24―マナミ―
いきなり誰!?…な感じの話ですみません。この回はスルーして頂いても問題はありません…が、もう暫く後に出るキャラの一面が見られるように書いています。
短編をお読み頂いた方は、マナミが誰なのか、すぐお解りになるかと思います。また、長編からお読み頂いた方にも、この回ラスト辺りで、マナミがどのポジションのキャラか解るように(多分←)なっていますので、短編を読んでいなくても問題はありません。
―――放課後の校舎裏。
少しずつ沈んで行く大きなオレンジ色の太陽に、特に意味はないけどチラリと視線を向ける。
ここからは少し離れているグラウンドからは、複数の運動部の掛け声が聞こえてきている。
―――そして。わたしのすぐ近くからは罵声的なものが聞こえてきている。
あ、わたしは…栗色のツヤツヤサラサラとした髪は肩に掛かる位の長さ、やや垂れ気味のクリッとした茶色の瞳に、ふっくらとした桃色の唇。身長は低めだけど、年齢の割には胸はある方かなぁ?…なアタマ弱そうに見える(って、前に別のコに言われたなぁ)高校一年生、田中愛実で〜す。
「ちょっと、田中! アンタさぁ、この前の日曜日! 山川とデートしてたでしょ!? 山川は佐藤の彼氏なんだけど! どういうつもりなのよ!!」
「他人の彼氏とデートするとか、それってどうなの? サイテーだと思わない?」
あーあー。もう、うるさいなぁ。
「あ、あのっ…わたしは、山川くんが映画のチケットあるから観に行かない? って誘ってくれたから…。それで映画に行っただけで、佐藤さんの彼氏さんだなんて、わたし知らなくて…えっと、ごめんなさい」
山川? 別に眼中に無いけど?
丁度観たかった映画で、奢りだったから〜。まあ、でも…そこそこイケメンでもあったから付き合って上げただけなのに…面倒くさいなぁ、もう。
「知らなかったって言うなら、今知ったんだし、もう山川には近寄らないでよね!!」
「佐藤の気持ちも、よく考えてみて」
「二人共、もういいよ。山川君が田中さんを誘ったみたいだし…山川君に、どうして田中さんを誘ったのか聞いてみるよ……私の為に怒ってくれてありがとう。田中さんも呼び出したりしてゴメンね? でも、私は山川君の事が好きって気持ちは誰にも負ける気はないの。だから、田中さんにも譲れない!」
ブス二人が鬼みたいな顔してギャンギャンギャンギャンうるさいんだけど〜、そいつらの裏で被害者面したブス(佐藤だっけ?)が一番うっざーい。
何気に牽制してくるし。そんな事されても〜、わたしは相手になんてならないよぉ?
「ううん、こっちこそ…ごめんなさい。今度から気をつけるね」
眉を下げて、心から申し訳なさそうな顔でそう言えば満足したのか、佐藤達は帰って行った。
私以外、誰も居なくなった校舎裏。
「……ふ、っ。あははははっ、バカじゃないのぉ? …なぁにが、譲れない!よ。ヒロイン気取りなの? べっつに、いらないっての〜」
心から謝る? そんな訳ないじゃない。私は何も悪くないし?
「さて…と」
制服のポケットからスマホを取り出し、呼び出した人物に電話を掛けると。それは、すぐに繋がった。
「…っ、もしもし、山川…くん? あの、ね…わ、わたし…ひっく、ううぅ…」
電話の向こうでは『愛実ちゃん!? 泣いてるのか!? どうしたんだ!?』『今ドコにいるの?!』等、わたしを心配する声が聞こえてくる。
あーんなに、ヒロインぶったセリフを吐いていたけどさぁ?
アンタのカレシはダレを見てるんだろうねぇ? ねぇ、佐藤サン。振られちゃうんじゃないのぉコレ。
「うっ、うっ…だ、第二校舎裏ぁ…ひっく、ぐすっ」
『解った! そこで待っていて!』
通話終了ボタンをタッチして、スマホをポケットに入れて壁に寄り掛かる。
「…なーんか、簡単すぎてつまんなぁい」
これなら、少し前。私と同じ名前の女の子が主人公って聞いて、気まぐれに手を出してみたオトメゲーム? っていう恋愛ゲームの方が、攻略が難しくて楽しかったよねぇ。
「ま、愛実ちゃん!」
おっと、山川が来た。嘘泣き再開〜。
「や、山川く…ぐすっ、うっう…」
「愛実ちゃん、一体何があったんだ!?」
「じ、実は――…」
私は山川に、佐藤達に呼び出されて山川に近付くなと言われた事を伝え、囲まれて怒られて、とても怖かったと言い、山川の胸に飛び込みつつ。
『そう言う事だから、もう山川くんには近付けなくなっちゃった…』と、弱々しくても笑おうとしたけど、笑うなんて無理です〜な顔で。涙を流しながら訴えた。
あははっ!もう、この後の展開は簡単に想像ついちゃうよねぇ?
「ねぇねぇ、聞いた? 山川君と佐藤さん別れたんだって!」
「えーっ、そうなの!? あんなに仲良さげで爽やかカップルとか言われていたじゃん!」
「ビックリだよねー? しかも、山川君。今度は田中さんと付き合い始めたらしいよ」
え〜、付き合っては居ないよ〜? 猛アプローチはされてるけど。
「えっ、田中さんて三年の高崎先輩と付き合ってなかった?」
「うーん、別れたんじゃない?」
「うわぁ!あんなに格好良い高崎先輩と別れちゃうなんて信じられない! 勿体無いぃぃ!!」
「あー、あんた高崎先輩のファンだっけ? でも、ファンなら別れたって話なら嬉しい話じゃないの?」
えーっと、高崎センパイ?
ああ…そう言えば居たねぇ。確か大きな病院の跡取りだっけ? んー、彼もまた、わたしの“ゲーム”の対象に過ぎなかったからなぁ…忘れてた。
「愛実ちゃん。おはよう!」
「あっ!山川くん、おはよう」
噂をすれば…ってやつ? 私が噂した訳じゃないけどねぇ。
「教室まで一緒に行こう」
「うんっ!」
ニコニコと笑顔で頷き、山川と廊下を歩く。
そこで、ちらりと視界に入ったのは、こわーい顔をした佐藤サン達。
…まあ、もう関係ないかな〜。なーんて、思って居たんだけどね〜。
この事から暫く後に。佐藤達のせい(おかげって言うべき?)で、わたしは飽きてきていた古い“ゲーム”から、新しくて“楽しいゲーム”を強制的に、ではあるけれど、始める事となる。
(ふふふっ。少しは、楽しませて貰えそうかな〜?)
次回からは、また平和(?)なマリスティアサイドからの話を予定しています。




