関係
「なぜアダルマに今アリカポル人が多いと思う」
「わからない。出ていけ」
「答えは簡単なんだ、アリカポルは今荒れたラズバノ大陸の統一を目指してる。アリアドンテと対等な関係を求めているんだ」
「…知らない」
「アリアドンテは昔からそうだった、小汚い真似をして勝つ奴らなんだ。でもカイロ王は正々堂々を好む。ラズバノ大陸中に大量の使者を送り込んだんだ」
「お前もか」
「俺は…逃げ込んだ。アリカポルという地獄の冬から逃げ込んだ。しかも、とてもうれしい、あいつらは不幸なんだ、姫が殺されたのも当然だ。全員クズだっ!」
ラビ・ケンゴーは武器屋で、倒れた店員と話を、いや、倒れた店員に話を聞かせていた。
「宰相を見てみろ。クロイというやつだ、姫が殺されてから一切アリカポルに戻ってない。それは何だと思う」
「わからないから出て行けと言っているんだッ! 店のかたずけをしなければならない」
「あいつは王の不幸を笑っている。嘲笑っているんだよ、でも、直視するとついつい笑いがこみあげてくるから、逃げたんだ。出張を理由にしてね」
「お前はなんなんだ、店を荒らして――」
「国を荒らしているのは裏切り者たちだ。裏切り者たちの陰謀なんだ、それを王に言ったんだ、陰謀だ、陰謀なんだ、アリアドンテは何かを企んでいる、クロイもその仲間だ。全員糞だ。糞人間だッ!」
「おまえ、酒を飲んでいるのか?!」
背中を踏まれたままの店員が上を向くと、そこにはロングコートの内ポケットから出した酒の瓶を口に突っ込むラビが見えた。
「アリカポルに勝ち目はない。最も汚い者が勝利を手にする、我々も、破壊されたピチューノも、戦争のど真ん中に立っている。止める方法があったのなら、もう遅いかもな」
「出ていけ…」
店員が小声でそう、つぶやくと
ラビはついに足を男から離して、入り口まで向かった。
「…弁償はできない」
「知っている。もう、一人にしろ。出ていけ」
「…」
ラビはそのまま通りに出て、扉を強く閉めようとするとドアノブが外れ、そして気が付いたら扉丸ごとが地面に落ちた。
「…す、すまない。俺はこの後、用事があるんだ」
ラビが謝ると店員は何も言わずにそのまま寝るように目を閉じた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「えー皆さんッ! 新米の戦士の登場でございますッ! 一人で歩いてアダルマにたどり着いた15歳の少年―― その理由もなんと”家出”…ッ! 修行をするために戦い、そして世を知るために冒険するッ! ポロシャツのォォォ…ミツルぅぅぅぅ!!!!」
コロシアムの建物は丸く、内側に戦士たちが戦うための場があった。
そこにポツンと、一人の少年が立つのを見て観客たちは悲鳴にも似た声を出し、そして喜んだ。
何百人…いや、何千人もいた。
席たちは人間でいっぱいいっぱいで、それぞれ違う色の服を着て、それぞれ違う帽子、顔、そして過去を持った。
そのために、白い黄色のコロシアムは色とりどりのようだった。
観客たちの声が大きすぎるがゆえにミツルの耳に響き、そして一瞬両耳をふさごうと思った。
でも、こう叫ばれるのも、悪くない。
栄光を手にするための第一歩かもしれない。
「どんな相手でも…!」
ミツルは先だけに目を当て、そして与えられた丸い盾と、大きく重い剣を片手ずつ持った。
「そしてポロシャツのミツルの初相手になる戦士…ッッ!!」
「伝説級の伝説級の伝説ゥッ! 剣と魔法だけを愛し、愛したがゆえに崩れたおおおおおおとおおこおお!!」
「アリカポルから亡命し、今じゃ糞野郎として成り下がった”元”騎士団長ッ! ハハ! ラビィィィ・ケンゴォォォォォォ!!!!」
「らび…けんごー…」
「ラビ・ケンゴーだクソガキ」
大量の矢が刺さり、そして傷と、穴だらけの木製の大扉が開かれると、その中からは自信満々に笑みを浮かべながら盾を捨てて、酒の瓶を持つラビ・ケンゴーが現れた。
「なんでいちいち俺についてくるんだこのストーカー気質のアル中め!」
「アル中? なんだそれ?」
「死ね! 出てけ! 俺に近づくな! ナレーターッッ! 相手変えろッ!」
すると観客たちの席から少し上にいたナレーターがミツルの声を聞きつけたのか、すぐに返事をした。
「むりぃ!」
観客たちがさらに熱狂すると、ナレーターも明るく、熱狂し始めた。
「おっとぉぉ?! 知り合いなのかなッ!? これは、”因縁の再会”! の予感ン!?!?」
「うっとうしい!」
「さぁ、試合開始まであと少しィッ! ラビ・ケンゴーは盾を捨て、そして酒をにもつぅッ!」
「乾杯!」
酒瓶を上にあげて観客たちに見せびらかす。
「皆さん数えましょうッ! 3!」
観客がまた熱くなる――
声が響き渡り、そして全員で数え始める。
「2!」
ある者たちは立ち上がって、かわいそうなミツルに木製の盾ではなく、鉄製の盾を戦場に投げはじめる。
「行けッ! 少年!」
声たちの中から応援が聞こえてくる。
「1!」
ついにラビが酒をまた口にやって、なくなったことを確認してから壁に投げ捨てて割った。
「ガキ、運命かもな。俺も稼ぎはコロシアムなんだ。でも、勝たせることはできない、初試合でもな」
「…大人のくせして……」
「試合―――」
「準備できてるか、ポロシャツのミツル」
「できてないけど、できてないからこそ観客が喜ぶ」
「開始ィィィィィィッ!!!!」




