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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第八十一話 交わる悪なる者

 そこは一般人ごときでは到底たどり着けない場所にあり、ネルト教団の本拠地である。


「姫様、連れて帰ったぜ」


「ただいま……です」


 本拠地で一番広く物静かな部屋に少女と手を繋いでいるフリートは淡々としながら入ってきた。


「アルギル……? アルギル!」


 部屋の一角には石作りのただただ四角い台の上にボロボロになっているアルギルが眠っており少女は無理やりフリートから手を離し駆け寄った。

 小さな両手で優しくゆすりかけるもアルギルは一向に反応を示さない。

 ただ生きていることを示す脈拍と呼吸は鳥のさえずりのようにわずかだけ聞こえる。


「どうしてアルギルが……」


「おっと、お帰りお帰り。フランちゃん」


「ニルズさん、一体なにがあったんですか……!?」


 少女__フランが声をした方に振り向くと片腕が取れているニルズがいた。

 止血をし特に痛みもなさそうだがフランが心配するには十分すぎた。


「派手にやれたな。日頃の祟りか?」


 そんなニルズをフリートはからかうように笑った。


「さぁ? 想像に任せるよ。ま、身体なんて別になんとかなるしどうでもいいさ……うん、これでオッケー」


 ニルズが棚から冷凍保存されていた腕を取り出しそのままくっつけるともう一方と遜色のない反応を見せる普通の腕となった。


「しっかし、まさかフリート、君が獲物を仕留め損なうなんて情でも沸いたかい?」


「そんなもの、もうとっくに捨ててる。……ほら姫様、ドーナツだ。おいしく食え」


「あ、ありがとう……」


 フランに一つの丸い穴の空いたドーナツを渡しながらフリートはニルズからの質問を軽く受け流す。


「それよりアルギルは!」


「大丈夫大丈夫フランちゃん。少し無理して眠ってるだけだからさ。お姫様は安心してドーナツを食したまえ」


「っわ、かった」


 ニルズからの温かみのある言葉にフランは安心し席に座りドーナツを無言で食べ始める。

 ただ、フランは気づいていないようだがニルズの温かみの言葉は薄皮一枚にも満たない表面のみである。


「ただいま帰りましたニルズ様」


「けけけ、戻ったぞぉ」


 そこにリグスとゲラルが入ってきた。


「俺への挨拶はなしかリグス」


「あなたに向けるものはなにもないですが、なにか?」


「はいはい、そうですかっと」


 フリートは無愛想なリグスをからかいながらそこらへんに置いてある麦茶をコップに移して口に運ぶ。


「そうだ、ニルズ。あの計算、もう一度やり直しておいて。今日、反応が急激に増した」


「了解しました。再度やり直しておきます」


 丸まった紙束を受け取りリグスはいち早く部屋を出た。


「うまいのか姫様」


「う、うん。美味しいよゲラルさん」


 ゲラルは武器を置きドーナツを食べるフランの頭を大雑把だが優しくなでる。


「さて、フリートどうだったかな? リリス様が言っていた子はさ」


「どうって……ま、殺すだけなら特段問題はない。それより急がないとそろそろ()()の時期だぞ」


 空気が一転、寒気が全身を走るかのような空気になる。


「あぁそういえばあれの時期か。ちょうどいいし、利用させてもらう。そして、忘却病の子を捕まえれば700年前の続きが見れる」


「へぇそうなのか! それは…楽しみだぞ俺!」


 真っ先に反応を示したのはゲラルであった。


「なら、その時が来るまで俺はこの身を殺してでもあんたの命令に従うまでだ」


 フリートはニルズに視線を向けながら再びライフルを肩にかける。


「へぇなら頑張れよフリート。この世界に救済を与えるためにもね」


「お、お仕事頑張って、くだ、さい」


「おう、頑張ってくるぜ姫様」


 ニルズの不気味な応援にカウントされるのか怪しい声援とフランが怯えながら発した声援を背中にフリーとは退室した。


「さて、と。ゲラルはフランちゃんを自室に戻して待機。いや夕食の用意」


「あいあい、じゃ姫様戻るぞ」


「はい……」


 ゲラルもまた、ドーナツを未だ食べているフランを連れ部屋を出た。

 部屋に残されたのはニルズ、ただ一人だけとなった。


「じゃあ、まそろそろ出てきたらどう? リリス様」


「あらら、ばれちまってたか」


 部屋の片隅から突如として片手で黒煙を払いながらリリスが現れた。


「残念ながらこんな変な人生だとその程度、この部屋に入ってきた時点で分かるんだよ」


 ニルズは現れたリリスに恐怖するわけでもなく、ただただ、あざけるようにくすりと笑った。


「ふーん、別にどうでもいいや。単刀直入にボクの目的を話そうか。物好き野郎」


「ひひっそれはそれは…嬉しいね」


 リリスの言葉にニルズは怪しげに瞳を光らせた。

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