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伝説の本   作者: 西村系
キャピタルヨルグ(アダルマ)

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30/31

関係

「なぜアダルマに今アリカポル人が多いと思う」

「わからない。出ていけ」

「答えは簡単なんだ、アリカポルは今荒れたラズバノ大陸の統一を目指してる。アリアドンテと対等な関係を求めているんだ」

「…知らない」


「アリアドンテは昔からそうだった、小汚い真似をして勝つ奴らなんだ。でもカイロ王は正々堂々を好む。ラズバノ大陸中に大量の使者を送り込んだんだ」

「お前もか」

「俺は…逃げ込んだ。アリカポルという地獄の冬から逃げ込んだ。しかも、とてもうれしい、あいつらは不幸なんだ、姫が殺されたのも当然だ。全員クズだっ!」


 ラビ・ケンゴーは武器屋で、倒れた店員と話を、いや、倒れた店員に話を聞かせていた。


「宰相を見てみろ。クロイというやつだ、姫が殺されてから一切アリカポルに戻ってない。それは何だと思う」

「わからないから出て行けと言っているんだッ! 店のかたずけをしなければならない」


「あいつは王の不幸を笑っている。嘲笑っているんだよ、でも、直視するとついつい笑いがこみあげてくるから、逃げたんだ。出張を理由にしてね」


「お前はなんなんだ、店を荒らして――」


「国を荒らしているのは裏切り者たちだ。裏切り者たちの陰謀なんだ、それを王に言ったんだ、陰謀だ、陰謀なんだ、アリアドンテは何かを企んでいる、クロイもその仲間だ。全員糞だ。糞人間だッ!」

「おまえ、酒を飲んでいるのか?!」


 背中を踏まれたままの店員が上を向くと、そこにはロングコートの内ポケットから出した酒の瓶を口に突っ込むラビが見えた。


「アリカポルに勝ち目はない。最も汚い者が勝利を手にする、我々も、破壊されたピチューノも、戦争のど真ん中に立っている。止める方法があったのなら、もう遅いかもな」


「出ていけ…」

 店員が小声でそう、つぶやくと

 ラビはついに足を男から離して、入り口まで向かった。

「…弁償はできない」

「知っている。もう、一人にしろ。出ていけ」

「…」

 ラビはそのまま通りに出て、扉を強く閉めようとするとドアノブが外れ、そして気が付いたら扉丸ごとが地面に落ちた。


「…す、すまない。俺はこの後、用事があるんだ」

 ラビが謝ると店員は何も言わずにそのまま寝るように目を閉じた。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

「えー皆さんッ! 新米の戦士の登場でございますッ! 一人で歩いてアダルマにたどり着いた15歳の少年―― その理由もなんと”家出”…ッ! 修行をするために戦い、そして世を知るために冒険するッ! ポロシャツのォォォ…ミツルぅぅぅぅ!!!!」

 

 コロシアムの建物は丸く、内側に戦士たちが戦うための場があった。 

 そこにポツンと、一人の少年が立つのを見て観客たちは悲鳴にも似た声を出し、そして喜んだ。


 何百人…いや、何千人もいた。

 席たちは人間でいっぱいいっぱいで、それぞれ違う色の服を着て、それぞれ違う帽子、顔、そして過去を持った。

 そのために、白い黄色のコロシアムは色とりどりのようだった。


 観客たちの声が大きすぎるがゆえにミツルの耳に響き、そして一瞬両耳をふさごうと思った。

 でも、こう叫ばれるのも、悪くない。

 栄光を手にするための第一歩かもしれない。


「どんな相手でも…!」

 ミツルは先だけに目を当て、そして与えられた丸い盾と、大きく重い剣を片手ずつ持った。


「そしてポロシャツのミツルの初相手になる戦士…ッッ!!」


「伝説級の伝説級の伝説ゥッ! 剣と魔法だけを愛し、愛したがゆえに崩れたおおおおおおとおおこおお!!」


「アリカポルから亡命し、今じゃ糞野郎として成り下がった”元”騎士団長ッ! ハハ! ラビィィィ・ケンゴォォォォォォ!!!!」


「らび…けんごー…」


「ラビ・ケンゴーだクソガキ」

 大量の矢が刺さり、そして傷と、穴だらけの木製の大扉が開かれると、その中からは自信満々に笑みを浮かべながら盾を捨てて、酒の瓶を持つラビ・ケンゴーが現れた。


「なんでいちいち俺についてくるんだこのストーカー気質のアル中め!」

「アル中? なんだそれ?」

「死ね! 出てけ! 俺に近づくな! ナレーターッッ! 相手変えろッ!」


 すると観客たちの席から少し上にいたナレーターがミツルの声を聞きつけたのか、すぐに返事をした。


「むりぃ!」


 観客たちがさらに熱狂すると、ナレーターも明るく、熱狂し始めた。


「おっとぉぉ?! 知り合いなのかなッ!? これは、”因縁の再会”! の予感ン!?!?」

「うっとうしい!」

「さぁ、試合開始まであと少しィッ! ラビ・ケンゴーは盾を捨て、そして酒をにもつぅッ!」

「乾杯!」

 酒瓶を上にあげて観客たちに見せびらかす。


「皆さん数えましょうッ! 3!」

 

 観客がまた熱くなる――

 声が響き渡り、そして全員で数え始める。


「2!」


 ある者たちは立ち上がって、かわいそうなミツルに木製の盾ではなく、鉄製の盾を戦場に投げはじめる。


「行けッ! 少年!」

 声たちの中から応援が聞こえてくる。


「1!」


 ついにラビが酒をまた口にやって、なくなったことを確認してから壁に投げ捨てて割った。

「ガキ、運命かもな。俺も稼ぎはコロシアムなんだ。でも、勝たせることはできない、初試合でもな」

「…大人のくせして……」


「試合―――」

「準備できてるか、ポロシャツのミツル」

「できてないけど、できてないからこそ観客が喜ぶ」

「開始ィィィィィィッ!!!!」


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