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プロローグ
どこまでもでも続くように思える青い空。白い小さな雲が、ゆっくりと流れていく。
その空の下に、草原――と呼ぶには少し小さすぎる場所、そこに一人の少年が胡坐をかいて空を見上げていた。
「どうしたんだ?」
不意に後ろから声がかけられる。その声音は言葉の割には平淡で、心配している様子は感じられない。
「いいや、空を見ているだけ。」
胡坐をかいている少年も、あっさりとした口調で返す。
そして、少しの沈黙。
後ろではしゃぐ仲間たちの声が聞こえる。
声をかけた少年は、いまだに空を見上げ続ける親友の隣りに腰を下ろす。そして、沈黙をやぶるかのように声を出す。
「外に……でたいか?」
「外……かぁ……。」
空を見上げながら少年は、何か重いものを吐き出すかのようにつぶやく。
外に出たくない、といえば嘘になる。
しかし、恐らく外には出れないだろう。
なぜならここは……そういう場所だから。
だが、
「なぁ、いつか一緒に外に出よう。山や川、そして街を見るんだ。」
「あぁ、いつか必ず、一緒に。」
そして少年たちは約束を交わす。
それが、叶わない約束と知りながら……。