アダルマの土地
「本当は撃たれる覚悟のできる者など居ないのかも知れない。でもジュコ…撃つのであれば、お前も撃たれる可能性があるということを、しっておけ」
朝になるまで…いや、気絶したジュコが目覚めるまでショーンとカーラは待った。
「やっぱり、毒消しもきちんと飲まなきゃ! こうやって寝ることになるのよ」
カーラは縛られたまま横になっていた、ショーンは暗闇の中で焚火に薪を入れて、少し休憩した。
その隣には、ジュコも横になっていた。
「あのさぁ、解いてくれないかな? 背中がかゆいんだよね」
「嘘つけ糞魔女」
「えぇ、女性に糞とか駄目だよ?」
「今からでもジュコの腰から銃を抜いてお前の頭にぶち込めることを忘れるな。一切、一切調子に乗るんじゃないぞ」
「…わかったわよ」
彼女はしばらく黙った。
「彼は何なの?」
しかし長くは続かなかった。
「少し前に森で出会った友達だ」
「薄いじゃんじゃあ」
「?」
「薄っぺらい友情のくせして攻撃するときは”すまん”とかかっこつけてさ。あんたら全員中二病?」
「友情が深いから守るんじゃない。浅くても、まだ捨てられないから守る」
ショーンはそう言って、野原で見つけた蛇を串に刺した。
「あらマズそう」
カーラは一言だけ言って、ショーンが蛇を焚火にさらして焼くのをみた。
「私あんたらについていきたいんだよね」
「!?」
あまりに驚いたのか、ショーンは蛇を焚火に落としてしまった。
「面白い人たちだもの。脚の縄を解いてくれれば自分で歩くから、あんたはジュコをもって」
「なんでだ? ジュコは一人で歩ける」
「子供を連れて行きたいわけ? 彼が目覚めれば、必ず子供を連れ出そうとしてうるさくするわよ」
「それがなんだ。人を助けるのがそんなに好きなら好きにさせればいいじゃないか」
「本気? 旅の邪魔なうえに、子供はうるさいのよ」
「お前くらいじゃないがな」
そう返事をすると、カーラはまた黙った。
「子供はつれていかない、いや、連れていけないわよ。ジュコが寝てる間にさっさとアダルマに行って子供はもう養護施設に預けたとかいえば彼はきっと――」
「仲間に嘘はつかないッ!」
魔女にたいしても、彼は怒鳴った。
「死ぬわよ」
「殺してみろ」
「…わかったわ。もう喧嘩はいいの」
「やっと賛成してくれたか」
「賛成するなんて一言も言ってないわ」
「ならなぜ”わかったわ”とかいうんだ」
ショーンは彼女の声真似をしていった。
「ただのしゃべり方よ、あんたバカなの?」
「馬鹿だったらとっくに死んでる。奴隷のくだりでそれに気が付かなかったのか?」
「どうでもいいのよ奴隷も子供も、私は私の目的があるから仲間を引き連れたいだけなの」
「何がしたいんだって?」
「私はこの手でローリオンを殺すの」
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「賞金首が増えたんだってな?」
冷たい一つの塔の中でローリオンは木製のテーブルと、その上に大量の料理を前に座っていた。
手には手配書をもち、顔の前まであげていた。
彼の前に立つ騎士たちは右側の腰に両手を置いて、剣を抜くしぐさをする。
「ローリオン・ファン・デスコに永遠の命をッ!」
三人が同時にそう叫んだ。
「二人で一人かぁ、面白いんじゃないのか?」
「えぇ、ローリオン様…それが、こちら、アリカポルに侵入を試みた上に、正面の壁を破壊したテロリストたちです。一人はマルザ生まれの――」
「マルザ?」
ローリオンは紙を顔の前から降ろして、騎士をギロっとにらみこんだ。
それからやけに長いもみあげを撫でてからまた
「はぁ? ハハハ! マルザ生まれの犯罪者なんて聞いたことがないぞ。私に嘘をつくのであればもっといいものを用意するんだな」
「えぇ…しかし、この手配書は本物です」
「…」
ローリオンはまた手配書とにらめっこをした。
二人で一人、、デッド・オア・アライブ。
