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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第七十九話 喰らう橋

最後に一つ情報があるかも……?

「待ってろよ」


 ガラは炎の渦が巻き起こった地点に急いで向かう。


(くそっ、何が起こっていやがる。ニルズに続きあの炎を恐らくあいつのだろうな。問題はあいつが表に出ている事、ニルズならまだしもあいつはまずい。急がないと)


 ガラは思考を高回転させながら走る足を更に働かせる。


 だが、そんな思考は次の瞬間に余計に混乱することとなる。


「んだ……あれ……虹? いやどちらかというと橋?」


 空に浮かぶのは銀色の虹だった。正確には曲線は描いておらず一本の橋なのだがほんの一瞬ガラはそれを虹だと判断してしまった。


 ◇◇◇__時間は再び少し戻る。


「おい、もう少し揺れを抑えろ」


「要求多くないですか?」


 背中にのせたハザードに既視感を覚えると思ったらあれだ、ちょっと昔のセロナだ。


「しかしだ、このまま追いかけるだけでは意味はないがそこのところは考えてるか? ただ追いかけるだけとういうわけではないだろ」


「それはそうなんですけど……」


 まずい、なにも考えていないなんて言えない。


「呆れるな。それでボクを守ろうとするなんて」


「そこはご安心なく。絶対に守るので」


「ほお? それはこちらの話だ」


「あ?」


「あ?」


 険悪な空気が僕たち二人の間で流れる。


 そんな中だった。


「っ来るな。防げ、(セル)


「『天候(ウェザー)』使用、嵐壁(ストームウォール)ッ!?」


 三時の方向から殺気を感じる。するどい刃物で首を刈り取られてしまうようなそんな殺意。

 背中のハザードは淡々と何重にも(セル)の壁を僕達を覆い尽くすように張り、また、僕は反射的に『天候(ウェザー)』の中で僕が扱える数少ない『荒嵐(テンペスト)』を応用した技『嵐壁(ストームウォール)』を使って僕を中心とし半径二メートルに猛烈な嵐の壁を発生させた。


「っ炎!?」


 追いかけている少女をかき消すかのように視界に広がったのは燃え盛る炎だった。右も左もあたり一帯が炎により視界が遮られている。

 熱は届くが炎そのものは僕の嵐壁(ストームウォール)でなんとか寄せ付けないでいる。

 ただ身体に羽織っていたマントは嵐に巻き込まれ炎の中に消えていった。


「厄介だな、外に置いてある暁鋼(アカセル)との連絡も切れた。外部との連絡遮断の機能があるのか。無駄に用意周到だな」


「今のところは問題ないですけど早く脱出しないとですね。じゃ一気に吹きとばせ、飛翔する嵐(ストームウイング)!」


 こちらは今発動している嵐壁(ストームウォール)の攻撃版といった技であり巨大な鳥の形をした嵐を天高く飛ばし弾けさせる。


「行け」


 嵐の鳥は花火のように空中で僕たちを囲む炎を巻き込みながら爆ぜた。

 青空が広がり周りを警戒する。


 先程のような殺意はどこにも感じない。


「踏ん張ってくれよキュウク」


「ん?」


 急に背中にかかる力が重くなる。振り向くとハザードが真剣な眼差しで遠くの何かを指さしていた。

 一体、何を……?


蝗害よ喰らい尽くせ(ローカスト・プレイグ)!」


 それはほんの一瞬だった。


 一度まばたきをし次に目を開けたとき、目の前には鋼の橋が出来ていた。

 だが、よく見ると、それは幾千の銀バッタたちが一列に群れをなしうごめているだけであった。


「触れるなよ、骨の髄まで喰われるぞ」


 へぇ……恐ろしい、怖いというのが真っ先に浮かびその次に浮かんできたのは好奇心である。


「じゃあ試しに……」


 『創造(デザイア)』で本物となんの遜色もないりんごを一つ創り出してその橋に投げ捨てる。


 りんごの表面が橋の表面と衝突したら、下から銀バッタたちが駆け上って来てりんごを種の一つも残さず無惨にも喰い散らかされた。


「うわぁ……やばぁ」


 一言で表すなら今の気持ちは、唖然。

 もうなんかやばすぎて口が開いたままの状態。


「だから言ったろう? 骨の髄まで喰らうと」


「その骨ごと食ってませんか!?」


 骨の髄どころかそれすらも喰らう、……末恐ろしい。


「長時間の使用ができないというのが難点ではあるがな……ふぅ」


 橋はハザードの呼吸とともに霧散した。


「……けど、ハザード、これじゃ意味が」


 ないような気がするのは僕だけだろうか。

 ハザードはそんな僕を呆れたのか、嘲るようなため息をついた。


 なんか、無性に腹立つ……!


「キュウク、どうやらボクのしたことは意味があるようだぞ。例えば……ほら、良さそうな相手が来たぞ」


「!」


 建物の間から数人のネルトの教団者、そしてそれを率いているのであろうリーダーらしき男性と女性が一人ずつ。

 見た感じどちらも先程僕たちを狙ってきた者の殺意を感じない。

 となれば、あと一人いると考えたほうがいいか。


「けけけ、けけけ!! お前たち、姫様、傷つけようとした! コロス、コロスコロスゥゥゥ!!」


 無駄に手入れがよく出来ている髪に男は見た目から想像できないほど狂っている声を発している。

 その中で一つ引っかかった言葉があった。


 姫様?


 おそらくは僕たちが追いかけているあの少女のこと、だろうか?


「さっさと終わらせて戻りますよゲラル」


「あぁ、あぁ! わかってる! コロス、コロス!! リグスも手伝え!」


「あいあい」


 男__ゲラルは歪な二本の青竜刀を腰から取り出し構え、白銀の鱗が文様のように顔に浮き出ている女__リグスは鎖をどこからともなく取り出した。


「降りるぞ」


「降りなくてもいいんですよ?」


「よし降りる!」


 僕の背中から怒りながら無理やり僕の隣に飛び降りたハザードは機械で出来た腕をさらけ出す。

 僕もそれに合わせ弓矢を取り出す。


 あの刀は、危険なのでここぞというときに出すか。

読者の皆さん!

3月20日 『仕えるもの語』一周年を祝って特別な回を出します!

      お楽しみに!

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