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伝説の本   作者: 西村系
キャピタルヨルグ(アダルマ)

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26/31

ド派手に参上ッ! ポロシャツのミツルッ!

「鉄の精神を持つ者こそがこの世で生き残ると思え! 鉄だけではない、氷に強い…お前が教えてくれた…なんだっけな」


「プラスチックってやつです」


「そうだ! ぷらすちっくのように、氷に強い精神も持たなければならないッ!」


「アツい! アツい男ですねトング先輩!」


 茶髪のセンターパートの青年と、角刈りの”アツい”男が町のパン屋でパンについての雑学を語っていた。

 茶髪の青年は長袖の青いポロシャツを着ていて、ズボンはバギージーンズだった。

 とても若い男性で、鼻は高くなく、目は一重で、唇も薄かった。

 その肌は、太陽にさらされているのかを疑うほど白く、彼自身も細かった。


 トングと呼ばれた男は袖元が濡れた白色のボロい作業服を着ている。

 ところどころ穴が開いていて、とても長い間使われた服なのだとわかる。

 太い眉をしていて、鼻はツンとしていた。

 人を見る目は、敬意と、同時に自身もあふれていた。


 二人がいたパン屋の中はパンの暖かい匂いであふれていて自然と呼吸が深くなるものだった。


「ミツル。俺たちがなぜここにいるのか、お前には理解できるか」

「もちろんです」

「そうだ、”精神”を”鍛える”ためだ。存分にパンの匂いをその鼻に刻み込んでおけ」


 トングという男はそう言ってパンたちを指さした。

 人間の店員がうるさいと注意をしようとしたが、危ない人たちだと思ったのか黙った。


「知ってました? トング先輩、僕が来たところだとパンをとるときは”トング”というものを使うんです」

「ほぉ! それは光栄だな! 俺の名前がそんなものに使われているなんてッ! ワハハハハハ!」

 トングは腰に手を当てて、全力で背中をストレッチするように後ろに頭を傾けた。


 するとのの残り一ミリで角刈りにされた頭がパンに当たるところだったが、彼はちょうどまた顔を上げた。

「よし、ミツル! パンを見てみろミツル」

「はい」

「パンが見えるかミツル」

「はい! パンパンです!」

「これまた、うまいな…パンだけにっつって?」


 トングは後輩のミツルをツンツンつつきながらそう言うと、次の瞬間に彼にビンタをした。


「ふざけているのかッ!?」

「精神を鍛えるためにパン屋に来るのもふざけてるだろうがッ!?」


 同時に二人がそれぞれの胸ぐらをつかんだ。


「行くならせいぜい滝だろうがッ!?」

 ミツルはそう言いながら先輩に顔を近づかせたが

「アダルマに滝なんてあったらとっくに水に溺れてるッ!」

 と、トングは言ってさらに顔を近づかせた。


「あの…喧嘩でしたら外で…」

「うっさいッ!」

 

 お互いの胸ぐらを放して適当なパンをつかみ、そして店員に投げつけた。

 パンが二つ飛んでくると店員は恐ろしくなってしゃがみ、見事な回避をした。


 視線から店員がいなくなると二人はまたお互いの胸ぐらをつかんだ。


「ふざけてんのかッ!?」

 今度はミツルが言う。


 すると、トングはミツルの胸ぐらを放し、そして彼の肩に手を置いた。


「なら修業ができるところに行こう。修行だミツルッ!」

「おぉん…修行な? もう叫ばないよな?」

「もちろんだ」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 二人はアダルマの高い建物たちを壁に、道路を散歩するような軽い足取りで”修行先”へ向かった。

「それで、君はなんだっけ」

 トングがミツルのことを指さした。


「山本ミツルです、かなーり遠くの場所から家出をしてしまって、生き残るために修行をと道路で腹筋をしていたら――」

「いやいや、それはわかるよ。丁度俺に見つかってよかったなぁ、あのまま夜になっていれば盗賊にやられる可能性だってあるのに」


「盗賊と言えば、見ました? 中心区で緊急警報が鳴ったらしくて立ち入り禁止になってるって」

「そういえばそうだな、ここ二日くらいはずっとそうだけど」

「なにが起きてるんでしょうかね」

「それより、もっとお前について話せよ、赤の他人をまた家に寝かすことはできねぇ」


 トングがそういうと、ミツルは少し考えるように頭を上に向けて、左上を見ながら

「んんんー」

 と声をだした。


「あぁ、セタガヤという…国…? から、来たんだ」

「……ハコシタ大陸らへんか? 言葉がものすごくそれっぽい」


「ハコシタ…? あぁ…そう、それです!」

「ハコシタか、じゃあ三国の戦争は終わったのか? 四国目が誕生する余裕もなさそうだが」

「も、ものすごく小さくて、見つかってないからです! そう!」


 彼らがそういうと、大量の機械人たちが木材を持って中心区への道を閉じるところをみた。

「そんなにヤバイのかな?」

「なにが起きてるのか、中の人にしかわからないが…ここまでやってるってことは死人も出てるんだろう。アリカポルの時みたいに、テロリストのアタックか、それか…しばらくここに住み着いてたって噂のマタナカだな」