そこには黒いインクで塗りたくられた髪をしたフードを被る男の絵と、全くインクが使われていない髪をした若い男性の絵があった。
「こいつ、白髪か?」
「そうらしいです…」
ローリオンの手は一瞬、震えると
彼はもう片手でその震える手を止めた。
「ハハハ、ハハハハハハハハハァァァッ! 面白い! 本当に面白い! 私と同じ本性を持ったマルザ人かぁ? 平和ボケしたやつらとは全く違う、いい戦いができそうだ。最後に見かけられたのは?」
「はいッ! えぇ、警備によると壁が消された一件からは全く姿を現していないとのことです!」
「よくもそんなに元気に言えるなァ?」
ローリオンは手配書を優しくテーブルに置き、騎士を見た。
「え、あぁ、いいえ、あぁ…」
「今回はいい。とにかくもう出よう、アリカポルに用はない。シャルザならゴールドと話ができる。少しは退屈しのぎになるかもな」
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ショーンは最終的に、カーラの言う通りにした。
彼女のやり方はジュコを裏切る形だったが、確かに正論だった。
ジュコは心奥底あの奴隷たちに対してイラついていた、そんなの放っておくわけには、ショーンはいかなかった。
だから、カーラの脚の縄を解き、腕の縄を残して、自分とつないだ。
これで逃げられないようにし、それからジュコを担いだ。
まるでベビーシッターだ…
「ねぇ! ショーン!」
「なんだ」
そろそろ太陽が昇るころで、森の中は薄暗かった。
鳥の声もまだ聞こえない眠る森に、カーラの声と、二人の足音だけが響いた。
「私たちまだ”知り合い”程度じゃん、ちょっとあんたのこと教えてよーもう、じれったいんだから」
「俺は、語りには向いてない」
「何、でっかい怪物と戦って仲間を失って、それで森の中でジュコさんと出会ったとか?」
「”ジュコ”さんだと? お前にはラズバノさんだ。あいつに敬語を使え、俺たちよりもずっと強い」
ショーンはそう言って草を踏みつぶし、前に進んだ。
「強い? あんなガキが? 到底見えないわね」
「図書館育ちの坊ちゃんさ。本の知識だけは存分にあるみたいで、でもあいつの体は全く慣れていない」
「どういう意味?」
「だから、あいつは戦う知識も、銃を撃つ知識も、何かを作る知識も魔法も全部本で読んできた。頭の中にほぼすべてのものが詰め込まれてる。なのに、どれも実践したことがないから知識どまりなのさ」
「あんたはジュコの何なの。なんでそんなに敬意を表すの、彼は特別でもなければ、強くもない、弱肉強食の世界で撃たれて、死ぬだけの子供よ」
カーラはショーンの背中を睨みこむ、彼はただ縄を引っ張って、彼女を前に出した。
「俺には仲間がいない、誰かと旅がしたかった。ただそれだけさ。それに目的もないから、ジュコについていって、あいつを助けているだけだ」
静かにそういうと、太陽が昇り始め、森に光が少しずつ入り込み、小鳥たちは歌い始める。
「魔女になる前は看護師だったの。ジュコの手、ナイフで刺されたところ。ハーブが何個かあれば治せるわよ」
「ありがとう。とにかくアダルマで宿を見つけたら最初にすることはそれだな」
しばらく歩いていると、カーラはまた口を開いた。
「静かにしてくれないか。お前がうるさいとつけられているのかすらわからないんだ」
「いや、ジュコは知識はあるのに何もできないんでしょ、魔法の知識もあるなら私、移動魔法が使えるからそれを教えてやってもいいわよ。それにハーブの調合も。最終的にローリオンを殺すなら私も旅についてくんだから、何かできないと困るでしょ」
「ローリオンを殺す? そんなのどこから出したんだ。俺たちは伝説の本を探してる」
「おぉ! それなら運命ね。ローリオンと出会う運命よ、あいつもブックハンターしてるから。ただ”正規”のブックハンターなんだよ」
「…」
「いずれぶつかり合うわよ。真実の本を探してる時点でもう決まってる」
ショーンはそのまま黙ったが、カーラはしゃべり続けた。
