7
――ただいま、魔法学園の大講堂にて。入学式の真っ最中です。
お偉いさん方の話(祝辞)が延々と続いています。眠いです。睡眠はたっぷり取れたはずなのに眠い。だれか睡眠の魔法を使っているんじゃないかと疑いたくなる眠さだ。
『続きまして…王立魔法研究院、所長。◯◯様より、お言葉を頂きます―…』
あー。入学式って、どこの世界も大体変わらないのかな…?
それとも、日本人が作った乙女ゲームの世界だから?
あれ? でも、入学式の様子はゲームには無かったんだよね。
ヒロインは年下だし、異世界からポンッと湧いて…じゃない。現れる、から。
と、いう事は。この世界もその辺りは日本とほぼ同じって事かな? まー、深く考えても仕方ないし。そういう事にしておこう。
「……」
ふ、と。小さく息を吐き出す。
それにしても。来賓の話、本当に長いな。皆、基本的に『入学おめでとう、真面目に学び優秀な人となるべく頑張ってね! 期待してる! 』的な話を、長く話すものだから……退屈すぎる。
『……◯◯様、ありがとうございました。続きまして……』
おおい。まだ、続くんかい。
国王陛下に学園長、来賓に来賓に来賓と続き、まだ居るのか!?
最前列の席だけど。もう、居眠りするぞ!! と、言いたい。
『新入生代表挨拶に移ります。新入生男子代表…グリストラ・ハーヴェルニ様』
あっ。居眠りダメだわ。これは流石に寝たらダメな場面だ。
グリストラの挨拶が見たいから、ではなく。次にある項目が新入生女子の代表挨拶。その代表者がクラス分けの参考にする為の学力テストで、女子の成績トップだった私なんだよね。
グリストラが壇上に上がると、新入生、在校生関係なく。僅かにキャアと黄色い声が上がった。うん。王子だし、顔も美形だもんね。
グリストラの挨拶が終わり、私の挨拶も問題なく終わり、次に生徒会長の挨拶と生徒会メンバーの紹介で、ようやく入学式は終わった。
大講堂から、グリストラと退場する時。(席が近かったし、同じクラスだから一緒に教室へ行きましょう〜…と、なった)
私が持つ青色の髪よりも若干濃く、紺に近い髪色。私と同じ翡翠色の瞳の…整った顔立ちをしているけれど。近寄り難い冷たさのようなものを表情に出した人物が、こちらに歩いて来た。
「………お兄様」
学園の寮に入っていたし、休日も父の後に付いて領地内や王都を往復している人。
…そして、幼少の頃から。向こうから声を掛けて来る事など滅多に無かった、グリンベルグ侯爵家、長男。ラジック・グリンベルグだ。
「グリストラ殿下、お久しぶりにございます。この度は、魔法学園へのご入学おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。学園生活で何かお困りの事等ございましたら、私は勿論の事、生徒会一同。殿下の為、尽力する所存です。何なりとお申し付け下さい」
兄はグリストラに恭しく頭を下げた。
そう言えば。兄は生徒会のメンバーだったな。家でもそんな話を前に聞いた気もするけど…忘れていた。今も自分の出番が終わってたから、聞き流してたし…。
「ありがとう、ラジック。これから一年間は同じ学園の生徒だし、君の方が先輩なんだ。そんなに畏まらないでくれ。それに…ほら。マリスティアと会うのも久しぶりだろう?」
おおう。こっち話を振らないで下さいよ。
「ああ、マリスティアか。久しいな。入学おめでとう」
「お久しぶりです、お兄様。ありがとうございます。これから三年間、グリンベルグの名に恥じぬよう勉学に魔法に、精進して行きます」
「…ああ」
ほらー、話す事なんて無いんだからさー。
少し後ろで待ってくれていたグリストラに『お待たせしてしまい申し訳ありません。教室へ向かいましょう』と声を掛け…
兄には『それでは、お兄様。失礼致します』と礼をし、この場を立ち去った。
うあー、疲れた。いつかは会うだろうとは思ったけど初日からとか勘弁してよ――…