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変わりゆく心と身体

作者: 童帝

第一章:突然の変化

二年前、俺は山下徹という名前で、普通の高校一年生の男子だった。野球部に所属し、毎日夕方7時頃までグラウンドで汗を流していた。あの日、2013年5月の夕暮れ、いつも通りの下校途中だった。部活で疲れた体を引きずりながら、近道のために人気のない路地に入った瞬間、背後に気配を感じた。振り返る間もなく、頭に鋭い衝撃が走り、意識が遠のいた。

目が覚めた時、俺は見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。頭がズキズキと痛み、体が妙に軽い。鏡を見た瞬間、俺は凍りついた。そこに映っていたのは、長い黒髪と茶色の瞳を持つ、見知らぬ少女だった。俺の体は、完全に女のものに変わっていた。

混乱の中、病院に運ばれ、警察にも事情を話したが、襲撃者の正体は分からなかった。俺を殴った何者かは、今もなお謎のままだ。

第二章:新しい自分と葛藤

女体化した俺は、両親や学校と相談し、新しい名前で生きることになった。山下徹美やました てつみとして、高校生活を続けることにした。だが、体が変わったことで、俺の生活は一変した。野球部での活動は、体力の低下で続けられなくなり、泣く泣く退部。高校三年生になった今は、帰宅部として静かな日々を送っている。

しかし、心の変化はそれ以上に俺を悩ませた。女体化する前からの友人、園田翔そのだ しょうが、俺の変化に戸惑いながらも、誰よりも寄り添ってくれた。女体化した直後の俺は、周囲の視線や自分の体の変化に耐えきれず、何度も泣いた。そんな時、翔はいつもそばにいてくれた。「徹美、俺には関係ない。お前はお前だ」と、彼は静かに、だが力強く言ってくれた。

その優しさに触れるうち、俺は気づいてしまった。俺は翔に恋をしている。元は男だった俺が、男である翔を好きになるなんて――その事実に、俺は深いジレンマと恥ずかしさを感じていた。

第三章:桜の下での告白

2025年5月20日、午後7時42分。俺は翔と一緒に、桜並木のベンチに座っていた。春の桜はすでに散り、新緑が美しい季節だ。俺は制服のセーラー服に身を包み、長い黒髪をセーラーラインのリボンで結んでいる。18歳になった今、俺は外見上、完全に女の子として生活している。

「なぁ、徹美」翔が口を開いた。「最近、なんか元気ないけど、大丈夫か?」

その言葉に、俺の心臓がドキリと跳ねた。翔はいつも俺の変化に気づいてくれる。俺は目を伏せ、ぎゅっと拳を握った。「…実は、話したいことがあるんだ」

翔が少し驚いた顔で俺を見た。「なんだ? なんでも話してくれ」

俺は深呼吸して、勇気を振り絞った。「俺…いや、私、翔のことが好きなんだ。でも、私、元は男だったから…こんな気持ち、持っちゃいけないんじゃないかって…」

言葉を紡ぐたびに、顔が熱くなる。恥ずかしさと恐怖で、涙がにじんだ。だが、翔は静かに俺の手を握った。

「徹美、俺もだよ」彼の声は穏やかだった。「お前が女体化してからも、ずっとそばにいたのは、俺がお前を好きだからだ。男だった過去も、今の徹美も、全部好きだよ」

その言葉に、俺の心は温かさに包まれた。恥ずかしさはまだ消えないけれど、翔の気持ちを知った瞬間、初めて自分を少しだけ受け入れられた気がした。

第四章:未来への一歩

翔と付き合い始めた俺は、少しずつ自分を受け入れることを学んでいった。襲撃者の正体は依然として分からないけれど、今はそれよりも大切なものがある。翔と過ごす日々の中で、俺は新しい自分を生きていく決意を固めた。

過去の俺と今の俺。どちらも俺自身だ。恋する心も、変わりゆく体も、全部ひっくるめて、これからの人生を歩いていこう――そう、桜の木の下で、俺は静かに誓った。


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