31 嵐の前の甘い時間 2
話はメロウ様から契約破棄をしようと言われたところまで遡る……。
モナルダ病棟から自室に戻ったシシアとメロウはお茶をしながらもう少し話をする事になった。
「さっきの契約破棄の話だが、あと三ヶ月は耐えてくれ。こればっかりは俺にもどうにも出来ない。」
互いの魔力を込めた契約の更新は半年に一度だけ。
ナリから聞いた話通りだ。
メロウ様と契約結婚したのが三ヶ月前なので残り三ヶ月。こればかりは「分かりました」と頷く。
「それから、契約破棄までの三ヶ月は契約を満了させて欲しい。」
「もちろん………」
(…………ん? それはどう言った事?)
契約内容は結婚すること、浄化を試みること。
この二つに関しては喜んで頷く。だけど、
「それは、私を精霊にすると言う事でしょうか?」
「ああ。そうだ。」
一瞬、思考が停止した。
「嫌なのは分かった。だが、俺も穢れが進むのは食い止めたい。シシアは明日からモナルダ病棟の浄化をするのだろう。だったら余計に俺に力を使うのは避けたほうがいい。」
確かに、そうだけど。
また、あの、行為をする、の……?
無理無理無理っ!!
思い出しただけで恥ずかしくって死にそうよ!
「そこで、二択だ。選んでくれ。」
「二択ですか?」
メロウが指を2本立てた。
「一週間に一度、俺に抱かれる。毎日俺とキスをする。」
「んなっ!!!?!!?」
「どちらか選んでくれ。」
なんという二択なんだ。
どっちも嫌なんですけど!!
「どっちを取っても三ヶ月程度じゃ精霊にはなれない。まあ、キスの方が身体への負担も少ないからおすすめだな。」
そ、そういう問題ではなくて……。
元々はシシアが望んでいた契約だから二択を拒否するのはやめて欲しいと先手を打たれ、なにも言えなくなった。
(だったら第三の選択肢を増やせばいいのよっ!)
「もっと選択肢はないのですか?」
「例えば?」
「一か月に一度、…………キスとか」
「無理だな。」
即答っ!?
なんで!!
「シシアは俺の穢れが進むのを望むのか?」
それなら仕方がない、と項垂れるメロウ様。
クレハ様に怒られたダメージが相当大きいのか、今日はやけに庇護欲をかき立てられる。泣きそうな大きな子供を目の前にしている気分で仕方がない。
「そんな訳ありません。」
「だったらどちらか選んでくれ。」
「うぅっ……。」
どんどん自分の首が締まっていく。
グッと近づいて距離を詰めるメロウ様は早く決めろと言わんばかり。
(ど、どうしよう……。)
そもそも、精霊になるには精霊の体液と魔力を同時に体に取り込む必要があるわけで、
「あれ、キスしても意味ないのでは?」
「俺の唾液を飲むんだよ。」
「――――っっ!!」
そんな堂々と、なんで真顔でいられるのよっ!
「だったらその、コップに唾液を出してもらって、」
「…………正気か?」
額に眉を寄せて不気味なものを見たように驚くメロウ様。自分でも正気ではないと思います……。
「それは、却下だ。」
「はぃ……。」
「この二択が最大の譲歩なんだ。理解してくれ。」
そこまで言われて締まっては私の選べる選択肢なんて一つしかないわけで、
「…………じゃあ、キス、で。」
「では明日から始めよう。今日はもう遅いからな。ゆっくり休めよ。」
満足そうに笑ったメロウ様が私の額にキスを落とし「予行練習だ」と言って部屋を出て行った。
呆気に取られなにが起こったのか理解出来なかったけど、時間が経つにつれて全身の体温がじわじわと上昇していき、
「ヴギャァァアーーーーっ!!!」
誰もいなくなった部屋でベッドにダイブ。枕に顔を埋めて悶えながら叫んだ。
翌日。
正気を取り戻した頃、よく考えたら小説の中のシシアは一度もメロウ様を浄化していなかったことに気づく。メロウに最愛の儀を迫っていたからだ。
だからメロウ様は黒穢になるギリギリまで耐えて一人で和平パーティーへ行ったんだ。そしてシャルと出会いメロウ様を助けたい一心で浄化の力が覚醒する。
そう、このままではメロウは和平パーティーへ行ってもシャルと出会わない可能性が高い。
だって私が浄化しちゃったから。契約破棄までは穢れが進まないように対策までしちゃっている。
(これはまずい……。)
シャルがいないと精霊国に力の強い浄化師がいない事になる。そうすればメロウ様やクレハ様はいずれ黒穢になる可能性が生まれ、私はここから離れられなくなる。
精霊国を旅するなんて夢のまた夢になってしまう。
それは嫌だ。まずシャルがいないと話が始まらない。
(私がシナリオを変えてしまったのなら、私がシナリオを修復するわ!)
絶対に二人を合わせてみせる!
浄化の力は……、ヒロインならなんとかなるでしょう。
(シャル、頑張って!)
そう言うわけで私はシナリオ修復作戦を立て、毎晩唇を奪われては、メロウ様の甘い言葉と顔に爆発しそうになっている。
今夜もその時間がやって来た。
――ゴクン……、
絡みつく舌が出ていき、銀色の線が二人を結ぶ。
「口、開けて?」
「…………ぁ。」
メロウはキスし終えると必ず口の中を確認したがる。本当に恥ずかしいからやめて欲しいのに。
この前なんて嫌だと言ったら指を入れられて無理やり口を開かれた上に、さらに長いキスを強いられた。
「よし、ちゃんと飲めたな。」
頭をポンポンと優しく撫でて満足そうに、愛おしそうに、こちらを見つめてくるメロウ様。勘違いしそうになるからやめて欲しいのに……。
私は彼から視線を逸らした。
「……では、また明日。おやすみ、シシア。」
甘すぎる。心臓が持たない。
シャル、早く来てぇぇえええーー!!
ここまでご覧いただきありがとうございます(*´꒳`*)
底辺作家脱却を目指してます!!
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