03 穢れと浄化
「大丈夫ですか?」
「どうか、鞭打ちだけはご勘弁下さいませっ!」
ベッドから立ち上がりタオルを探そうとして脚が止まった。
「「え?」」
そして二人して顔を見合わせる。
お互いが驚いた顔をしていた。
(シシアってこんな少女に鞭打ちなんて酷いことをしていたの!?)
目の前の少女は恐怖と困惑で青ざめている。
「コホン。まずは身体を拭きましょう。」
床に桶と一緒に持って来たタオルが濡れずに落ちていた。シシアはそれを拾うと土下座姿で固まっている少女の前で膝を付き、目線を合わせて手渡した。
「あ、ありがとう、ございます……。」
「どこか怪我をしてませんか?」
「ぅえっ!? ……はぃ。だ、いじょう、です。」
驚きと少しの間を空けてから琥珀色の瞳と髪、そばかすが愛らしい少女は機械のように身体を確認して頷いた。
シシアがタオルを手渡すなんてっと思っていそうな顔だ。小説を読んでいた私も同じ状況に陥ったら全く一緒の表情を浮かべるだろう。
でも今のシシアは私だ。好き勝手にさせてもらうわ。というか、こんな小さな子を水を被ったまま放置するなんて出来ないっ!
「そう。良かった。」
この子がシシアに常習的に鞭打ちされているのか不安になって見えている身体の部分を凝視したが、そういった痕は見当たらない。
「本当に良かった。」
「…………うわぁっ。とっても、きれい……」
少女は顔を赤く染めて言葉を漏らした。
「え?」
「うひぁっ! もも、申し訳ございません!!」
またも土下座しようとする少女を必死に止める。
そんなに怖がらなくてもいいじゃない。
泣きたいのはこっちなのに!
「本当に大丈夫ですから……って、これは?」
スカートが乱れ隙間から見えた太ももの異物があった。
少女の白い肌に似合わない錆のようなもの。拳ほどの大きさで瘡蓋みたいに張り付いているようだった。
「…………穢れ、ね。」
初めて見た穢れは想像していた以上に生々しく感じた。小説の挿し絵では黒く塗り潰されただけの表現だった。
いざ目の当たりにすると本当に現実に起きている事なんだと思い知らされる。
「触っても良いですか?」
少女の許可を得て穢れに触れると、硬く少し凹凸していてとても肌とは思えなかった。
「痛くはありませんか?」
「……痛くは、ないです。どちらかと言うとそこだけ感覚がないような、感じです。」
なるほど。
だから小説では動かしずらいという表現になっていたのか。
(ヒロインのシャルはどうやって浄化していたっけ?)
シャル程ではないにしてもシシアも腕の良い浄化師という設定だった。なら、私でも浄化出来るんじゃないかしら?
(えーっと、シャルは患者の手を握って治るように祈っていた、はず……。)
徐に少女の手を握り、挿し絵にあったヒロインであるシャルの真似をしてみた。
(お願い、消えて……っ!)
すると、手から光が灯り一瞬にして少女の太ももにあった穢れが消し炭になって消えた。
「出来た……」
小説でシシアが浄化していたシーンは描かれていなかった。実は本当に浄化出来るのか不安だったのだ。
でもさすがシシア。
簡単に出来ちゃった!
「消えてる……、凄いっ、凄いです。シシア様っ!」
少女は初めて笑顔になった。
今ならちゃんと話が出来るかも知れない。
「あの、貴方のお名前を教えてくれませんか?」
今度こそ無害な笑顔で優しく、優しく……。
「あ、私はナリと言います。」
良かった!
ちゃんと会話出来そう。
「ナリさん、私と少しお話する時間を頂けませんか?」
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