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歓迎パーティーから数日が過ぎて。一年生も本格的に授業が始まった。選択科目も決まって、こちらの方も授業は始まっている。
私は希望通りの三教科(薬草学、剣術、家庭学だ)を受けられる事になり、勉強面は一安心だ。
それから、お菓子作りの面。こちらは、学園の厨房では得られた使用許可を寮でも無事に得る事が出来た。(なんと、寮の料理長は女性だった!その上、東の小国の血を引くハーフだそうで…!サバサバした性格の姉御肌で、テキパキと料理人さん達に指示を出しながらも、ご本人も効率よくテキパキと仕事をしていた。黒髪に水色の瞳の美人さんで、名前はエウラさんというらしいんだけど、素敵な人だったなぁ…)
こちらも一安心だった。使用条件は学園側の厨房とほぼ同じだけど、寮では消灯三十分前までは使用可との事なので、そこが特に有難いな〜と思った。
そして…
「ねー!シャルー、ちょっと今いいかなー?」
勇気を出して、脱・お貴族言葉(まあ…『時々、素で喋っていましたよ』って言われたけどね…)しました!
勿論、外では貴族としての話し方を心がけるけど、寮の自室内(後は他に人が居ない時の厨房かな)では、今の私が話しやすい話し方で話す事になった。やっぱり、こっちの方がラクで良いなー。
「はい。何でしょうか、お嬢様」
ある日の夜。私は歓迎パーティー以降にも新たに学園の厨房で仕込んでおいたフルーツウォーターの細長い瓶を一瓶、寮に持ち帰っていた。(この瓶、よく夏に麦茶とか入れる、あのガラスのボトルに似てるんだよね…蓋じゃなくて、注ぎ口があれば正にそれだったのに惜しいな!)
その瓶を指して…
「これを飲んで見ようと思うんだけど…」
「なんと。お嬢様は瓶を飲み込むのですか」
んな訳あるか。
「揚げ足取らないでよ…。中身を!飲んでみようと思うんだけどね!」
「ほんの小洒落たジョークです、お嬢様」
真顔で言うな、本気にするわ。
「そう…その、シャルのジョークはハイレベル過ぎて、私にはついて行けない事があるから控えてくれると有難いわ…」
「そうですか?ハイレベルですか…そうですか…」
えっ?その思案顔は何なの?何を考えてるの!?……わ、わからん。
「ま、まあ、いいわ。それでシャルも試飲してくれる?サリーにもお願いしたかったんだけど…」
「ああ、彼女は今、実家に帰っていますからね…」
…そうなのだ。またしても、サリーは実家に帰っている。何かあったのか尋ねては見たのだけれど…
『何度もお嬢様のお側を離れる事となり、申し訳ございません。その上、ご心配まで頂きまして…。その…少々問題が起きてはいるのですが、すぐに片付きますので。お嬢様に気にして頂く程の事ではございません』
…との事で。心配ではあるけど、それ以上は聞けなかった。
「…うん。それで…」
「フルーツウォーターの試飲、でしたね。私も頂いて良いのでしたら是非、頂きます」
「ありがとう!じゃ、グラスを…」
持って来るわ、と言いきる前に。
「グラスでしたら、こちらにございます」
サッと。ピカピカに磨き上げられたガラスのグラスがシャルの手にあった。マジシャンか。(あ、魔法か!)
「ありがとう、それじゃ飲んでみましょう」
瓶の蓋を開けようと、蓋を回す…回すの、だけど……!
「ぐ…ぐぐ…」
…開かない。
うん。開かぬなら開くまで待とう、瓶の蓋…って!待てるかー!
「ぐ、ぬぬぬぬ!」
血圧上がりそうだな、これ。
ぐぬぬぬぬぅ!と更に苦戦をしていた私から、『失礼します』という声と共に細長い瓶はサッと上から取り上げられて…
カポッ!
「開きました」
かるーく、ひとひねりで開けちゃったよ…。流石、男の人だ。力持ちだね。
…最初からシャルに頼めば良かった。無駄に見せたくもない顔芸を披露してしまったではないか!
いつもお読み頂きありがとうございます…!