「それと、ジュコ。絶対子供を置いてったことに対して怒るから、養護施設に預けたって言ってね、ちゃんと」
「…それはもう決まってたはずだ。俺は何も言わない、嘘はつかない。それはお前に任せる」
「……んもう」
「じゃあ! ジュコがたった今目覚めたらどうなのよ! アダルマについてないのに」
「そうしたまた寝てもらうだけだ」
「あらコワイ男」
すると、彼らは巨大は木材の壁にぶつかった。
森を抜けて、壁を見ると、確かにアダルマの入り口だとわかった。
「すべての国は壁で覆われてるのね。私はピチューノとシャルザ、アリアドンテ以外行ったことがなかったから」
「まぁ、理由は主に魔物と飢えた野盗たちと、それと奴隷商人。怖いことを言えば人喰い族も恐れてだな」
「人喰い族…聞いたことあるわね」
二人はそのまま壁の近くまで駆け寄り、カーラは門の上で警備をする兵たちに声を上げた。
「こんにちは~!」
「こんにちは」
上から優しいような返事が聞こえた。
「怪我してるのか? そいつはなぜ縄に?」
兵士が一人、ジュコとカーラに突っ込んだ。
「彼女はこういうのが好きなんだ。担がれている仲間は、途中で盗賊にナイフで刺されて気を失ってる」
ショーンは声を上げて、門番たちに言った。
「…ポーションのせいなんだけどね…」
カーラがつぶやいた。
「まず入国審査のために今兵士が降りますので、少々お待ちください。最近の世の中はやはり危ないのでね」
「もちろんです」
カーラは清く返事をした。
するとすぐに巨大門の扉の片方が機械によって動かされ、すぐに開いた。
中からは緑の兵士服をした機械人が現れ、挨拶をした。
「最近はアダルマも機械人が増えているのですね」
カーラはよく機械人の男をみて言った。
「アリアドンテから船で逃げ込むものが多くなったのでね」
機械的な声でそう返事をされた。
男は全身がスケルトンのような鉄の機械で、痩せたように見える。
動くごとに、関節を動かすごとに機械音が鳴り響きそして強く地面を踏みしめる。
腰にはヘイピット産の量産型鉄の剣があった。
機械人は近づくごとに手を、腰回りに置き、ショーンの顔をよく見た。
頭を右に揺らし、怪しがっていた。
すると、カーラは前に出て機械人の視界を中断させた。
「こんにちは!」
「…こんにちは」
ショーンはローブの中に短剣を隠していた。
しかし同時に、ジュコを地面に置き、彼のリュックを探ってパヤを取り出した。
彼の思っていたことは、こうだった。
もし、賞金首だとバレたら最初にあの機械人がすることは剣を抜き、カーラの頭を真っ二つに割ることだ。
でも、機械人の多くは金に弱い。それは部品の交換が高額であるからだ。
あの機械人は見ていると、首回りの鉄と、コードが腐っている。
動かしはできるが、ショートが起きて、いつでも頭が回らなくなる可能性がある。
「ジュコ…右手を借りるぞ」
ショーンはそう囁いてジュコの右手をとり、パヤを握らせた。
「あのぉ、私たちはただの観光客で、やっぱりッ! キャピタルのすばらしさについて? 学びたいというか? 物すっごく古臭くて、めちゃくちゃきれいだって聞いたんでね! あの、歴史に残された建物の数々! 太陽に照らされる壊された古機械たち! 美しいと思いませんか!? あぁ、ちなみにカーラですよろしく」
機械人の手を取って強く握ったが、それは冷たい鉄に過ぎなかった。
すると、ショーンはカーラとつなぐ縄を切って、前に出てから機械人に近づき、複製させた大量のパヤ…を袋に入れたものを機械人に手渡した。
「お前たちは…!?」
「アダルマは俺たちについて黙る。一日、ここにいるごとに12万パヤを渡す、このパヤはただの入国金だ。案内してくれれば後でまた金をやる」
ショーンは機械人にそういうと、男が金を握りしめ、内側の胸ポケットに金を入れてから門への道を開けた。
「ほかの兵士たちにも、話を通す。渡された金は私たちで割るので、個々に渡す必要はない」




