38 シャルと追手の攻防戦 3
「ーーーーっ!!!?!!?」
目の前がチカチカして、声にならない悲鳴が上がる。脳を直接揺らされるような強い衝撃に身体全体が跳ね上がった。
「これでもう逃げられないだろ?」
「あぁ……、ハァ、………………ハァッ!」
痛みで押し出されて涙をリュフェスが自身の長い舌で舐めとった。
「俺ぁ、言ったぜ。抵抗したら死なない程度に痛めつけるって、忠告したろ。聞かなかったお前が悪い。だろ?」
罪悪感なんてカケラもない。
この瞬間も彼は楽しんでいる。
リュフェスは獣王国でも凶暴な狼族。血を好み、快感の赴くままに、残忍な手段を取っても欲しいものを手に入れる。シシア以上に凶悪で狂ったキャラクター。
「ハァ、ハァー……、いっ………あぁっ……」
「その顔はいいなぁー。興奮する。」
爛々と夜目の効く瞳を輝かせ、覗き見るリュフェス。
対して私は血が流れすぎて身体から力が抜けていくのを感じた。もう、目の前のリュフェスから逃げる事は叶わないと言う事実に涙が止まらなくなっていた。
「もっと泣けば最高になるのか?」
「あ゙ぁ゙……!!!!」
リュフェスは小さな蟻を踏み潰すみたいになんの迷いもなく、私の脚に刺さっていた短剣を抜いた。血が更に激流となって流れ出す。
「痛い、足が…………」
「そうかそうか。」
リュフェス終始笑ったまま私の頭を撫でる。その笑顔に狂気を超えた恐ろしさを感じて仕方がない。
「じゃ、治してやるよ。」
そう言うと、リュフェスは私の血が流れる足を持ち上げた。
「な、なに、するの!?」
「なにって、痛いんだろ? 舐めてやる。」
「や、やだっ!!」
泥だらけのドレスの裾がどんどん上に捲り上がっていく。必死に阻止しようと身体をくねらすが、身体全土に痛みが響くだけ。リュフェスもそんな事はお構いなしに自身の舌を出してこちらに見せつけてくる。
「獣人が舐めたところは回復が早まるんだぜ。忘れたのか?」
精霊が魔法を使えるように、獣人にも幾つかの特殊な能力がある。その一つが唾液による治癒力。動物が毛繕いするように舐めるとその人が持つ回復力が上がるらしい。
「昔はお前が転ぶ度によく舐めてやったろ。」
そんなシシアの昔話、知るわけないでしょ。
私はシシアじゃないんだもん。
「そんなの、望んでない。離してっ!」
抵抗虚しく更に持ち上げられた足のお陰で、身体は完全に地面に仰向けに寝かされ、リュフェスを見上げ形になった。
「ただ……、お前はこれが嫌いだったよなぁ?」
「お願い、本当にやめて……」
「回復は早まるが怪我した時の倍以上の激痛が走るからなぁー。」
リュフェスの言ったとおり、魔法と違い獣人族の能力には代償が伴う。それを知ってるからこそ、震えが止まらない。短剣を抜かれただけで想像を絶する痛みだった。
この痛みの倍って、考えただけで意識が飛びそうだ。
「お願いだから、やめて…………」
「アヒャ、かーぁいー。でも残念、やめない。」
懇願虚しく、リュフェスの舌が、足に触れた。
「い゙や゙ぁ゙ぁ゙ーーーっ!!」
あまりの激痛に視界が揺れ、悶絶した。リュフェスはそんな私を見るたびに笑い声を上げ、何度も何度も執着的に血を舐め取り傷口に舌を這わせた。
「も、やぁ……、め、」
リュフェスの牙が赤く染まり、揺らめく瞳が弧を描く。
「やっぱり、お前の血は美味いな。昔より一層上手くなってんじゃねぇか。」
リュフェスの舌が足首に触れる度、意識が飛びかけると激痛で脳を直接叩かれたように起こされた。
足首から流れた出た血と共にリュフェスの唾液が混じり、勢いを増して太ももまで駆けていくのを、私は大粒の涙を流しながら見ているしか許されない。
「あぁ……、ハァ、ハァッ…………」
「こりゃ美味すぎてとまんねぇっ!!」
(もう、ダメだ。メロウ様…………。)
狂気の笑い声が響く中、繰り返される激痛に耐えられる筈もなく、リュフェスの唇と頬が恍惚に赤らみ笑う姿を最後に意識を手放した。
「んし、シシア確保っと……。」
気を失ったシシアはリュフェスによって簡単に抱き上げられた。そして、
「さぁ、お前達。我が国へ帰るぞ。」
黒いフードを被った獣人達は闇夜を掴み、消えて行った……。
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