第8話 『母乳と屁の残響』
光の聖域が完全な静寂に包まれることはない。
外の世界では影がすべてを喰らい尽くしているというのに、ここでは水の滴る音と湯気の反響が、重苦しく、どこか息詰まるような空気を作り出している。
俺は隅の方で古びた毛布にくるまり、明日のオークヘイヴンへの出発に備えて、この十歳の体に休息を与えようとしていた。
だが、眠りは訪れなかった。
俺の視線は、数メートル先の温泉に浮かぶアイリアナのシルエットに釘付けになっていた。ルーン文字の微かな輝きに照らされたその姿。
彼女がどれほど変わってしまったか、考えずにはいられなかった。
今、口を半開きにして、空の徳利を横に浮かべて眠っているあの女は……昔はあんな風じゃなかった。
実体化したばかりの、ただのエネルギーの胎児だった俺を抱き上げた時のことを覚えている。
その緑の瞳には厳かさがあり、エルフという種族を超越した、純粋な母性の光が宿っていた。
今の怠惰な姿からは想像もできないほどの献身さで、彼女は俺に授乳してくれた。
彼女の肌の感触、胸の温もり、そして規則正しい心臓の鼓動……。それは未知の世界における俺の唯一の避難所だった。
無限の慈しみと、そして今は消えてしまったかのような「希望」を持って、俺を見つめていたんだ。
今の彼女は、母子の絆を無理やり消し去り、「不作法な師匠と呆れた弟子」という関係に書き換えようとしているように見える。
その欠落した母性は、どんな戦闘の傷よりも深く俺を傷つけた。
サイクルが再び始まった時に苦しまないよう、無関心という仮面を被っているのではないか。
俺の魂が大人であっても、この子供の体は今も彼女の温もりを求めていることを、彼女は知っているはずだから。
そんな彼女の零落した、無防備な姿を見ていると、深い悲しみと混ざり合った怒りが込み上げてくる。
洞窟の静寂を、聞き慣れた音が破った。
ぷぅ〜〜〜♡
酒に酔いしれて眠るアイリアナが、水底から小さな気泡を放った。
俺は目を閉じたが、顔に浮かぶ赤らんだ、それでいて懐かしげな苦笑いを抑えることはできなかった。
不潔だ。だが、それは彼女がそこに存在しているという音だった。
俺は、これまでの四つの人生を彩ってきたその音のバリエーションを思い返していた。
まずは「瞑想の気泡」。古い羊皮紙に集中している時に漏れるやつだ。
乾いていて、短く、どこか控えめ。ぷっ。ぷっ。ぷっ。
次は「勝利のエマナチオン」。俺が難しい魔法をマスターした後に放たれる。
それは長く、響き渡り、まるで彼女の体そのものが俺の成長をグロテスクなファンファーレで祝っているかのようだった。
ぷるるるるるっ、ぷぅ〜〜〜♡!
二度目の人生で、マナの理論を教わっていた時のことを思い出した。
彼女は座ったまま寝落ちして、三秒間も壁にエコーが残るほど凄まじい一発を放ったんだ。
俺は本を手にしたまま固まり、本人は夢の中で片方の尻をポリポリと掻きながら、いびきをかき続けていた。
あるいは、お湯が特に熱い時に温泉で放たれるやつ。
ぷぷ、ぷぅ〜〜〜〜〜♡!
