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27 メロウの覚悟

『た、大変、申し訳ございませんでしたぁぁぁあ!!』


 さっきまであれほど堂々としていた彼女が唐突に綺麗な土下座をした時は、思わず吹き出してしまった。


 クレハに怒られると思ったのだろう。だからと言ってあれほど焦るとは、単純に可愛いかった。

 だが、その後にポツリポツリと言葉を選んで話す彼女が泣き出したのを見て、胸が潰れるほど苦しくて辛くて。


 泣いている彼女を慰める権利がないことぐらい分かっている。それでも手を伸ばして涙を拭ってやりたかった。


 俺はただ、見ているしか出来ない。

 悔しくて、情けなくて。

 

 あれほど思い詰めいた相手に俺は、暴言を吐いたのかと思うと、身動きが取れなくなってしまった。

 クレハが摩る小さな背中も、赤く染まる顔も、俺が全部受け止めてやりたかった。


 許されないのは、分かってる。

 それでもと思ってしまう俺は、傲慢で我が儘だ。

 これでは今までのシシアと変わらない。


(ああ……、そうか。俺もシシアと同じ事をこの子にしていたんだ。)


 後悔が、増していく。やり切れない想いが募る。

 そして、泣き止んだ彼女から放たれた言葉に、首をスパンと斬り落とされたようだった。


『私の本当の名前は、シイナです。』


 月下の乙女と同じ名前を口にした。

 別人のシイナであってくれと、切に願った。


『私、両親とあまり上手くいってなくて……。』


 俺の探しているシイナも両親と上手くいっていなかった。


『十二年前あたりは特にそれが酷くて、断片的にしか記憶が残ってないんです。』


 苦しくて自身の腕を摩る仕草まで、同じだ。

 月光に照らされたシシアのプラチナブロンドの髪がシルバーに見えたのも、ジルバルに聞いたクレハを浄化した時にずっと囁いていた『もう大丈夫』の言葉も。


 点と点、全てが繋がっていく……。

 

(まさか、本当に、シイナなのか……?)

 

 俺がこの十二年、想っていた相手を、俺は……、

 この手で、傷つけたのか……?


 抱き潰そうとした。

 何度も泣かせてしまった。

 暴言吐き、悪だと決めつけた。

 彼女の言葉なんて聞きもしないで……。


(俺は……、なんてことをしてしまったんだ……)


 胃に溜まったドロドロが、食道を逆流して喉まで上がってくる。でも吐き出す事も出来なくて。


 彼女の背を眺めながら、その場で崩れ落ちて声を殺して泣くことしか、出来なかった……。


 俺は、俺には……、シイナの隣に立つ資格が、ない。

 なのに、諦める事も出来そうにない。

 想いを伝えるには手遅れで、彼女の中に俺への気持ちが残っていないのも明らか。


(何もかもが、遅過ぎた……。)


 バラの蔦が身体に巻きついて棘が身体に刺さっていくように、全身から血が流れて止まらない。心は深い闇に沈んでいく。


(どこまで堕ちて行ってしまえ……。)


 ――パンっ!


 夜目も効かない闇から現実に戻されるような頬に強い痛みが走った。


「目は覚めたかしら?」


 見上げた先、姉は呆れたように笑っていた。


「相応の態度で示せ。お前の愛が伝わるまで。彼女に尽くして愛されるまで。お前に出来る事なんてそれぐらいでしょ。」

 

 俺の心を見透かした姉の言葉でようやく失意の底から戻ってこれた。

 

「……そうだな。」


 遅過ぎた。でも失ってはいない。

 まだこの手の中にシイナはいる。


「もう手放さないし間違えない。」


 ゆっくりと時間をかけて償いをしよう。

 愛して貰えるように、俺だけを見つめて貰えるように。

 

「シイナは、必ず俺の手で幸せにする。」


 邪魔者は排除して。

 外堀を埋めて、着実に……。


「もう逃してやれそうにない。」


 俺だけを見つめて愛するように。

 時間をかけて彼女の心を溶かしていこう。

 

 シイナは、俺のモノだ。そう決まっている。

 俺たちは運命によって出会い、再会したのだから。

 

「そうね。私達二人の愛を分かって貰わないと。」


 二度と離婚したいだなんて思わせない。

 精霊の愛は重いんだ。


「絶対に、絶対に……、離さない。」

 

 溺れるほどに愛してやる。

 この手の中にまだ、シイナがいるっ!


「本当に、良かったぁー…………。」

 

 幸い、彼女は俺があの場にいた事を知らない。


「シイナはまだ逃げられると思って油断してくれている。」

「メロウ、ほどほどにね?」

「………………クレハ、ありがとう。」


 自然と上がる口角と目尻。今、俺は酷い顔をしているだろう。こんな顔、シイナには見せられないな。


(今は、まだ……。)


「返事になってないわよ。お馬鹿なメロウ。」

「止めるなよ?」

「本気の貴方を止めれやしないって知ってるから。」


 シイナ、覚悟していてくれ。

 俺から逃げられるなんて思うなよ……?


 ふふ、と笑って髪をグシャグシャにしてくる姉は最後に不穏な言葉を口にした。


「黒魔法で狙われているのは恐らく、シシア様よ。」


 クレハの勘はよく当たる。

 今までどれだけ助けられたかしれない。


「…………は? どう言う事だよ!?」

「私にも原因は分からない。でも、彼女の過去の行いは恨まれても仕方がないものが多いわ。」


 確かに、シシアの行為が不況を買うのは分かる。俺だって殺してやりたいと思っていたぐらいだ。命を狙われる危険性は十分にある。


「注意しておきなさいよ。」

「もちろんだ。」


 俺のシイナを傷つける輩は全て、俺が排除する……。


ここまでご覧いただきありがとうございます(*´꒳`*)

底辺作家脱却を目指してます!!

ブクマや☆から評価いただけると執筆意欲に大きく直結します。どうか応援よろしくお願いしますっ!


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