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「それでは…早速で悪いのだけれど、午後の授業が終わる頃、一緒に学園の厨房まで付いてきてくれるかしら?」

「はい、畏まりました」


えっと、持ち物は…リンゴとオレンジ。それから…


「ねえ、シャル?」

「はい、何でしょうか?」

「厨房の調味料って勝手に使っても良いのかしら?」

「それは…恐らく少量でしたら問題はないかと思いますが、頻繁にとなりますと使用許可は下りないと思います。ただ、食器や調理器具でしたら、借りても問題はないかと思います」


だよねー。厨房(むこう)だって一人の生徒にそれを許したら…他の生徒からも、もし使用許可を求められたら断る訳には行かなくなるもんね。


「そうよね…。では、今日は調味料を必要としないものを作りますわ。シャル。急かして悪いのだけれど…明後日の放課後までに用意しておいて欲しいものがあるの、お願いできるかしら?」


明日は歓迎パーティーがある。放課後、厨房に篭もる訳にも行かない。


「物にもよりますが、可能な限りご用意致します」

「ありがとう。では、今からリストを作りますわ。少々お待ちになって」


リストには白砂糖(…グラニュー糖とかもあるかな?あれば便利なんだけどな)に蜂蜜、小麦粉等。他に幾つかの種類の果物と野菜を書き込み、出来上がったリストをシャルに渡した。


そして。私はリンゴとオレンジを持ち手が着いた籠に入れたりしながら、必要な物を用意して。学園の厨房に向かう準備を始めた。








放課後の学園、厨房にて。三角巾…は無かったので、大きめなスカーフを三角巾の代わりにして、首の後ろで結ぶ。


「はい。これは、シャルの分よ」


料理をする上で、衛生面を重視するのは当たり前の事だ。エプロンについては今日はまだ用意できていない。その為、厨房にあった予備の物を私とシャルの分…二枚を借りた。(勿論、後日。ちゃんと洗ってお返します!)


「…は?お嬢様。私も、頭にスカーフを巻き付けるのですか?」


いや、その表現だとちょっと違う出で立ちになりそうだな…。


「ええ。私達は髪が長いですし、衛生面を考えての事ですわ」

「確かに…そうですね。では、お借り致します」


シャルは執事とは言え、貴族だし料理をするような場面は今まで無かったのだろう。


スカーフを手に持ったまま、ジッとスカーフを見ていた…かと思えば…!?


「………っ!?!」


なにーーーっ!!?ほ、ほっかむり…だと!?


(おもむ)ろに、スカーフを被りだしたと思ったら…!?


シャルは、まさかのほっかむり装備となっていた。


(何だろう…無表情に近い表情だからかな?……シュールだ)


……そういや、前世で…笑ってはいけない○○時〜なんちゃら…って番組があったなぁ。あれ、面白かったんだよねー。…うん、今ちょっとだけ逃避した。


「…様?お嬢様?」

「あ、ええと…なんでもありませんわ。ところでシャル、少し屈んでくださるかしら?」


いや…シャルは三角巾なんてした事ないよね。…まあ。それは、マリスティアもだけど。


向かい合うようにして。シュッと、シャルのほっかむりを解いて、スカーフを額の上から首の後ろに来るようにして…


「シャル。少し髪を上げていて下さる?」

「……はい」


スカーフを結ぶ。うん、上手く出来たね!


「これで、大丈夫ですわ」


ニッと笑って見せると…


「…お嬢様のお手を煩わせてしまい申し訳ありません、ありがとうございます。それから…」


ほっかむりをしてしまったのが恥ずかしかったのか(農作業とかなら正解だったんだけどね)、年下の子に三角巾を結ばれたのが恥ずかしかったのか…少しだけ、シャルの色白の頬は朱色に染まっていた。


「え?何かしら?」

「お顔が近いです。お嬢様」


おお。言われてみれば確かに…!


「ご、ごめん!…なさい」


…いや。驚いたけど、さ。綺麗な顔はアップでも耐えられるものなんだね…。目の保養ありがとうございます。


「…いえ。ですが、お嬢様」

「はい?」

「こういった事を他の異性の方には、くれぐれもなさらないようにして下さいね。無防備過ぎます」

「え…ええ。と言うか。この学園に通う男性の方は、殆ど料理などしないと思いますし…まず、私と一緒に料理をするような方は、いらっしゃらないと思いますわよ?」

「それでもです」


いいですね!?と、シャルにしては珍しく語気を荒げて念を押されてしまった…。



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