魔法
「ところでベル、さっきキャスターがどうとか言ってたけど」
「うん、私はまだまだ未熟だけどいつか立派なワールドキャスターになって、ああキャスターが何か聞きたいのね?」
私は顔を上下に振ると、少し得意気に話し出した、
「こほん、キャスターとは大雑把に言えば魔法が使えるクラスってところかな、キャスターの中にも色々あってね下から見習いキャスター、ライトキャスター、ブロンズキャスター、シルバーキャスター、ゴールドキャスター、プラチナキャスター、ワールドキャスター、グランドキャスターっていう具合にその者の功績や、実力等によって格付けがされているわ、私はまだ見習いキャスターだけどいつか有名なキャスターさんの元に弟子入りしてワールドキャスターになるのよ!」
「グランドキャスターじゃないんだ」
「グランドキャスターっていうのは普通じゃなれないものなんだよ、努力だけでは決してなることができない実力があって世に名を残してもせいぜいなれるのはワールドキャスター止まり、それだけグランドキャスターっていうのは特別な称号なの」
ベルの話を聞く限り私もそのキャスターというクラスのようだ、魔法を使えるという点において魚を取るときに使ったあれはおそらくそう言うことなのだろう。
「ベルはどうしてワールドキャスターになりたいの?」
「色々あるんだけどね、一番の目的はある人を見返してやりたいかなぁ、あはは」
ベルは笑っていたがどこか悲しげな心が感じ取れた。私はそれ以上深入りすることはしなかった。
「私も使えるのだけど」
「使えるって何を?」
「その、魔法のようなものを」
「そんな簡単には使えないんだよ?私だって見習いキャスターになるまでに色々修行してやっと使えるようになったんだから」
ベルは少しあきれた様子で私の方を見た、論より証拠ともかく先程使った電撃を実際に見せた方が話が早そうだ。私は手を前にかざすと、数メートル先にある枝に狙いを定めた。
「ディオ」
私がそう唱えると同時に指先からバチっと言う音とともに光の線が伸び、数メートル先の枝に見事直撃した。その衝撃で枝はポッキリと折れてしまっている。
「これなんだけど、これも魔法なのかな」
再びベルの方に顔を向けるが反応がない、あれ?一瞬すぎて見えなかったのかな?ベルの肩に手をかけると同時に我に帰ったベルが突然話始めた。
「す、凄い!これは見習い…、いえライトキャスター以上の魔法です!」
「そんなに凄い魔法なんだ」
「私は見習いキャスターですが、せいぜい小指程度の火の玉を作り出して維持するのが精一杯なのに、電撃魔法をしかもあんなに離れた目標に命中させるなんて!」
「詠唱から魔法に転ずる事自体難しいのにぃ~、そもそも魔法とは自分の中の魔力を練って、自分が得意な属性に変化、一定の場所へと集中させ、言霊によって実体化させる物なのに、それをさらに操るとなるとかなりの才能がないと出来ないんだよ!」
「お、おうなんか知らないけど」
体が覚えているというか特に何も考えなくても使っていたけど、成る程話を聞く限り使えるようになるまでにはかなりの努力が必要なわけだ。
「私を…弟子にしてください!」
「はい?」
おいおい、ちょっと待ってくれそんなに目をキラキラさせながら私の顔を見られても、自分が何者かも分からないのにいきなり弟子にしてくれと言われても困るぞ。
「いきなりその様なことを言われても、そもそも私はライトキャスターなのでしょう?もっとランクの高いキャスターに弟子入りした方が修行も捗るのでは?」
「いえ、私のアンテナがビビっときました、きっと貴方は名高いシルバー、いえゴールドキャスターだったのですよ!」
「な、なんだってー!?」
そんなばかな、まぁでも自分が何者か分からない以上否定は出来ないか。
「しかしベル」
「はい、師匠!」
うわぁなんかもう師匠になってるんだけど、これ話を聞かないで自分でどんどん突っ込んで行くタイプだ。
「私は記憶がないんだ、今使える魔法もこの電撃だけだ。それでもいいのかい?」
「はい、私あまり才能がないのか教わってもなかなか上手くできなくて、前の師匠にも愛想を尽かされてしまいました。でも師匠となら上手くやれる気がするんです!お願いします!」
そう言うとベルは立ち上がり深く頭を下げた。困ったなそこまでされたら断れない。
「分かったよ、私が教えられる範囲なら教えよう」
「有り難うございます!」
「その代わり、師匠は止めてくれないか?それと敬語も禁止、私たちはもう友達だろう?今の私はナナシだ」
「うん分かったわ、ししょ…、ナナシ今日からよろしくね」
ベルが差し出した手に私は応える。よく分からないまま弟子ができてしまったな、でも不思議と嫌な気持ちはしない、もしかしたら以前は人に何か教えていたりしていたのだろうか、それにこうやって話していると一人でいるより楽しいし何か思い出せるような気もする。