表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の本   作者: 勇気
アリカポル
8/13

歴史は語る

「弱っちい奴め、やっぱアリカポルの魔導士といってもガキだな」

「…お前もガキのくせに」

 マルザ建国1261年、ジュコさえも生まれるもっと前。

 マルザ国領地内の浜で、二人の子供が分厚い木の枝を持って遊んでいた。

 二人とも今年で11歳を迎え、一人は母と一緒にマルザを観光しに来ていた。

 もう一人はマルザに住む子供で、国が迎え入れたハコシタの騎士を見て、剣を持つことにあこがれた。

 今はそれに、アリカポルの子供が彼のお遊びに付き合わされているところである。

「なぁ、ローリー、そろそろ宿に帰らせてくれよ。太陽も沈みそうだしさ」

 一人の子供が浜の先を見る、そこには確かに空の色を変えるほど強く光る太陽が水平線に近づいてくる。

「…もうちょっとだけ、なあラビ?!」

 ローリーと呼ばれた子供は言った。

「…」

 ラビと呼ばれた子供は木の枝をよく見て、それから即座にローリーに襲い掛かる

「捕まえたッ!」

 ラビはそう言ってローリーの頭に枝をあてようとするが一瞬のうちにローリーは自分の枝を構え、頭を守るとラビの枝が半分に壊れる。

「あああ…」

 苦労して見つけた枝を壊してしまった。

「枝が壊れちゃったんだし、俺が勝ったってことで今日は帰らせてあげる」

 ローリーはにやにやしてラビにそういった。

 自分の枝を肩に乗せて、余裕を見せる。

「魔法が使えるまでは負けを認めないからなッ!」

 ラビはそう言って走って街へ戻っていく、それにローリーは「ふざけんじゃねぇッ!」と言って追いかける。


「ここの図書館はアリカポルにある魔法学校の図書館よりも十倍は大きいのよ。ラビ、魔導士になりたいのであればここで勉強しなさいね」

 街に戻ってきたラビはローリーと別れ、母に呼ばれて図書館に向かうとそれはそれは巨大で、いろんな本があった。

「知恵を求めに来てくれたのであれば、ここが一番ですよ」

 ラビが周りを見ていると突然前から男性の声がした、ラビに比べてとても背が高く、茶色のスーツを着ていて、白髪が…いや、白髪ではなくもともと髪は白いみたいだ。

「こんにちは、この図書館の保護をしているラズバノ、と申します。」

 男はラビの母に握手を求める。


 その日がきっかけで、ラビ・ケンゴーは毎月アリカポルから離れ、マルザに行き、そこで勉強をするようになる。

 時は過ぎて、12歳、13歳、そして15歳。

 勉強だけではなく、もともと友人だったローリオンともいつも遊んだり、剣の練習を手伝わされていた。

 ある日ラビが図書館で勉強しているときだった、小さい子供が彼に近寄ってきた。

 図書館を守っているラズバノと同じく、髪は白く、子供はまだ10歳にも満たなかった。

「こんにちわ」

 子供はラビに言う。

「こんにちは」

 ラビは答えて、本にまた没頭すると子供は彼をじろじろ見ていた。

 ラビは子供のことが気に入ったのか、名前を聞くことにした。

「君の名前は?」

 ラビは子供のほうを向いてそう言った。

「ジュコです」

 敬語で子供は答えるとラズバノが現れてジュコを抱っこし「うちの子がすみません」と、それだけ言ってジュコ君を連れて行った。

「…行儀よさそうな子供だったのにな」

 正直勉強に飽きていたラビは、本を読むよりも子供と話したかった。

 しかしあの子が連れていかれたからには本を読むしかなかった。


 ラビが17歳の時、魔法騎士になるためにアリカポルで修業をすることになった。

 もうマルザへきて、ローリオンと剣の練習はできなかった。

 ラビは最後に彼らがよく遊んでいた浜に向かい、沈む太陽を見ながらローリオンが来るのを待つ。

「…本当に戻ってこれないのか?」

 後ろからラビに話しかけてきたのはローリオンだった、片手に木剣と、もう片手に鍋のふたを持っていた、背中には同じものを背負っている。