それは液体的で、深く、黄金色の気泡の列となって水面に浮かび上がり、俺のDNAの一部となってしまったあの甘くツンとする香りと共に弾ける。
奇妙なことだが、俺の大人の精神は、その音色をすべてカテゴリー分けしてしまっていた。
俺の失敗を笑うような、鋭く小馬鹿にしたような音。
機嫌が悪い時や二日酔いの時に放たれる、重苦しく低い音。
そして今、深い眠りの中で漏れる音。
それは柔らかく、リズムに乗っていて、まるで彼女がそこにいることを告げる肉体的な喉鳴らし(ゴロゴロ音)のようだった。
暗闇の中で、彼女のガスの「聴覚的テクスチャ」を何時間も分析し続けた。
その音の一つ一つが、俺と彼女を繋ぐ糸だった。
たとえバカ神で不潔であっても、彼女はこの世界で俺に命を与えてくれた存在であるという証拠。
酒の臭いに覆われる前の、長い入浴後の肌の匂いを覚えている。
俺が小さかった頃、強く成長するために彼女の乳を吸うことだけが唯一の関心事だった、あの胸の柔らかさを覚えている。
あの満たされた感覚、絶対的な保護……それこそが、俺が最も取り戻したいものだ。
一体、いつ壊れてしまったんだろう。
四つのタイムラインのどの時点で、彼女は俺の母親でいることが苦痛すぎると決めたんだろうか。
時々、今の無責任さや厚顔無恥な振る舞いは、すべて演技ではないかと感じることがある。
俺がまた死ぬのを見た時に傷つかないよう、感情的に距離を置こうとする、無理な虚勢のように。
ゲップとアルコールで築き上げた、ネグリジェの防壁。
空間のヴェールを越えて、聖域で休む彼女の微かな残響が耳に届く気がした。
アイリアナは今頃、温かいお湯に浮きながら、完全にリラックスして眠っているはずだ。
ぷぅ〜〜〜♡
その音は短く、高く、まるで見当違いなバイオリンの不協和音のようだった。
不意に首筋が熱くなる。暗い森の中で、俺の頬は火照っていた。
「……あの女、本当に救いようがないな」
隠しきれない懐古の笑みを浮かべ、俺は囁いた。
彼女の「エマナチオン」を、まるで秘密の言語であるかのように分類し始めている自分の精神が可笑しかった。
大人の脳がどう否定しようとも、「家」という概念と結びついてしまったあの香りを伴う黄金の気泡。
不潔だ。汚らしい。神としての尊厳など微塵もない。
……それでも、俺は安らぎを感じてしまう。
一度目の人生、五歳の時のことを思い出した。
彼女は石のソファで寝ていて、俺は火魔法の魔導書を読もうとしていた。
突然、彼女があまりに長く大きな一発を放ったせいで、本人がその音に驚いて飛び起き、目をこすりながら真っ赤な顔で辺りを見回したんだ。
ぷるるるるるっ、ぷぅ〜〜〜♡!
「今の、ドラゴンかしら? クイチくん」
眠気でかすれた声で彼女は訊いた。
俺は笑いと嫌悪で死にそうになりながら、ただ彼女の尻を指さすことしかできなかった。
あの頃、彼女はまだ俺と一緒に笑っていた。
あの羞恥心の中にあった温かさは、今や完全な無関心に取って代わられてしまった。
そのノスタルジーが、衝撃魔法のような強さで俺を打ちのめした。
あの放屁の一つ一つが、彼女がそこにいるというリマインダーだった。
世界が終わろうとも、彼女は物理的な定数であり、最も世俗的な方法で現実を処理する肉体を持った存在なのだ。
俺はガスの音色や長さ、質感を、まるで楽譜のように分析している自分に気づいた。
高く小馬鹿にしたような音、低く威厳のある音、そして俺が聞いていないと思っている時に漏らす、柔らかく控えめな音。
脳内で行われるその見えない「コンサート」が、暗い森の孤独を和らげてくれた。
俺は毛布を胸に抱き寄せ、胎児のように丸まった。
十歳の体は、大人の精神が拒もうとする「接触」を激しく求めていた。
「帰りたい……」
諦めるために帰りたいわけじゃない。
二度目と三度目の死の間のどこかで迷子になってしまったアイリアナを、取り戻さなければならないからだ。
俺のことなんてどうでもいいという振りを、もうやめてほしい。
退屈そうな目ではなく、愛を持って俺を見つめてくれた、あの母親としてのエルフに戻ってほしいんだ。
目を強く閉じ、温泉の香りと酒、そして彼女自身の香りが混ざり合った空間を想像した。
彼女の腕の中に戻りたいという、生物学的な渇望が突き刺さる。
冷笑と不潔さの層の下に埋もれてしまった、あの母性をもう一度感じたい。
レベルや影のことなんて気にしなくてよかった、あの赤ん坊に戻りたい。
彼女の胸に顔を埋め、神聖な乳で疲れ果てた魂を潤し、三度の死のトラウマが消えるまで甘やかされたい。
屁やゲップが、ただ「生きている」ことの証だと笑えるくらい、強く抱きしめてほしい。
「……もう一度だけ」
眠りに落ちる間際、俺は呟いた。
もし今回、世界を救うことができたなら、真の報酬は栄光なんかじゃない。
彼女に酒を辞めさせ、温泉を掃除させ、時の始まりに俺を育ててくれたあの母親に戻ってもらうことだ。
彼女の温もりを取り戻したい。奪われた幼少期を取り戻したい。
その思いと共に、俺は深い眠りに落ちた。
明日、オークヘイヴンへの道が始まる。
だが今夜、夢の中の俺は、不作法な女神の胸に避難所を求める子供のままだった。




