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63 この想いに名前を付けるなら 3

「…………本当に、いいのか?」

「はい。」

「もう二度と逃してやれないぞ?」

「はい。」


 不安がない訳じゃない。それでも、メロウ様を失う方がもっと怖いから。

 

「また、暴走するかもしれない。」

「その時は……、目が覚めるまで頬をつねりますっ!」


 この一年、シャルから簡単な護身術を習った。ナナフシさん直伝の夫婦ケンカのコツも身に付けた、はず……。


「…………それは、怖いな。」

「両頬いきますからね。だから……、」


 大丈夫。だって私たちの周りには助けてくれる人達が沢山いるから。


「だから、早く帰りましょう。穢れなんかに負けないで下さい。」


 この想いが真っ直ぐに貴方に伝わりますように。そう願いを込めて額にキスをした。すると、なにかが割れて粉々に砕け落ちたように感じた。


(今なら……、出来るかもしれない。)


 握りしめていた手に祈りを込める。


「見ていて下さい。私ね、ちゃんと魔力操作出来るようになったんですよ?」


 貴方から教わった時は、擬音語だらけで全然意味が分からなかったけど。シャルやナナフシさんに分かりやすく教えてもらったの。


「メロウ様を包むように。いいえ、この浮き島全部を覆うように。」


(穢れは、全部消えて……ッ!!)


 シシアの手から発せられた黄金の光は勢いを増し、メロウ様と浮き島全土を包み込んだ。


 黒く淀んだ空気は白く。

 枯れた花は上を向き、光を反射する様に咲き誇った。そうして黄金の輝きは風船の様にパンッと弾けた。


「メロウ様、どうですか?」

「…………。」

 

 返事の代わりにスルスルと落ちる包帯。

 肌は陶器のように美しく穢れは何処にも見当たらない。


「シシア!!」

「キャッ」


 腕を引っ張られ気づいた時にはメロウ様の腕の中にいた。久しぶりの感覚。懐かしくってまた涙が出そうになった。


 今度はちゃんと熱を感じる。メロウ様の香りもする。もっとちゃんと確かめるように私も腕を背中に回すと、少し痩せたように思った。


「私は二人で沢山お喋りがしたいです。」

「ああ、そうだな。」


 私の事をもっと知って欲しい。

 貴方の事も教えて欲しい。


「私の話をちゃんと聞いて欲しいです。」

「分かった。」


 私達は多分、急ぎ過ぎていたんだと思うの。だから、ゆっくりと時間を掛けていきましょう。


「時々でいいからデートもしたいです。」

「二人で色んな場所に行こう。約束する。」


 私達は空いた隙間を塞ぐように話をした。と言っても、私が一方的に話して、メロウ様が相槌を打ったり笑ったりしていたのだけど。


「私、浄化師としても働きたいです。」

「初めの客は俺にしてくれ。」


 それでも楽しかった。

 彼の声と温かい腕がとても心地良くて。


「不安になる日があると思います。」

「そんな日はギュッと抱きしめて一日を過ごそう。」


 ずっとこのままで居たいと思うほどだった。

 外からはウルバやシャル、クレハ様の声が聞こえる。みんな無事で良かったと思う反面、この穏やかな時間の終わってしまうのが少し寂しい。


「シシア。」

「触れてもいいか?」

「ふふ、今更ですね。」


 腕から解放され、見つめ合う瞳は熱い。


「…………ダメ、か?」

「いいに決まってます。」


 手は頬に触れ涙跡を拭き取り、最後に髪を一房掬うと優しくキスをした。


「ありがとう。こんな俺を好きになってくれて。」


 久しぶりに見る満面の笑みに心が鳴る。

 改めてそんな事を言われると照れてしまう。思わず視線を逸らすと「こっちを見て?」と顎を持ち上げられて、そのまま惹かれ合うように自然と唇が重なった。


「んっ……。」


 小鳥が啄むような軽く優しいキスを何度か。それから互いの気持ちを確かめ合うようにどんどん深く絡み合う。


「シシア、愛している。」


 何度も耳元で囁くように繰り返される愛情に酔いしれながら、瞳を閉じてメロウ様を感じた。


「愛しているんだ。」

「私も、です。」


 唇が離れると動物の求愛行動みたく鼻を擦り付けあった。久しぶりの感覚になんだか二人して照れ臭くなってしまって、誤魔化すように笑ったのを覚えている。


「幸せにすると誓う。」


 助けに来た皆が離宮の扉を開けた音が響く中、メロウ様は真剣にこちらを見つめ、深呼吸を一つ。


「シシア、最愛の儀をさせてくれないか?」


ここまでご覧いただきありがとうございます(*´꒳`*)

底辺作家脱却を目指してます!!

ブクマや☆から評価いただけると執筆意欲に大きく直結します。どうか応援よろしくお願いしますっ!


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