「魔法を本格的に習って、魔法騎士になるんだ。」

 ラビは振り返るとそういった。

 ローリオンが来るのはわかっていたため、別に驚いていなかった。

「なら最後の勝負をしよう、お前の剣だ」

 ローリオンはそう言って背中に背負った木剣と鍋の蓋を砂に投げる。

「俺も騎士になる。勉強はしてないが、剣の特訓はずっとした…騎士になって……」

 ローリオンは言おうとするが、言葉が出ないみたいだ。

「俺がお前を超えるのを待ってくれるって? 親切なことだな、超えてやるよ。来いッ!」

 剣と盾を手に、二人はぶつかり合った。

 それも、10年後までは最後の勝負だった。


 それから勉強を続け、魔法を習い、剣を習い――

 ラビは魔法騎士になって騎士団の一員として世界を旅する…

 そしてローリオンは剣の道を歩み、ヘイピットで特訓した―――

 勝負の次にまた勝負、騎士にはなれず、ただのヘイピットの犯罪者扱い。

 泥棒を捕まえ、魔物を殺し、そしてできるだけ国の役に立ったというのに、ローリオンはヘイピットの執行官に目を付けられ、剣を盗られてしまう。

 ローリオンはその恨みでヘイピット周りの鬼人の巣をすべて破壊し、魔物をヘイピットにあふれさせる。

 すべてが燃えるのを遠くで見ながら、執行官の頭をつかんで、盗まれた剣で男の首を斬った。

 それを聞いてマルザ王は、こう思った。

「マルザから初めて、殺人鬼が現れた」と、しかしローリオンは檻に入れられたわけでもなく、死刑にされたわけでもない。

 マルザ王はその血に飢えた目を好んだ。

 そして誕生したのがヘイピット人で構成されたローリオン騎士団。

 その時はまだ、ラビの名も挙がっていなかった。


 ラビが26歳になった時、騎士団を受け継ぎ、アリカポル騎士団長になる。

 ラビ・ケンゴーはハコシタの戦争で武士を拘束したことにより名を残し、ラズバノ大陸では特に人気があったが、その名はまだ正義の味方、ローリオン騎士団にはかなわなかった。

 世界を回って犯罪者をとらえ、戦争を止め、そして一般人を救った。

 しかしそれでも強く、大きく、そして圧倒的な存在感を持っていたローリオンにはかなわない。

 そんなことを続けるうちに二つの騎士団に同時に、ある手紙が届く。

 手紙の内容は、伝説の本の回収依頼。

 そしてドラゴンの討伐。

 二つの騎士団がそれぞれ違う大陸にいながらも、彼らはその仕事を引き受けた。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 時は過ぎて、ジュコの父が死ぬ1ヵ月前。

 石と木材、藁の積まれた荷台車、地面には窓から民衆によってすてられたゴミ…

 そんな汚く、機械に頼る国ピチューノはそれでもラズバノ大陸1の金持ち国家だ。

 カーラの家、ほかの建築物とは変わらない家に一通の手紙が届いた。

 機械に頼らないカーラの母は手紙読みを持っておらず、いちいち扉まで行って手紙を取りに行く必要があった。

 カーラの母親は50代くらいの人で髪は黒く、手はいつもハーブのにおいがした。

 鼻はカーラのように高く、赤い唇をして、いつも汚れると知っていながらも白い服を着ていた。

 いつものように手紙を手に握り、宛先を見てみる。

「…カーラ様と、カーリー様へ」

 カーラの母親は声に出して宛先を読んだ。

 眉間にしわを作り、今度は娘たちが何をしたんだと心配になりながらも誰の手紙なのかを気にしていた。

 まず、なんだと思い恐る恐る母親は手紙を開ける…

「アリアドンテ国の王 マルガルス王は二人の魔女を国に招待する。私たちは二人のピチューノでの看護師による活躍を見込み、アリアドンテに招待しわが兵たちの看護をお願いする…」

 母親は見る目を信じなかった…

 しかしまだ続く。

「船はシャルザにて用意されている、準備が整い次第ローリオン騎士団が迎えに参るだろう」

 そしてその下には空白が続く…

 ドンッドンッ!

