35
…――そして。
「グッ…あぁ!!」
「う…っ!?」
ドカッッ…!! と。ファイヤーエレメントの遠慮無いスピードと重量が私の背中に結構な衝撃を与えた。
想像以上にクッッッソ重い一撃(あら、やあね。下品な言葉が…オホホホ、なんて軽口。とてもじゃないが言えそうに無い)に耐え切れなくて。
私と彼女は、そのまま岩壁まで吹っ飛んでしまった。
「っ、く…」
(ヤバい。痛すぎてヤバい。呼吸するだけでも痛いんだけど)
背骨折れてないよね? むしろ背中あるよね? 誰か見てくれ…とか言ってる場合じゃない。
衝撃で壁に叩きつけられたのは私と彼女だけだけど。彼女は大丈夫? 彼も巻き込まれなかっただろうか?
ゆっくり首を動かし確認すれば、彼は巻き込まれずに済んだようで、彼女も少しダメージを受けてしまったけれど意識はあった。
(良かった…とりあえず、攻撃は後にして、今の内に回復しておこう)
彼女達の方へ向かう為に。生まれたての子鹿よろしくプルプルしながら立ち上がろうとすると。
ジジジ…。
「え?」
(何か…イヤーな予感がするんだけど?)
音が聞こえた方へ目を向ければ。ファイヤーエレメントが、またもや攻撃体勢になっているじゃないか!(うおぉおおい!! 何で、アンタそんなに急にヤル気出してんのー!? さっきは攻撃した後フヨフヨ浮いてただけだったじゃん! 誰かにヤル気スイッチでも押されたのー!? もう勘弁して下さいよー!!)
「《水の…》!」
魔力を集中させて。対抗する為、攻撃魔法を出そうとした時だ。
「《防護壁》!! 《氷の槍》!!」
この場には居なかった人の声(ラングリスタ先生…かな?)が聞こえたと同時に。私達の前に透明に近い水色の半円が現れ、それから間を置かず、何も無かった空間から槍の様に尖った太めの氷柱のような氷が数本現れて。
ドス、ドス、ドス、ドス…ッ!! と。
それらは勢いよく、ファイヤーエレメントの核へと突き刺さったのだった。
核が壊された為、ファイヤーエレメントの核を覆っていた火は消え、壊れた核は地面へゴトンと落下し、ゴロリと転がった後。サーッと霧散し消えた。
「たお…したの?」
痛みで意識がぼんやりする私と、腕や足を負傷している彼らのもとに複数の人が走り寄って来た。
「しっかりなさい、グリンベルグちゃん! 貴女はどこをやられたの?」
「背中に、体当たりを…受けましたわ」
どうやら先生方が助けに来てくれたようだ。その内の一人。ラングリスタ先生が私の様子を伺うと、私の両脇に腕を差し込み、そっと体を起こして。負担にならないように壁に寄り掛からせてくれてから。
「解ったわ、ちょっと待ってね。《癒しの風》!」
背中に回復魔法を掛けてくれた。た、助かった。大分楽に…と言うか、もう大丈夫そうだ。
「ありがとうございます…え?」
もう一度言おうか。大丈夫そう…ううん、大丈夫だ。
だから、ね。その―…
「あ、あのー、ラングリスタ先生。お手数をおかけしまして本当に申し訳ございません。ですが…」
「話は後ー。事情はここを出てから、ちゃんと聞かせて貰うわよー」
「いえ、ですが…」
「もうー! 細かい話は後よ! ここのファイヤーエレメントは一定時間が過ぎるとまたすぐに復活するのよ。ここはそういうエリアだから仕方ないんだけどねー」
「…ええ、それは解りました」
でもね、私。
「じゃ、急いで出るからー。掴まっててー」
「は、はい! …すみません」
「気にしないでー」
「は、はい…」
(いや、気にするわ。気になるわ!)
いや、今ね? 私はラングリスタ先生に横抱き…所謂お姫様抱っことやらをされてましてね。
うん、何か居た堪れない…。カナンさん? も同じ心境なのだろう。彼女も別の先生に横抱きにされてるんだけど、目が合って微妙な笑みを交わしたからね。
お兄さんはどうしたかって? 風の魔法で仰向けに浮いた状態になっているんだけど。例えるならば見えないタンカに乗っている、と言った感じだろうか。(あれ? 例えになってない?)
そして、少し広めの場所まで移動し、先生方の転移魔法で火の洞窟入口まで戻って来た。(大掛かりな移動でなければサークルが無くても移動は可能だ。ただし、魔力と実力が無ければ使えない魔法の為、学園で使えるとしたら…魔法学の実技担当の先生方や、私が知る限りではシャルやユリアス位かな? と思う)
「マリスティア! 大丈夫だったかい!?」
ラングリスタ先生に下ろして貰った後。グリストラがこちらに走り寄って来た。
「殿下、ご迷惑とご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。殿下は、お怪我はございませんか?」
「いや、いいんだ。それよりも君も無事で良かったよ。ああ、私は何とも無いよ。あれから、私も君の後を追うつもりだったのだけど、クロストに危険だからと止められて。先生方が来るまで、あの場に留まり…君を助けられず、済まなかった」
グリストラが頭を下げる。
「そんな、殿下。顔を上げて下さいませ。フォズ様が殿下をお止めした判断は間違っておりませんし、殿下が留まる事を判断された事も間違っておりません。私こそ勝手に動いてしまい申し訳ございません」
「マリスティア…」
グリストラは王位継承権第二位の王子だ。むやみに危険な場所に立ち入らせる訳に行かないと判断したクロストは間違っていない。
私も『婚約者が危険な場所に向かったんだから助けに来なさいよ!』なんて事は思わない。
むしろ、勝手にやった事に彼らを巻き込まないで済んで良かった、だ。(何かあって問題にでもなったら困るし! それに、やっぱり怪我とかさせたくないしね)
「殿下、グリンベルグ様。お話中にすみません。集合の声が掛かっております。学園に戻るそうです」
クロストが私達のところにやって来て、私達は皆が集まる場所へと向かい、入口で待機していた他の生徒達と(最初に会ったE班の二人と、双子達とイーラだ)先生方の皆で今から学園に帰る。
ちなみに、AからD班の生徒は待機していた教員の内の一人と先に学園へ戻っていったとか。
それから。パパッとサークルを使い、学園に戻ってきた。そういや、火の精霊の試練…受けられなかったな。
「はーい、それじゃ。それぞれ話を聞かせて貰うからー。怪我の無い子達は先に指導室まで来てちょうだい。キール・アーネスト、カナン・アーネスト、マリスティア・グリンベルグの三名はまずは医務室に向かうことー! 念の為、医務室で診て貰ってから、話を聞かせて貰うわー」
という事で。私とアーネスト兄妹は(ん? アーネスト? どこかで聞いたような?)医務室に寄って異常が無いか医務室の医師に診て貰ってから、ラングリスタ先生と話をする事になったのだった。
ここまでお読み下さりありがとうございます!!
次回、どうして双子は脇道に入ったのか? マリスティア(グリストラ達も)の火の精霊の試練はどうなるのか? その後…等についての話になります。




