ私の依頼手伝ってくれない?」
「どんな依頼?」
「薬草の採集。お願い!」
「良いわよ。理髪店は又、今度ね。」
上手くいった。
作戦成功だ。
リールと言う獣人、役にたつ。
町から徒歩で3時間の森。
更に奥へ1時間が薬草の採集場。
何故、薬草採集に冒険者が駆り出されるか?
今回は、草樹鬼ラフレシアンが出没するとの情報で、ギルドに依頼が来たらしい。
「で、どんな薬草?」
「ピロピロ草よ。」(マツムラかよ!)
年中取れるが、群生地は日光が当たりずらい森の奥で採れる薬草だ。
「ん~これね?」
「そうそれ!」
「リール。大体採り終えたんじゃない?」
「そうね。これだけ有れば任務完了ね。マリア。」
‥‥臭い‥‥
「マリア?この臭い‥‥」
「臭い?オナラはしてないわよ!リール。」
獣人だけあってか、鼻が効くぞ!リールよ。
俺は定位置、マリアの尖り帽子のツバの上で索敵魔法を発動させた。
21体。横一列に並び、コッチへ向かってくる。
ここは森だ。炎系は使えない。
水系は奴等を活性させる。
マリアの使えるのは、風と氷だ。
獣人リールは、どんな職種だ?
「来るわ!マリア!」
「ええ。‥‥アイスカッター!」
おお~!氷の円盤を風魔法を使い飛ばすとは、なかなかだ。マリア。
「唸れ!スネークウィプ!」
腰に巻き付けていた鞭をスルリと抜き取り、鮮やかな手捌きでラフレシアンを八つ裂きか。
お見事。
だが、問題が最後の1体。
巨大な花の中央に牙を持つでかい口の頭に、根を足の様に動かし、ツルの触手を腕の様に使い、相手を捕縛するラフレシアン。
それらの3倍はある、ハイ ラフレシアン。
‥‥やはり‥アイスカッターも、鞭も触手で弾き飛ばされている。‥‥
ここまでだ。俺の出番か‥‥?
リールが背中と背負袋の間から、小さな盾を取り出し左腕に嵌めた。
「マリア!下がって!」
「はい!」
「これでどうだ!ゴルゴンの盾!」
何?レガシーアイテム ゴルゴンの盾だと!
鏡面に仕上がった盾に、映し捉われたハイ ラフレシアンはみるみる石化し、
「キィー!‥‥!」
動かぬ石像となった。
なかなかの奴だ。リール。
「フウ~!終ったよ!マリア。」
「流石!Cクラス冒険者リール!」
今回は俺の出番なし。
「さあ~てっ!今日はマリアの奢りでパア~!と行きますか!」
俺は、リールの肩に飛び乗り、
「ミャー!」
と鳴きながら、
(リールよ、良くやった。これからもマリアを頼むぞ。)
とリールの意識に語りかけ、降りようとしたら、
(チャコ、事情は分からないけど、私に魔法は通じないからね‥これからも宜しく。チャコ。)
芝居?演技?魔法にかかった振りをして、マリアをわざと誘った‥‥やられた。
「それを言うなら、リールの奢りよ!薬草採集を手伝ったのは私なんだからね!ねっ、チャコ。」
「ミャー」
「コリャ一本取られました!んじゃ、ギルドで報告して、酒場に直行よ!(パチリ!)」
何故か俺に向かってウィンクした、リール。
今一釈然としない、俺の心。
〇
リール 女 20才(猫獣人)
Cクラス冒険者
レベル 61
前衛 摂行 探索のオールラウンダー
ゴルゴンの盾によりハイレベルのモンスターをも駆逐する。
年齢の割にレベルが高いのは、盾の力が大きい。
ゴルゴンの盾の入手経路は不明。
生暖かい目で、宜しくお願いします。