 突然扉をたたかれると母親は驚いて少し後ろに一歩引いた。

「ローリオン騎士団でございます」

 扉の向こうから声が聞こえた。

「…!!」

 母が一番最初に考えたこと、それは…

「娘に別れを告げることができないのかもしれない」

 だった。

 カーラとカーリーは今ピチューノの病院にて看護の仕事をしている、騎士団にカーラがそこにいると言えば娘は連れていかれる。

 母親は時間が欲しかった。

 しかし時間というのは戻ってはこないし、ずっと流れるものである。

 母親は扉を開けた。

 そこには鉄と金の鎧をした大男とその後ろに鉄の鎧をした男たちが立っていた。

「…カルラ様でしょうか?」

 ローリオンは聞いた、彼はこの人がカーラではないことくらい、わかっていた。

「ええ…」

 母親は答える。

「娘さんはどちらに?」

 丁寧に聞く。

「…」

 ローリオンは過去にヘイピットを燃やしたことがあった、そのせいか隣国のピチューノの一部に火が通り、国の一部が焦げてしまっていた。

 民衆から嫌味のような目つきをされて、もともと金持ち嫌いのローリオンは腹が立っていた。

 なぜこんなところに来なければならない、と。

 母親を見下すように見つめるローリオンには、家族への愛なんて見えなかった。

 彼はこんな汚く、マナーのない国をさっさと滅ぼしたかった。

「病院にでもいるんだろ。答えたくないのであれば私たちは先へいかせてもらう」

 ローリオンは振り向いて家の前の階段を丁寧に下がり、泥にまみれた道路を踏みにじると右から赤いものが飛んできた。

 ローリオンの胸に当たるとつぶれて液体が落ちる。

 トマトを投げつけられた。

 右を向くとそこには汚らしいナリをクソガキがいた。

「殺せ」

 ローリオンは一言だけ言った。

 騎士が二人子供の後を追いかけると子供は逃げていく。

 そしてローリオンは先へ進んだ。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 昼、同時刻。

 アリカポルの酒場で酔いつぶれた男がいた。

 ローリオンとは違って小柄で、青黒いジャケットに…

 あとはわかるだろ? ラビだ。

 髭は伸ばして全く剃っていなく、腕は泥で黒かった。

「ママ」

 酒場の店主に言う。ラビは頭をテーブルの上に休ませほぼ寝ている。

「男だ、俺は」

 カウンター越しにコップを拭いている男が言った。

「なんでなのかな、伝説になりつつあるラビ・ケンゴーがこうなったのは」

 店主は言った。

「…」

 ラビはコップに入った酒を飲もうとすると一滴だけ落ちてくる、コップの中身はカラだ。

「ローリオンに負けた」

 ラビはコップを地面に投げ捨てるとそういった。

「だからって酔いつぶれるのか? 情けない騎士め」

 コップを一拭きすると音を立てた。

「かなわない。この世にローリオン騎士団以外そんざいしてはならない」

 ラビはそう言って一生懸命立ち上がると少しバランスを崩してテーブルに倒れかけてしまう。

「女房んとこもどらなきゃな」

 ラビはそう言った、コインを何枚かテーブルの上に残して酒場から出ていく…

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 カーラとカーリーはピチューノの病院で腕を盗賊に盗まれた男の看護をしていた。

