34 嫉妬の和平パーティー
和平パーティーの会場は人間国の王城。
私にとっては初めての人間国だ。不安がないとは言わないけど、隣にはメロウ様がいてくれるし、今日はシャルとの出会いのシーンもある。
(頑張らないとっ!)
両手にギュッと力を込め、気合い入れた。
「シシア、準備はいいか?」
「はい。もちろんです!」
メロウ様にエスコートされ、会場に足を踏み入れた。
拍手と共に集まる視線の中を歩く。
踏み入れた会場はまさに豪華絢爛。煌びやかな装飾と貴族令嬢達の鮮やかなドレスが場を彩る。
その中でも一際目立っていたのは言わずもがな、メロウ様だ。そりゃあメロウ様は美しいもの。現実身を帯びない佇まいは、令嬢だけでなく紳士達すら顔を赤め魅入っていた。
「皆がシシアを見ているな。」
「違いますよ。皆はメロウ様を見ているんです。」
「…………なぜだ?」
メロウ様はきょとんと不思議そう。
こんなに美しいのですから当然でしょ。
まさか、メロウ様って自分の美貌に気づいていないのかしら。
「ふふ。」
「なにがおかしい?」
「いいえ。メロウ様にも鈍感な部分があるなんて、知りませんでした。」
パーティーは終始和やかな雰囲気で行われた。
叩き込んだ貴族リストのおかげで挨拶回りもバッチリ。ダンスもメロウ様とだけ踊り凌いだ。元々体力がなかったシシアの身体は熱が出て寝込んだりしていたせいか、一曲踊るので精一杯だった。
まあ、シシアは人間国でも悪名高い存在だったから誰も話しかけてこないが本当のところなんだけど。
今日はその悪名に救われた。シシアの交友関係なんて全く知らないので、話しかけられても困ってしまう。それに……、
「メロウ様、私はここで休んでおりますから構わず踊って来てください。」
「シシア以外の女と踊る必要はないし、俺は白昼堂々と浮気する男ではない。」
「う、浮気!?」
メロウ様が一歩も私の側から離れてくれないっ!
令嬢達が踊りを誘いたそうにウズウズしているのに我関せずでずっと私の腰を抱き寄せくる。
おまけに見せつけるような音を立てながら手や頬、額に何度もキスを落とされ、私の心は大荒れだ。
「浮気だ。シシアはしないよな……?」
「えっ!?」
「浮気、しないよ、な……?」
「もちろんです。」
居た堪れなくなって助け舟を出したらこの言い草だ。
パーティーは色んな方と踊るものなのでは?
それを浮気だなんて、大袈裟だ。
「異性の手を握り腰を抱き、語らうなんて歴とした浮気だからな。」
私の心を読んだみたいな返答に肩がピクリと跳ねた。
メロウ様の愛はかなり重いのを失念していた。どうやら私は彼の地雷を踏み抜いたらしい。
「それともシシアには浮気をしたい相手がいるのか?」
突然鋭くなる視線に戸惑う。
「……どいつだ?」
メロウ様の見つめる先には複数人の貴族男性がいた。こちらが気になるのかチラチラと見つめる男性も何人かいる。
「あいつか?」
そう言うと、一人の男性に向かって手を翳した。次の瞬間、視線の先にいた男性のタキシードの裾に火が付き、女性の悲鳴が上がった。
「メ、メロウ様っ!?」
「違ったのか? じゃああっちの奴か。」
更に違う男性に手を翳そうとするメロウ様。
火の付いた男性の辺りは騒ぎになっている。
(どうしちゃったの!?)
早く止めないとっ!
「おやめ下さい。」
咄嗟にメロウ様の腕に抱き付き魔法を使うのを阻止したけれど、彼からの視線は更に悪化した。
「……そんなにあの男を守りたかったのか?」
「そうじゃありません。ここは和平パーティー会場ですよ。こんなところで魔法なんて使ったら二国間にヒビが入ってしまいますっ!」
散々私に言った言葉じゃない。意味の分からない理由でそれを反故にするなんて、絶対にダメ。
「…………それだけ、か?」
「え?」
抱き付いていた腕がようやく下がりホッとしたのも束の間。メロウ様の腕の中にすっぽり収められてしまった。
「メ、メロウ様っ!? 皆んなが見てる!」
「見せてやれば良い。精霊の愛が深い事は誰もが知る事実。誰も気にしない。それにお前は俺の妻だろ?」
「そ、そうですが、ここでは……」
本当に、一体どうしちゃったの!?
こんな所で精霊国さながらの演技しなくたっていいでしょぅ。
周りの視線は全て私達二人に向けられている。タキシードが燃えた不運の男性なんて水を頭からぶっかけられて放置状態だ。
「…………妬けた。」
「あの男性の事ですか? 可哀想なぐらい燃えてましたよ。」
「違う。シシアがあまりに美しいから皆がお前を見ていて、嫉妬した。」
この集まる視線がまさかシシアに向けられたものだと本気で思っていたの?
そんな訳ないでしょうに。子犬のようにしゅんとする姿になぜか笑えてきた。
「えっ!? あはははっ!!」
「なにがおかしい……。」
「皆が見つめているのはメロウ様です。私じゃありません。私はこの国でも悪女として名が通っているんですよ?」
睨ませる事はあれど、こんな見惚れるぐらいの視線を集められる筈がないでしょ、と続けるとメロウ様は「はぁー。」と盛大なため息を吐き、腕から解放してくれた。
「お前も俺に見惚れているか?」
「ええ、もちろん。この会場で一番美しいのは間違いなくメロウ様です。」
紛れもない真実だ。
これほど美しい方は小説の世界であろうと彼しかいない。
「では、周りの男に色目を使わないと約束してくれ。」
「そんな事、言われなくてもしませんから。」
元々、私は恋愛なんてした事がない。言われなくても色目の使い方も分からないのだけど。
「精霊国の信用を貶めるような事は決してしないと誓います。」
お飾りの王妃の役目ぐらいちゃんと果たせます、と意気込んで宣言したのだけど、返ってきたのはさっきよりも大きなため息が一つだけだった。
ここまでご覧いただきありがとうございます(*´꒳`*)
底辺作家脱却を目指してます!!
ブクマや☆から評価いただけると執筆意欲に大きく直結します。どうか応援よろしくお願いしますっ!




