魔法2
「先程炎が使えるって言っていたよね、魔法にも色々とあるんだ」
「はい、個人によって得意な属性があるのだけど私は火の属性が得意で逆に水の属性を持つ魔法は苦手なのですよ」
「奥が深いんだね、私の方が教えられる事が多いようだ」
「いえ、私なんか知識だけで肝心の魔法の方はまだまだ見習いレベル、キャスターとしての素質は完全にナナシの方が上だよ」
ベルは下を向き一つため息をついた。ふと虫の声が耳にはいる、いつの間にか辺りも薄暗くなり初めていた。どうやら話をしているうちにだいぶ時間がたってしまったようだ。
「積もる話もあるけど、今日はそろそろ今晩の食べ物と寝ることについて考えた方がよさそうだ」
「あ、食べ物なら良いものがあります」
ベルは横に置いていた大きなカバンをごそごそとあさり出すと、中から何か取り出した。
「じゃーん、コリクの実とパンだよ」
ベルはパンを半分に分けると何かの実と共にこちらに差し出した。
「これは君の食料なのに悪いね」
「良いの良いの、私お金あまり持ってないし受講料ってことで」
まだそれらしいことはしていないのだが、まぁこれは断るのも失礼だし素直に受け取っておこう。そう思い木の実を一つ口に入れる。木の実はこりこりとした食感でほんのり甘味があった。
「どう?美味しいでしょこの木の実、少ない量でお腹もいっぱいになるし」
「うん、いつもこういうものを食べているのかい?」
「町に行ったときは、お店で食べたりするけどお金ないし、ナナシはここにずっといるの?やっぱり町で暮らす方がいい?」
「私はあまり人が作ったルールとかに縛られるのは嫌いだし、自分が作った町なら暮らしてみたいかな」
軽い冗談でそんな空言を言ってみる。
「いいじゃない、作ろうよ!私とナナシの町」
「え?」
「私そういうの憧れてたんだ!それにナナシはここから動きたくないんでしょ?」
「え、あうんまぁ今のところは」
「それじゃ決まり、明日から忙しくなるぞー」
なんか突拍子もないことになってしまったな、だけど特にすることもないし暇潰しにはなるかな、それにしてもベルのお陰で色々と情報を知ることができた。ひとまず腹を満たすとその晩は寝ることにした。
朝起きるとベルが何やら作業をしている。
「あ、ナナシ起きたねー」
「おはようベル、何をしているんだい?」
「家を作ろうと思ってね、今材料を揃えていたの」
「へぇ、家なんて作れるんだ」
「うん、実は実家が大工やっててさー、小さい頃から嫌々やらされてたんだよね、その名残で村を出るとき大工道具とか無理やり待たされちゃってさ、それが役に立つとは思わなかったよ」
ベルが大工の娘とは驚きだな、人は見かけによらないって言うのは本当らしい、ベルは話終えると再び作業を再開しだした。私も何かやらないと、辺りを見回すと切り株の上に本が置かれていた。表紙には猿でも分かる魔道書っと書かれている。少し興味を引かれ本をめくってみる。
「なになに、魔法とは体内、もしくは大気中にある魔力を制御しそれらを操る術である。地の魔法グルガ大地に魔力を流し込み、地脈を操作する魔法、地属性の魔法の初期である…か尚、呪文の名称だけ知っていても己の鍛練が足りなければ魔法は成立しない、呪文と己の魔力その両方が成立したときのみ発動する。呪文とは言わば鍵の役割である」
鍵があっても鍵穴が違えば開けられないってことかな?試しにやってみるか、地面に手をかざすと呪文を唱えてみる。
「グルガ」
すると、地面が躍動しうねり始めた。
「わ、わ何ですかそれ?」
「あ、ええっと…そう畑を作ろうと思って耕していたんだよ、決して遊んでいたわけじゃ」
「凄いですナナシ雷属性だけでなく、土属性の魔法も操れるなんて!」
「ごめん、これ勝手に読んでそこに置いてたからつい好奇心がでて」
「良かったら自由に読んでいいから私も勉強になるし!その代わり後で教えてね」
そう言うと何やらメモを取り出し書き始めた。
「グルガ、土をモコモコさせる魔法っと、そうだ畑を作るならこれを」
ベルはカバンから何やら種を取り出した。
「これは何の種だい?」
「ユクモっていう芋の種とその他野菜の種だよ」
「へぇ、ベルのカバンには色々入っているんだね、他に何が入っているか気になる」
「ダメです、この中は女の子の秘密が一杯入っているんだから」
「これは失礼、安心してくれ気にはなるが他人のカバンの中をあさるほど私は悪い人ではないと思うよ」
「ほんとかなぁ」
「そんなに疑われると傷つくな」
「うそうそ冗談、じゃあ畑は任せたよー」
私は再び地面に手をかざすと魔法を唱えた。しばらくすると広い畑と呼べるような土壌が出来上がる。そこにベルからもらった種をまくとその上に土を被せる。後は水か、水は川があるからいいけど問題はどうやって運ぶかだな、土を操れる魔法があるんだ水を操る魔法もあるはずだ。再び本を開くとそれらしいページを見つけた。