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29 二人の和解

「シシア、結婚時にした契約を破棄しようか。」


 目の腫れが引いた頃、冷たくて気持ちが良かったメロウ様の手が離れると同時に、衝撃を受けた。

 

 え…………。

 今なんて言った?


「契約破棄を望んでたんじゃなかったのか?」

「望んでますっ!」


 聞き間違いじゃなかった!

 あんなに即答で契約破棄も離婚もしないって言ってたのに。


 もしかして、私がシシアじゃないって伝わったのかな。

 それはないか。伝わっていたらもっと怒鳴るなり問い詰めたりしてくる筈だもん。

 

 クレハ様に相当怒られたのね。

 だったら申し訳ない事をしてしまった。


「分かった。」

「よ、よろしくお願いします。」

 

 契約破棄という事は離婚すると言ってるのも同義。

 これで問題は全て解決だ。

 あと三ヶ月でモナルダ病棟にいる患者達を浄化して、円満離婚。逃亡じゃなくて大手を振って旅に出るの。


 あともうちょっとの辛抱だ。

 全てが終われば処刑もされないし、異世界を思う存分楽しみ尽くせる。


(私、頑張れっ!)

 

 それにしても、この短時間でメロウ様を説得しちゃうなんて。クレハ様には絶対に逆らわないでおこう……。


「あ、あの私もメロウ様にお話したい事があるのです。」


 こんな簡単に契約破棄出来ると思ってなかったから呆気に取られていたけど、私も伝えないといけない。メロウ様の不安を取り除いてあげなくちゃっ!


「なんだ?」


 いつになく優しい視線に驚いた。

 クレハ様の花束を買っていた時と同じ。

 こんな優しい瞳を向けてくれるなんて……。

 この方にはちゃんと幸せになって頂きたいな。


「私、月下の乙女の居場所を知っています。」

「…………。」


 しまった……。

 心から祝福したい気持ちが裏目に出た。

 普通に考えてシシアが月下の乙女の居場所を知ってるはずがない。だってシシアとシャルは面識すらないのだもの。


 これはまずい。

 なにも考えずに言ってしまった。

 メロウ様も戸惑った表情をしていらっしゃる。


「すいません。嘘じゃないんです。信じて貰えないと思いますが……、」

「いや、信じるよ。」

「…………え?」


 月明かりに照らされたメロウ様のサファイアの瞳は真剣そのものだった。

 

「お前のいう事なら、信じる。」


 これは、いけない。

 咄嗟に胸を押さえた。


「それとも嘘なのか?」

「いえ、嘘ではありませんっ!」

「そうか。」


 照れている場合じゃない。

 メロウ様はずっとシャルを探しているのだから早くお伝えしないと。


「月下の乙女の居場所ですが……。」


 確か、ヒロインのシャルは数年前に家が没落してしまい、ティファニット伯爵家でメイドとして働いているはず。


 その美しい容姿のせいで伯爵家の息子にアプローチされており、同世代のメイドからは媚びを売る卑しい娘だとして嫌われている。

 

 板挟みのシャルは精霊国と人間国の和平を記念したパーティーの夜、屋敷を抜け出してメロウと出会った事で人生が変わるのだけど……。


(あれ……、居場所を言って良いのかな?)


 居場所を伝えてメロウ様が会いに行けば、原作を無視することになる。そんな事をしても大丈夫だろうか。

 

 原作が変わってしまうのは避けたい。

 というか、和平パーティーっていつだ?


「あの、精霊王様。一つお伺いしてもよろしいですか?」

「……。」


 返事が返って来ないので見上げると、なぜがメロウ様が悲しそうにしていた。


「俺の名前はメロウだ。」

「…‥? 知ってますよ?」

 

 そんな大型犬みたいに落ち込まれても。

 メロウ様はなにを求めてるのだろう?

 意図が分からない。


「お前の望み通り契約を破棄するんだぞ。」

「……? ありがとうございます?」


 感謝が足りなかったかな?

 メロウ様の顔がどんどん曇っていく。


「あ、あの……。精霊王様……?」

「俺は、メロウと呼んで欲しいんだっ!」

 

(なな、なんだその顔はーーっ!?)


 衝撃的な美しさに目がやられた。

 潤む瞳と困り眉。


「一度で良いんだ。」

「うぅ……。」


 ずるい。ずる過ぎるっ!!!

 一度ぐらいなら名前で呼んでもいいのか?

 そもそもなんで呼び名にここまでこだわっているのだろう。もう訳がわからなくなってきた。


「うぅ………、メロウ、様?」

「様も要らない。」

「それは出来ませんっ!!」

 

 はぁ、とあからさまなため息。

 そこまで恥ずかしがる必要はないだろ、とでも言いたげな表情をしている。

 

「じゃあもう一度、俺の目を見て名前を言ってくれ。」


 本当に何があったんだ、この人!?

 急にこんなデレデレと。

 こっちの身にもなって欲しい。

 

「一度でいいと仰ったのはメロウ様じゃないですか!?」

「ああ。一度呼べたんだ。あとどれだけ増えても一緒だろ?」


 そんな、屁理屈……。

 なんだろう。詐欺にでもあっている気分だ。

 

「だめ、か……??」

「くぅ~っ…………。」


 反則級のおねだりボイス。

 貴方にそんなお願いをされて断れる女はいませんよっ!!


「め、メロウ、様。」

「ああ。どうした?」


 満足そうな顔。

 こっちは身体が爆発するかと思うぐらい体温が上昇してると言うのにっ!


(振り回される前に話を戻さないと。)


 コホン。

 咳払い一つして冷静を装った。


「今年の和平パーティーっていつですか?」

「二週間後だ。」

「そうですか……………………ぅん?」


 ………………二週間後っ!?

ここまでご覧いただきありがとうございます(*´꒳`*)

底辺作家脱却を目指してます!!

ブクマや☆から評価いただけると執筆意欲に大きく直結します。どうか応援よろしくお願いしますっ!


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