「やっぱり機械をぶら下げてピチューノの外に出れば、盗賊に取られるもんだな」

 濃い髭にジェルのかかった髪の毛にメガネをした患者が言った。

 隣では何とかして新しい腕をはめようとするカーリーがいる。

「…集中してるから…」

 カーリーはそう言ってえらく重たい機械の腕を男につけようとするがどこから始めればいいのかもわかっていなかった。

「…大丈夫だよおお嬢ちゃん、重いでしょ? あとで男の人にはめさせてもらうよ」

 患者は椅子に座りながら少し猫背のまま、笑ってカーリーにそういう。

「ちょっと待って、多分ここを…」

 カーリーがそういうと男の腕にあった機会をはめる部分の鉄の何かを落としてしまう。

「アアッ!!」

 男は叫んで立ち上がると走ってどこかに逃げた。

「ポンコツがよ、機械を扱えないならそういう患者は私に任せろって言っただろ?」

 あまりにも明るい病院の中で、天井のクリスタルから照らされる白い光を浴びたカーラが、カーリーの後ろにいた。

「ごめん」

 カーリーは下を向いてそう言った、彼女の腕には赤い宝石のブレスレットが光る。

「…大丈夫よ」

 カーラはそう言って膝まづき、座っていた妹の膝に触れる。

「無理はしなくていいの、私のほうが経験あるんだから任せて?」

 優しくそういうと立ちあがり、片手にガラスの瓶をもって男の逃げた方向に歩いていく。

「何するの?」

 座ったままのカーリーはお姉さんを目で追いかけながらそう言った。

「麻酔のポーションをかけるの、あんたが落としたのは多分彼の機械の腕に”感覚”を感じさせる装置なの。多分体中に電気が回って痛いんだわ」

 カーラはそう言って廊下を曲がって消えていった。

 すると突然ドンッドンッっと足音が聞こえる、病院の外から来ている。

 その足音は地面を強く蹴りつけ前に進む音、そして同時に鎧の鉄が擦れて音を立てる。

 カーリーが窓から外を見てみるとそこには20人ほどの騎士たちと1人、とても大きい男がいた。

 後ろにいた一人の騎士は槍をもっていた、槍の先には子供の頭が突き刺さっていた…

「ローリオン…騎士団…?」

 カーリーはつぶやく、彼女は本物の騎士団なんて見たことがなかった。

 しかし子供の頭をぶら下げてピチューノを横断するとは相当勇気のある人たちなのだろう…

 カーリーはあの子供を知っていた、よくケンカをして病院に連れてこられていた子供。

 ヘイピットに一番近い東ピチューノに住んでいた、しかしヘイピットから火がよし押せてきて、家と家族を失った子供…

 ローリオンに腹を立てる理由はピチューノに住んでいる人はみなわかっていた。

 多くが家を失った。

「あんたたちみたいなゴミクズ集団はこの病院から消えやがれゴミがッ!!」

 下から声が聞こえた。

 窓から頭を出して下を見ると病院の入り口にカーラが突っ立っていた、騎士団に向かって叫び、入らないようにする。

「カーラとカーリーという魔女たちを探している、知ってるかな?」

 ローリオンは言った。

「あんたのケツの穴に鉄ぶち込んでクリスタル使って掘り下げてやる糞野郎ッ!」

 カーラは叫ぶ。

「お前が魔女だな」

 ローリオンはカーラに指をさしてそういった、口元では笑っていても目は変わらないままだった。

「…!!」

 歯をむき出しにして怒りを見せるカーラはそれでもローリオンにとっては吠える子犬にしか見えなかった。

 ほかの騎士たちは黙ってみているだけだった。

 カーリーは嫌な予感がして窓から離れ、下の階に走って向かっていく…

「君は、カーラ? それともカーリー?」

 ローリオンは手を剣においてカーラにそういった。

「カーラよ、それ以外の呼び方は認めないわ」

 カーラはそう言った。

「二人はアリアドンテに招待された、私たちは仲間だ。」

「だけどピチューノはお前の仲間じゃない、勘違いするな」

 カーラは即座に怒鳴る。

「誇り高きローリオン騎士団と共にアリアドンテのために働ける、大いなる名誉だと思わないのか?」

 ローリオンは剣からゆっくり手を放す。

「名誉? 誇り? 騎士団ごっこは楽しいかクソガキがッ! そのまま一人で妄想してろ」

 カーラはまた怒鳴る。

 ローリオンは片手でもみあげをなでて、眉間にしわを作る。

 風は吹き荒れ、道路に落ちていた泥のかかった紙や新聞は宙に舞う。

 ゴミのにおいは風に流されて、国全体を覆う。

「カーラッ!!」

 病院内から出てきたのはカーリー。

「待ってッ!出てこない――」

「捕まえろッ!!」

 ローリオンは即座に命令をするとカーラを隣に押し倒してカーリーを騎士二人が捕まえ、ローリオンの後ろに戻る。

「戻してッ! この野郎ッ!」

 カーリーは叫んで、抵抗し、暴れるが女一人の力は騎士二人にはかなわなかった。

「お前は、私たちにアリアドンテまでついてくる。そうしたらおまえの家族は殺さない上にピチューノにも何もしない。

 ローリオンはそう言って振り向いて、ピチューノから出ていく。

 カーラは、ついていくだけだった…


続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