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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第七十八話 巻き起こる

「はぁ、はぁ、早くガラさんに、伝え、ないと……!」


 セリアは息を切らし今にでも休憩しろという心のブレーキも無視しながら無心で走っている。


(さっきの人は大丈夫かな? 早くガラさんに助けを)


鱗弾丸(スケイルショット)


「きゃっ!?」


 後ろから見なくても分かる殺意を察知し振り返ると視界に一枚の鱗が飛んできたのが分かった。なんとか間一髪それをセリアは身体を横にずらして躱す。

 そして、そのまま地面にころんだ。振り向くと上空に鱗にのったアルギルがおりセリアを見下ろしていた。


鱗弾丸(スケイルショット)


「うわぁ!? な、なんだ!?」


「きゃぁぁぁぁぁ!!??」


 無差別にアルギルは鱗を飛ばし始めた。周りから聞こえる悲鳴のことなど耳にも止めずただセリアを捕獲することしか考えていなかった。


「や、やめて……!」


 逃げ惑う人々を絶望しながらセリアは声を上げることしか出来なかった。


「対象を捕獲すr……」


「おらぁっ!!」


 セリアに向け鱗が再び放たれようとしたその瞬間、セリアの瞳に移ったのは赤く輝く閃光__アクセルがアルギルを横から蹴っているさまだった。

 突然重い蹴りが頭部付近に与えられたアルギルは建物に土埃をあげながら吹き飛ばされた。頭は真っ白になり一時的に気絶した。


「俺が嫌いなものは二つ! カレンの姉貴の料理と無差別に人を襲うクソ野郎だっ!!」


 激しい怒りを燃え上がらせるアクセルは地面に着地してすぐにいまだ気絶しているアルギルに殴り掛かる。


「ストッープ」


「っ!? 誰だお前……!」


 振り上げた拳は煙のように割って現れた何者かによって止められた。その人物はこげ茶のロングヘアに白の流星が流れるように描かれ黄みのかかった瞳を持つ大人の女性だった。


アルギル(この子)に死んでもらっちゃ困るんだ。悪いね熱血少年」


「ならてめぇを倒すだけだ……!!」


 掴まれた拳を中心にアクセルは女性に対して超速度の飛びまわし蹴りを放つ。


「なっ!?」


「いい蹴りだよ。けどねぇまだまだっ!」


「ごほっ!?」


 その蹴りはもう片方の手で止められ反対側の建物に勢いよく投げられる。建物にぶつけられ土埃をあげるアクセルは血反吐を吐き身体の四肢がしびれている。


「大丈夫ですかアクセルさん!」


「っ、だい、じょう、ぶだ。っ!?」


 セリアはアクセルを心配しいち早く駆け寄る。アクセルは立ち上がろうとするも尋常じゃない激痛が足に響き地面に膝を落とす。


「す、すぐに回復(ヒール)を……」


「おや? おやおやおや! 君、忘却病の子か!」


「きゃ!? 離してっ!?」


 回復(ヒール)をアクセルに施そうとするセリアに女性が興味深そうなものを見たような不敵な笑みを浮かべながら近づきセリアの白くて細い腕を力強くつかんだ。


「いい土産ができた。さっさとアルギルの回収を……」


「待ちやがれ……!」


 パァンッ!

 女性は抵抗するセリアをものともせずアルギルも回収しようと肩へ乗せようとした、その時、一つの銃声が鳴り女性の頬をかすった。


「そこまでだ」


「おっと……面倒な相手が」


「ガラさん!」


 女性が振り向いたその先には鋭い目をぎらつかせながらガラが銃口を向け立っていた。


「悲鳴を聞いて来たのは正解だったな。これはニルズ貴様の仕業か。その手を離せ。でなければ殺す」


「それに誤解があるにはあるがま、そんなところ」


「そうか」


 パァンッ!


 再び銃声が鳴る。それと同時に女性__ニルズのセリアを掴んでいる方の腕が真っ赤な血液を空に散らしながら後ろに吹き飛んだ。


「大丈夫か、セリア」


「あ、ありがとうざいますガラさん!」


「……あぁ無事でなによりだ」


 それと同時に目で追えない速度でガラはセリアを救い出した。


「あはっ!」


 一方、ニルズは自分の腕が吹き飛んだ様子に恐怖を浮かべるわけでも怯えるわけでもなく不気味で狂気的な笑みと声をこぼした。


「まだ、やるか?」


「それもいいね! ……でもまぁ今回はアルギルを回収しに来ただけだしやる気はないさ。せっかくのお気にのボディも傷ついたし。ところでだ、君はここにいていいのかな?」


「は?」


 ニルズが指同士を鳴らすとガラたちとは別の方向__キュウクたちのいる方向に炎の渦が巻き起こっているのがガラの視界に広がった。


「あれは……!」


「ほいビンゴ。あっちもやってんねぇ。実にきれいな花火だこと」


「何が目的だ……!」


 静かに怒りをあらわにしながら銃弾を装填し銃口を向ける。


「目的、目的ねぇ。……そいつはヒ・ミ・ツってやつ。じゃグッバーイ」


「待て!」


「そう言われて待つバカはいないんだよねー」


 ガラが引き金を引くより早くニルズはアルギルを連れ消えた。


「アクセルさん! アクセルさん! 大丈夫ですか!!」


「あっあぁ、なんとか。ちょっとあんま揺らさ、ないで……」


 また一方、セリアはそのか弱い両腕で今にも気絶してしまいそうなアクセルの肩を掴み優しく揺らしていた。


「セリア、アクセルを連れて家に帰っててくれるか」


「ガラさんは?」


「俺にはまだやることがあるんだ、悪いな。それに家にはセロナが…」


「セロ、ナ? 誰のこと?」


 ガラの言葉にセリアは意味も分からずきょとんとした表情を浮かべた。


「…いやなんでもない。忘れてくれ」


「そう? ならさき帰ってるね。行きましょうアクセルさん」


「あぁありがとう」


 セリアはアクセルの肩を支えながらこの場を去っていく。


 ガラはその様子を遠い目をしながら見届ける。


「やっぱ覚えてないか…いや切り替えろ」


 一瞬うつむいたがすぐに気持ちを切り替え炎の渦が巻き起こったところまで駆け出し始める。

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