「…どっちも正解だったら?」

 二人とも作業する機械人たちの真ん中で足を止めた。

 ミツルはトングを見ながら、そういうと、彼は信じないかのようにふざけて手で”あっちいけ”と言った。


「マタナカはブックハンターだ、伝説の本に興味のやつらを好んで狩るやつら、テロリストに何の用がある?」

「伝説の本?」

 ミツルは何も知らず、不思議な顔をしながらトングを見た。

「小さいころ聞かされなかったのか? ラズバノ大陸一の大伝説だ」

「なにもしらない」


 機械人たちが大きな壁を立てながら、トコトコと歩き、バトンのように手で渡しながら木材が上へ移動していく。


「伝説の本は昔の大勇者ヨハンヌが日記として書いた超分厚い本だ。なんにしても、魔物が出てきた理由とか、赤い月の正体、マライア信教の真実、それ以上にいろいろとこの世のすべてが書かれているらしい」

「マライア?」

「お前はオウムか? いちいち繰り返すのをやめろ」


「はぁ。マライア信教というのはぁ、古代神マライアを慕うために建てられた信教で、もうかれこれ3000年は続いてる。どの国にもマライア信教のベルがある」

「ベル…というと?」

「マライアは口のない神だったんだ。コミュニケーションをとるのにも巨大なベルを使い分けて話していたらしい。でも、ある時人間がそのベルを壊すとマライアは怒って、いなくなるんだ。同時に古代時代の終わりでもあり、大勇者ヨハンヌが魔王を倒したのと同時期でもある。だから、言い伝えはこうだが、真実はやみに葬られたままだ。ベルを毎日昼の3時に鳴らすのは、マライア神がいつも三時にベルを鳴らしていたらしいから」


「説明はもういいか? 親がマライア信教だったんだ、知ってる理由はそれだけ」

「あぁ、ありがとうございますトングさん」

「何でもない。とにかく修行場所を探そう」


 二人は右へ曲がって中心区を避け、酒場に行きついた。

 外側から見ると、そこは木製のボロボロの建物で歴史…? のあるものだとわかった。

 前にはガラスが貼られており、そこから中の酔っぱらいたちがよく見えた。

 その中にも青いロングコートを着た酔っぱらいが、テーブルの上にのって歌を歌っているのが見えた。


「何するんですかトングさん。僕まだ酒飲めるような年齢じゃないですよ」

「何歳だ」

「15です」

「この国だと酒はちょうど15からだ、ラッキーだな。でも、今回ここに来たのは酒のためじゃない」

「じゃあ?」

「喧嘩に決まってるだろうが。パンチ一発二発喰らってこその修行だ」

「え…」


 ミツルは恐怖で犬のように両腕をまげて、できるだけ酒場に近づかないように一歩、また一歩と後ずさったが、トングは彼をつかんでケツを蹴り、酒場に無理やり入れた。


 薄暗いながらも、蝋燭とクリスタルで照らされたゲロ臭い酒場のなかで、湿った木材に手をやったミツルを酔っぱらいたちは睨みこんだ。


「ア、ドウモ…」

「ガキか?」

 ロングコートの男は酒に滑ってテーブルから落ちて頭をぶつけ、テーブルを二つに割った。

 首元には銀のネックレスをしていて、胸元にはきらきらと輝く青いクリスタルがあった。


「あ、大丈夫デスカ…」

 ミツルの声をかき消すように酔っぱらいたちがロングコートの男に駆け寄り、彼を立ち上がらせた。


「ラビ!? 大丈夫かラビ!」

「うご…大丈夫だ。少し気が抜けたんだ」

 青いロングコートの男はそう言って立ち上がり、それからミツルの方をみた。


「色がかぶってるんだ。色が」

「あ、青色の…ポロシャツ」

「そう、ポロなんとか。それだよ」


「ラビ・ケンゴー以外に青を着る子供がいるだとッ!?」

 バーテンダーが後ろから現れた。


 ミツルは驚いて地面に手をついたままバーテンダーを見つめた。

「コ、コンニチハ…」

「こいつか?」

「そうだっぜ!」

「そいつかぁ!」



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