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 「ところで、こちらの資料? ですが…箱の中で何やらゴロゴロ? していますわね? 中身が何かお聞きしても宜しいでしょうか?」


 私は持っていた箱の中身が何かと尋ねてみた。


 「中身はいもの一種だよ。次の授業で使うものだけど、君も調理された物を食べた事があるんじゃないかな」

 「そうなのですか? 開けて見てみても良いでしょうか?」


 気になったのでユリアスに、箱の中を見ても良いか聞くと『構わないよ』と言われたので開けてみると――…


 「あっ! ジャガイモですわね!」


 そこには、私の手のひらと同じ位の大きさのジャガイモが(七、八個位かな?)入っていた。


 「へえ、よくこれがジャガイモだと解ったね」


 少し驚いたような表情のユリアスに『前世では見慣れた物ですから!』なんて言う訳には行かないので。


 「え、ええ! 以前、実家にある本で見た事があるんです」


 紫蘇の時と言い、嘘をついてごめん、ユリアス!


 「そうなのか。君は本当に勉強熱心なんだな」


 ぐっ。そのほんの少し普段より優しい眼差しが今は痛いっす…。


 「で、ですが。詳しくは存じておりませんから、今から次の授業が楽しみですわ」


 ホホホ、と笑っておいた。









 「ありがとう、グリンベルグさん。助かったよ」

 「いえ、この位でしたらお安い御用ですわ!」


 薬草学の教員室に着き、奥に居た教員に挨拶をし、ユリアスの机の上の指定された場所に箱を置いてから。


 「それでは、私はこれで失礼しますわ」


 さて、厨房へ行くか…と、思ったら。


 「ああ、待ってくれ。お礼に…えっと、何かあったかな」

 「え? いえ、お礼とか…そんなつもりでお手伝いをした訳ではありませんので、お気になさらず」

 「いや。僕の気が済まないから、少しだけ待っててくれ」


 そう言い、ユリアスは机の上や引き出しの中をガサゴソと探っていのだけれど――…


 「…済まない。君に礼として上げられるような物が無かった。引き止めて済まなかったな、また改めて今度何か礼をさせてくれ」

 「そんな、ルチアーニ先生。本当に気になさらないで下さいませ。それでは私は――…」


 どことなくガッカリした様子のユリアスに慌てて手を振り、薬草学の教員室を後にしようと思ったのだけど。


 (ああっ! そうだ!!)


 「あ、あのっ! ルチアーニ先生!!」

 「? な、何だ?!」


 いきなり詰め寄ってしまったから、驚かせてしまったようだ。ごめん、ユリアス。でも…!


 「あの、今仰って頂いたお礼のお話ですがっ!」

 「あ、ああ…うん。とりあえず、近いから少し離れた方が良いと思うんだけど」


 おおう、黒縁眼鏡越しに見える深緑の瞳が綺麗だな…じゃなくて!


 「わっ! 失礼しました。それで、ですね。あの、もし宜しかったらで良いのですが、お願いがございまして…」

 「お願い?」

 「はい! 私にジャガイモを分けては頂けないでしょうかっ?」

 「……」


 あ。ユリアス、ポカンとしてるよ。何を言われると思ってたんだ? いや、あれか。教材を分けてくれとか何を言ってるんだ、コイツとか思われたのかも?


 「…あー、グリンベルグさん。聞かせて欲しいのだけど?」

 「はい、何でしょう?」

 「君はジャガイモをどうするつもりだ?」


 どうって、それは…ねえ?


 「勿論、食べますわ」


 後、もう一つ。さっき思いついたばかりだけど目的があるんだよね。脳裏に幾つかの菓子のレシピが浮かび上がり顔がニヤけそうになる。(いや、我慢よ我慢。ここでニヤけたら駄目よ! 食いしん坊キャラを定着させる訳にはいかん…!)

 

 そう。ジャガイモからアレが作れたら。お菓子作りのレシピも増やせるのだ。


 「あ、うん。そうか…そうか」


 え? 何かユリアス、ガッカリしてる? ジャガイモ美味しいですよー! あ、コレ実は新種とかで貴重なジャガイモだったのかな? 研究目的じゃなくて食う気なのか、コイツは…みたいな?


 「あのですね、ルチアーニ先生。最終的には食べるのですが、私ジャガイモから作りたい物がございまして」

 「? ジャガイモから作りたい物? 料理か?」


 まあ、そうなんですけど。ちょっと違うんだなー。


 「えっと、ですね。片栗粉を作ります」


 (あ。この世界に片栗粉って、あるのかな? でも偶にトロッとしたソースが掛かった料理が寮では出る事があるから、無い訳ではない筈…よね?)


 「カタクリコ? 僕はそんな名称は聞いた事がないが…それは料理名なのか?」


 あらら? 無いのかな? それともユリアスが知らないだけかな? 料理とかはしないだろうし。これは後で寮の厨房でエウラさんに聞いてみよう。

 

 「いえ、料理やお菓子作りの際に使う粉状の材料ですわ。もし、ジャガイモを少し分けて頂けるのでしたら、片栗粉を使ったお菓子を先生にもお持ち致しますので、宜しかったら食べてみて頂きたいですわ」


 そう言うと――…


 「分かった。本当にコレが礼で良いのか聞きたいところだが、君が望んでいるのだし…授業で使う分より多めに取り寄せていたから。少しなら構わないよ」


 ユリアスは箱からジャガイモを三個取り出すと。机の中から、薬草採取用と思われる腰に身に着けられる位の大きさの麻の袋を取り出し、その中にジャガイモをゴロゴロと入れて『どうぞ』と、手渡してくれたのだった。


 「ありがとうございますっ、ユリアス先生!!」


 やったー!! 思わぬ所で収穫、収穫ーっ!! って、テンション上がり過ぎだよ、私。見てよ、ユリアスが呆れた顔してるじゃないの。でも! やっぱり嬉しいな。

 

 ニコニコ(決してニヤニヤではない。悪巧みとかしてないからね!)している私にユリアスは――…


 「喜んで貰えたのなら、僕も嬉しい。カタクリコ? の菓子、楽しみにしているとしよう」

 

 目を柔らかく細め、口元には小さく笑みを浮かべて居た。ヤバい。ユリアスのこんなに優しそうな微笑みとか初めてじゃない? 尊い。


 「は、はい。せっかくジャガイモを分けて頂きましたし、作るからには美味しい物を作りますわ! そ、それでは私はこれで失礼します」


 わー!! 何か顔が少しポッポッと熱い気がする。な、なんで!? 


 薬草学の教員室を後に数歩、歩いた後。ピタリと立ち止まり、ペタリと空いている手で熱っぽい頬に手を当てた。


 (へ、変な顔とか…していないよね?)

 

ここまでお読み下さりありがとうございます!!

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