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ちょっとファンタジー色を出したい回(数話続きます)です。
「…と言う訳で。来週から“精霊の試練”を皆には受けて貰うぞー。どの属性を選ぶべきか迷ってる奴は、来週までにアタシのトコに相談に来てー。あ、でも勤務時間外の相談は受け付けないからー。じゃ、今日はここまで! はい、おつかれさーん」
授業の終わりから、こんにちは。マリスティアです。
この時間の授業は魔法学だったんだけど、この科目は一年生から三年生まで必修の科目だ。
一年生の実技担当はクリス・ラングリスタ教員。語尾がよくのびる教員である。
さてさて。もうすぐ夏休みに入るというこの時期。毎年一年生は自分の“精霊”と契約を結ぶ事が課題となる…らしい。(いや、ゲームではフツーに魔法使っていたから、こんな設定あったのねー…と、驚いた。けれど、いよいよ私も魔法デビューですよ!)
精霊と契約をしていなくても魔法自体は使えるらしいのだけど…契約を結ぶと、その属性の魔法の力や精度は、ぐっと上がる為、契約を結ぶのは一般的だったりする…と、授業で聞いた。
精霊と契約と言っても、大掛かりなものでも無いらしい。勿論、契約を結ぶのが上位精霊ならば話は違ってくるけど、学園の一年生が契約を結ぶのは下位の精霊だ。
契約が結べる(だろう)精霊は比較的、人間に好意的な火、水、風、地の四精霊。その中から一つの属性、もしくは複数の属性を選べる魔力量がある生徒は複数、選んだ属性の精霊との契約を結ぶのが“精霊の試練”なのだとか。
一応、契約数に制限は無いらしいけど。魔力量やら、属性の相性等の問題で一気に四精霊と契約をするのは、ヒヨッコの一年生の時点ではかなり難しいらしく、一年生は一つの属性の精霊との契約が出来れば課題クリアとなる。
私はどの精霊と契約を結ぶのが良いだろう?
(うーん、皆にも聞いてみようかな。何か参考になるかも知れないし)
まずは…
「迷うけれど、火と地は相性が良いらしいから。その二属性の精霊との契約を結ぶつもりだよ」
と言うのはグリストラ。何気に魔力多いんですよね、この人。ゲーム知識で知っています。
「オレも殿下と同様に火の精霊との契約を結ぶつもりです! 強力な火の魔法剣とか使いたいですし!」
クロストは物理的な力はあるけれど、魔力は平均的な為、一つの属性に絞るようだ。
「僕は水と風、ですね。いざという時に殿下やクロストの補助が出来ますし、僕自身の魔力との相性も良さそうですから。本当は火の属性も、と考えましたが…下位とはいえ精霊との契約維持には多少魔力を使いますから、今は二つの属性で止めて置こうと思います」
あー、カルロスも魔力高いもんね。勿論、ゲーム知識ですよ!
三人に礼を言って、私は教室を後にした。
(シャルやサリーには帰ってから聞くとして、ユリアスにも聞いてみるか――…)
そして、寮に帰ってから。私は早速、サリーとシャルに尋ねてみた。
「私は自分の魔力と一番合っていた風の下位精霊と契約を結びました。ただ彼らは自由気ままな性格ですから、時々術が使えない事もあるのが困りものですが…え? どんな時か、ですか? 今ですと主に洗濯物が大量に出た際にそれらを乾かす為に術を使おうとした時などは多いですね」
あ、それ。精霊さんが嫌がってるんじゃないでしょうかサリーさん。
ちなみにシャルはと言えば。
「私ですか? 一年時の精霊の試練では四精霊と契約しましたね。懐かしいです。お嬢様も四精霊と契約してはいかがですか? 来年以降の精霊の試練が楽になりますよ」
あっ、また聞く相手を間違えたみたいです。
『また』と、言うのはユリアスも――…
『一年時の精霊の試練? 契約可能な精霊達、四精霊と契約したよ。そうだな…迷っているのなら四精霊と契約をしたらどうだろう?』
…――だそうです。
わー、そりゃ良い考えだー。それなら、迷う必要ないもんね!
って! いやいやいや! 私は天才じゃないからね!? 私の魔力量から考えれば二属性が妥当ですから!(何気にグリストラ並みに魔力はある。婚約者になる位ですから、魔力量もそれなりに無いと話にならないんだよねー)
ここまで読んで下さりありがとうございます!!




