表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/45

 教室に着いて、席は決まっているのか入口近くに居たクラスメイトに尋ねてみた。席は自由に選んで座って良いらしい。

 

 私はグリストラから、わざわざ離れるのも不自然かと思い、彼の隣の席に着いた。


 席は五列ある内、真ん中の列の前から三番目の席にグリストラ。その右横が私の席となった。


 教室の真ん中(正確にはその隣だけど)とか何だか落ち着かない。だが、学園内に居る分には安全と言えども、グリストラの身分を考えれば妥当な席なのだろう。


 グリストラの左隣と後ろには、グリストラの幼い頃からの友人達が座っている。


 左隣の彼は公爵位を持つ宰相の息子であり、攻略対象の一人でもある。ちなみに、後ろには騎士団長の息子が座っているのだけど、彼もまた攻略対象だ。


 攻略対象のうち、三人がこのクラス…。これは来年もクラス替えは無いな。


 何故なら、ゲーム中でヒロインが――…


 『えっ! 三人共、同じクラスなの? お友達と一緒のクラスだなんて羨ましいなぁ〜!』


 ――…と、序盤の帰宅イベント(特定の誰かではなく、三人の内、誰かでランダムに出るものだ)で言ってたし。


 既にゲームスタートへの下地は作られている、と言う事だね。


 「マリスティア」

 「はい、何でしょう? グリストラ様」


 不意にグリストラから声が掛かり、彼の方に顔を向けると。


 いつの間にか彼の席に(と言っても、左隣と後ろだけど)宰相子息と騎士団長子息が来ていて、私を見ていた。私も席から立って彼らと向かい合う。


 「パーティ等で会った事があるかもしれないけど、紹介するよ。彼は僕の左側の席なんだ。宰相の息子で、名はカルロス・ルウェインだよ」


 はい、知っています。腹黒キャラ担当ですよね? とは言えない。


 「言葉を交わすのは初めてですね、グリンベルグ嬢。カルロス・ルウェインと申します。以後、お見知りおきを」


 陽に透ける金茶色の髪、ルビーのような真紅の瞳が綺麗だな…。そんな真紅の瞳を細めて、にこりと微笑むカルロスに――…(知ってはいるけど、胡散臭そうな笑顔だなー)


 「ええ、そうですわね。ルウェイン様。私は、マリスティア・グリンベルグでございます。ルウェイン様、宜しくお願い致します」


 にこりと微笑み返して。スカートの裾を摘んで礼をする。


 「そして、彼がクロスト・フォズ。彼の家はフォズ侯爵家で、父君は騎士団の団長をしている。クロストの剣の腕も一流だよ」


 褒められたクロストは照れたのか、自身の黄緑色の髪の辺りに手を添えて『いえ。自分は、まだまだです!』と言ってから姿勢を正した。


 それから。明るく澄んだオレンジ色の瞳を輝かせて。


 「初めまして!クロスト・フォズです!趣味は走る事と剣の鍛錬です!グリンベルグ様、宜しくお願いします!」


 大きな声で自己紹介して下さった。ワンコキャラ(脳筋というオプション付きだ)、元気一杯だな。


 しかし、別に趣味は言わなくても良かったんじゃ…? これ、私も趣味とか言うべき?


 「初めまして、フォズ様。ご丁寧にありがとうございます。マリスティア・グリンベルグでございます。宜しくお願い致します。私の趣味は――…」


 一瞬、言葉に詰まってしまった。


 お裁縫とか乗馬とか適当に言っておけば良いか…そう、思ったのに。


 「その…趣味とは言えないかもしれませんが、紅茶を淹れて楽しむ事が、私の最近の趣味となっております」


 なんだか嘘をつくのは嫌だな…と思ってしまい、正直に話すと『そうなんですか! 女の子らしくて良いですね!』と、クロストからは元気な返事が返ってきたと思ったら。


 「僕も紅茶を含め、お茶が好きで諸外国からも取り寄せたりしているのですよ。宜しければ今度、紅茶の事をお話しませんか?」

 「はい、喜んで」


 カルロスから思わぬ誘いを受けてしまった。(いや、社交辞令だろうけどね)あ。カルロス、今度は少しだけ笑顔から胡散臭さが抜けている。


 「へぇ、驚いたな。マリスティアが紅茶を好きな事は知っていたけど…自ら紅茶を淹れるだなんて。ああ、悪い意味ではないからね? 今度、マリスティアが淹れた紅茶を私も飲んでみたい。私にも紅茶を淹れてくれるかい?」


 と、グリストラからも笑顔で催促されてしまった。


 まさか、本当に紅茶を振る舞う機会が!?


 なーんてね。きっと、こっちも社交辞令みたいなものだよね。


 「はい。グリストラ様のお口に合うかは分かりませんが…是非、召し上がって頂きたいですわ!」


 皆で笑顔で笑い合う。楽しい気持ちになるけれど…こんな風に笑い合える日は、そんなに長く続くもので無い事を解っている。


 ヒロイン次第ではあるけど、期待はしない方がいい。


 あまり、攻略対象の皆と仲良くなりすぎると、もし二年後に断罪イベントが起きた時に辛くなってしまう。


 (適度な距離を保たないとね)


 しかし。そうも言っていられない人物が、攻略対象の中に一人いる。





 ―――ユリアス・ルチアーニ。



 彼の事だけは別だ。私が学園の生徒の内は…しっかり利用させて頂く気満々なのだ。




 …あれ?利用って言うと何だか人聞き悪くない?(悪事に加担させるとかではありませんよー!)


 「会えるのは早くても明日か…」

 「マリスティア? 何か言ったかい?」

 「いえっ、その…明日からの授業が楽しみでして! 口に出てしまっていたのですね。恥ずかしいですわ」

 「ははっ、そうか。マリスティアは勉強家だからな」


 この後は、にっこりと笑ってやり過ごした。


王子、宰相子息、騎士団長の子息。この三人はヒロインが出てくるまでは、ほとんど出番無しの予定です…。次回以降からはシャルや、ユリアスがメインで出て来る予定になっています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