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 「お帰りなさいませ、お嬢様。お荷物お預かりいたします」

 「ええ、ただいま。ありがとう」


 寮に戻ると、シャルが出迎えてくれたので荷物を預ける。


 うーん。もう侯爵家の中じゃないんだし、寮の自室内位では堅苦しい話し方をしなくても良いかなー、記憶を思い出してからというもの、この話し方って疲れるんだよね。


 「入学式、お疲れ様でした。学園はどうでしたか?」

 「え?ええ、そうね…グリストラ殿下、ルウェイン様、フォズ様が同じクラスだったわ。後は――…」


 教室では明後日からの授業の説明と選択授業について担任教師から話を聞いて、解散となっていた。


 てっきり明日から授業開始だと思って居たのだけど、明日は選択授業の体験・見学という事で午前で終了らしい。


 そう、説明すると。


 「ああ、私が在籍していた頃と変わりませんね」

 「そうなのね」

 「はい」


 あー…そうだよね、よく考えたらシャルが魔法学園を卒業したのって五、六年前だもんね。


 「あの…シャル。話は変わるのだけど…」

 「はい、何でしょう?」

 「その…!」

 「はい」


 思い切って、話し方を変えようと思ったんだけど…いざ、話そうとすると難しいな。


 「ええと、そう! リンゴとオレンジを各十個ずつ用意して下さらない?」


 駄目だーっ!! 言えなかった。


 結局。私が寮の自室内でのみ軽い口調で話せるようになったのは、これより十日が過ぎた頃だった――…。




 

 まあ、リンゴとオレンジを用意して欲しいのも嘘ではないから良いんだけど。


 「リンゴとオレンジ、十個ずつですね。畏まりました。暫しお待ち下さい。…しかし、お嬢様。食欲旺盛なのは結構ですが、一度にそんなに沢山召し上がるとお腹を壊してしまいますよ?」


 ち、違うよ!? いっぺんに食べないからね!? お菓子作りの為にドライフルーツとコンフィチュールを作りたいだけなんだよー!?


 『今日は随分と食い意地張ってんな、コイツ』みたいな目で見ないでっ!?


 「い、いっぺんに食べようなんて事は考えていませんわよ?」

 「冗談です」

 「冗談に聞こえなくてよ…」


 特にドライフルーツは沢山作りたいので、欲を言えばパイナップルやマンゴーも欲しい。


 けれど、グリンベルグ家の食卓では見た事が無いんだよね。もしかして、家族の誰かが嫌いだったから食卓には上がらなかったのかな?


 レモンやオレンジはあるんだから。もしかしたら…?


 「…ねぇ、シャル。追加でパイナップルとマンゴーもお願いできるかしら?」

 「パイナップルとマンゴー…ですか? あの、申し訳ありません。それは一体何でしょうか? リンゴとオレンジに、その二つを追加という事は…果物、でしょうか?」


 あ。やっぱり無かったのかな?


 シャルに尋ねられたので、それに対し頷く。


 「ええ。その…気候が暖かい地域で作られている物だと…以前、何かの本で読んだのだけど。この国には無いのかしら? 家でも見かけた事はなかったものね…」

 「恐らく、この国…少なくとも王都近辺では出回っていませんね…。少し時間を頂けましたら、調べさせて頂きますが」

 「ありがとう、助かるわ。私も伝手を使って探してみるわ」


 あ。考えてみたら伝手って…私、持って無いじゃん。どうする? どうする私!?


 一、グリストラ(今の所、最強の伝手だよね。でも、頼らない方が良いかな。二年後に強請ったとか言われたら大変だし)


 二、ラジックお兄様(それなりに強力そうなコネがありそうだけど、無理無理。無いわ!)


 三、マリスティアの取巻きさん達(なーんか後に裏切ってくれそうなんだけど…今の所は、大丈夫かな)


 …――うん。これに関しては、後で取巻きさん達に当たってみるか。幸い同じ女子寮に居るし。(侍従や侍女を連れて寮に入る人が殆どだから、部屋数の問題で、寮は男女ともに二棟ずつあるんだよね)


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