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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第七十六話 出会って

テスト終わったぜ、しゃあ!

◇◇◇


「飴玉、もっと持ってくるんだった」


 はぁとため息をつき残りの飴玉を確認するミスト、残りが十を切りもう少し持ってくれば良かったと後悔をにじませている。


「あとで作れるかな。ほんとあぁ帰りたい」


 分身たちも今のところ飴玉を売っているところを発見できずにいた。なければ作ればいいのだがそんな設備が泊まる場所にあるはずないと考える方が自然であるためミストは一度魔王城にある自室に戻りたいと心底思っている。


「ん? 大丈夫ミスト?」


「大丈夫ですよクー様……ってあとでキュウク様に怒られますよ」


 肩を軽快なリズムでぽんぽんっと叩かれそっちの方を見ると片手にクラーケン串を指の間に挟めるだけ挟んだクーガが笑顔を浮かべ口に運んでいた。


「大丈夫! キュウは私に甘いから! あっ一本いる?」


「いえいえ結構ですかね? (キュウク様の場合甘いというか断れないだけでは?)」


 別に嫌いな味ではないのだがなんとも言えない拒否感がミストの背筋を襲うため苦笑いで受取を断った。それと同時に誰にも聞こえない程度の音の大きさで呟いた。


「ところでガラ」


 クーガとミストの二人の少し前を歩いているセロナは隣に立っているガラの方にちらっと視線を移した。


「なんだセロナ?」


「今更だがお前結構大きくなったな。数年前はちんちくりんだったのに今ではあたしより結構でかくなりやがって……」


 手で身長差を表すように簡単な仕草をしながらセロナは自分とガラの身長を比べた。軽く10センチ以上の差が生まれどことなくセロナは悔しさを覚えた。


「成長期ってやつだ。次期当主としてたくさん食って働いたからな、当然だ! ってかちんちくりんは失礼だろ?!」


「事実だと思うぞ。少なくともあたしよりかはちびだった。あっそうだセリアの奴は元気か?」


「あぁ元気の上に超がつくくらいには回復した。……まぁ前に比べたらだけど歩けるようにもなったし食事もぎこちないができるようにもなったからあとで見舞いにでも来てくれ。あいつが覚えている…かはわからないが」


「そう……か、なら花でも送っとこう。……ほら元気出せ! あたしが悪いみたいになるだろうが!」


「そ、そそそれは卑怯?!」


 他愛のない会話、だがその会話はどこか哀愁を感じさせた。そんな空気にセロナはむかつき()()、そうついついガラの両頬をちぎる勢いでつねった。


「むかつかせるお前があたしは嫌いだ」


「もうそれは無茶苦茶だろ!?」


 数秒つねったあとセロナはガラを解放した。ほぼいちゃもんもんの理論を押し付けるセロナにガラは片方の頬をさすりながら指をさす。


「そんなんだからお前は! ……ってあぁ!」


「ん?」


 なにか言いたげに口を開こうとするガラ、の笑みが徐々に崩れていき最終的に声を張り上げた。それは驚愕一色のものであった。

 急に声を上げたガラを疑問に思い後ろに振り向いた。


「ふむなにやら楽しそうな声が聞こえたのだが報告はなしか? ガラ?」


「ベ、ベル様!? どうしてここに!?」


 セロナの目線の先にはベル・オルカ、そしてその半歩後ろにラサ・セルバがいた。またその二人を視界に入れたと同時に耳にガラの驚愕の声が轟いた。

 一回気絶させようか、とセロナはふと思考したが流石にダメかと安全装置が脳の中でかかりやめた。


「セロナ、どうしたの?」


「急にどうしたんですか?」


「いやそれがだな……」


 ガラの声に反応しクーガとミストがセロナに近づいてきた。がらにもなく言葉につまるセロナ。


「クーガお嬢様お初にお目にかかる。私はオルカ家当主ベル・オルカ、お父様からお名前くらいは聞いたことあるかな?」


 ベルは丁寧な仕草でクーガに挨拶を交える。


「あっ聞いたことある! いやあります! 確か……えっとなんだっけ」


「ふふっ認知してもらってるだけでもありがたいさ。……ところで一つ聞くが後ろの君は?」


 どうにも思い出せないクーガを優しい微笑みを向けながらベルはミストの方に視線を移した。その瞳はかすかに揺れ受け入れがたいものを見たと言いたげな様子だった。


「私ですか? 私はミスト。k……」


「ミスト・ルルセル、か?」


「はい? ルルセルってなんですか? ミストはそうですけど私に下の名前はないです。どうかしましたか?」


「いやなんでもないさ」


 そうか、とミストからの返答にベルは表情は凛々しいままどこか悲しげにつぶやいた。そんな様子にミストは疑問を抱きながらも聞くことへの面倒くささが圧倒的なまでに疑問を打ち負かせ聞かないでおこうと心に決めた。


「さてガラ、報告に対する言い訳はあとで聞くとして。ラサご案内してあげなさい。魔王様のご令嬢とそのご友人たちだ。丁重にな」


「え!? まだキュウとカリ、あとアクセルが」


「なるほど、他にも友人がいるのか。……ガラ探しに行ってあげなさい」


 呆気にとられながらも腕を組み考えるベルが口を開いた。


「俺!?」


 突然の指名にガラはとても驚愕した。


「不服か?」


「そんなわけではないし別にいいっすけど、……よしじゃ行ってきます!」


「おういってこい」


 ガラは足早にキュウクたちを探しに行くことになるとベルからの励ましもあるなかすぐさま背中が見えなくなるくらい遠くまで走っていった。


 ◇◇◇


 一方そのころアクセルは


「はぁ、はぁっ……だぁもうてめぇなにもんだ」


 狭く人気のない路地裏、アクセルは疲労が顔に見えるなか拳を前に出し攻撃する構えをしとあるフードを目元まで被った謎の人物と相対していた。男にも女にもどちらともいえない体格に白銀の鱗が腕や脚から散見される。

 その拳には血のりがわずかについておりアクセルの唇から少量ながら血液がゆっくりと流れ落ちている。


「任務失敗、新たな任務開始。目標は敵個体『撃破』」


「そうですか。ま、そう簡単にやられっかよ」


 淡々とした機械のような声を発しながら剣を抜き出す謎の人物、アクセルもやる気をだし白い鉢巻を額に巻き服の裾をめくり拳に力を更に籠める。


 何故こうなっているのか時間はほんの数分だけ巻き戻る。

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