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仕えるもの語  作者: マッド
第一章 序章
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第八話 はかない甘い夜の宴、忘れられない記憶

 授業が終わって、その日の夜


 窓を開け、夜風が部屋中に広まり、涼しい気温になっている。赤色の絨毯に座り片眼鏡を机の上にのせた。パジャマに着替え、寝る前のルーティーンをやっていた。

 整えたら寝ようと思いつつブラシを尻尾になだめるように当てる。

「眠い…」

 あくびをしながら今日のことについて考える。

(セロナがどうやってクーの蜘蛛の糸から出てきたのだろうか?)


 いくらセロナが強くても突破するのは難しいはずだ。なら、蜘蛛の糸の粘着性が消えた?消えるには消えると思うが、いくら何でも早すぎる。

 もしくは爆発(ボン)で糸もろとも爆発させたか?耐熱性もよかった気もするのだが。

 明日クーに聞いてみようと思い、ブラシをしまい寝ようとベットに移動する。

 その時に、バンっとドアを強引に開ける音がし、その後に聞き覚えのある声が部屋に響く。


「キュウ起きてる~!」

クーの声だ。その声に眠ろうとしている体が目覚める。


「起きてますよ。急に何でs・・・」

「それじゃあ失礼しま~す」

 まだ元気があるのかと思いこんな夜に何なのかと聞き、扉の方を確認する。すると、クーが自分の部屋に入るみたいにどすどすと入ってくる。そんな様子を見ながら、クーの後ろに誰かの姿が見え、ぼやけている目をこすりながら誰か確認する。

「お邪魔するよキュウク」

 クーの声ともう一つセロナの声も聞こえる。セロナの声は昼の時より、弱っており眠たそうだ。意外な人物の登場に驚きながらも部屋に案内した。

「何か用ですか。こんな夜に無理やりドアを開けて入ってくるなんて」

寝る瞬間に起こされたので少し不満に思いながら、質問する。

「今日さ、頑張ったじゃん、だから・・・」

「だから何ですか?」

クーが少し言葉にタメをつくり()らせてくる。

「頑張った会でもやろうかなって」

「幼稚な名前ですね」

「何か問題ある?」

「何も」

 クーの提案にクスッと笑い頑張った会の名前に突っ込む。その言葉にクーはかわいらしいが怒りが籠っている顔をこちらに向け、それに対応する。


 頑張った会について聞いたが要はパーティーをしようといっている。

「それでセロナはなんで来たんですか。」

クーの隣に座るセロナに聞く。

「あたしはクーガに連れてこられただけだ。ホント君の主には困らせられるよ。それにしてもあたしの想像よりかは汚いな」

「それに関してはすみませんね」

 セロナは僕の部屋について指摘する。汚いという言葉には少しカチンときたが、口には出さないようにする。

 汚いというがある程度は整っていて完璧なまでに綺麗とまでは言わないがクーの放っておくと足場が無くなる汚さよりかはましだろう。と考える。


 それと、クーは相変わらず人のことを考えずに行動するなと思いつつ、何か飲み物がないかなと置いてあるアイテムバッグに手を突っ込み飲み物を取り出す。

「こんな物しかありませんが飲みますか?」

 キンキンに冷えたブドウを使う飲み物をクーやセロナに差し出しながら聞く。

「おぉーありがとうキュウ。冷たっ!」

「気がきくな。ありがたくいただくよ」

 クーは笑顔でもらい、飲み物の冷たさに驚き落とそうとするもギリギリでキャッチする。

 セロナはいつも氷柱の魔法を使うせいなのかは分からないが冷たさを気にせず飲み物のボトルに触れる。


「それじゃ乾杯しよ!乾杯!」

「え~~」

「いいなそれ、あたしは賛成だ」

飲み物をもってクーが乾杯をしようと提案してきた。セロナはその提案に賛成したが、僕は嫌がりながらもクーに「まぁまぁそういわずにさ」と言われてやることになった。

「えーでは、今日頑張ったことに関して乾杯!」

「「乾杯」」


三人でカツンという音を出しながらボトルを合わせた。クーが先に飲みながら一言。

「いや~ホントこれはおいしいね」

その後にセロナが一言

「甘ったるいなこれ」

「しょうがないでしょ。クーが好きな甘さがこのくらいなんですから。もしくはこっちの甘め控えのにしますか」

 確かにこの飲み物は甘い。砂糖の塊20個くらい入れてるからほんとに甘い。アイテムバッグから自分用の甘め控えめの方を取り出した。

「それをいただくよ」

 飲み物をセロナに渡し、再度飲み始めた。


「キュウ~なんか食べ物ない?」

 クーが飲み物を床に置き、アイテムバッグをあさり始めた。

「ちょっ勝手に触れないでください」

「おっ?なんか発見!」

クー止めようとするも何かを取り出す。クーが取り出したものを見て絶望する。

「最悪だ」


 クーが取り出したのはポテトフライとある国ではポテトチップスというらしいが今は関係ない、ポテト薄く切りそれを油で揚げ塩を付けて食べるものでとてもおいしい。

 城で作ってクーに見つかった時に全て食べられたので、また造らないとと思いながら肩を落とす。

「ほう、おいしそうだなあたしも貰おうか」

「いいよ」

 セロナもクーがお皿にのせたポテトフライをパリパリと音を出しながら食べ始める。

「う~んやっぱりおいしいね」

「ふむ、こういうのは初めて食べるがしょっぱくて食べやすいな」

 クーは笑みを浮かべながら食べ、セロナは初めての食べ方に驚きながらもおいしく食べている。

 その2人が食べている様子を見て、おいしく食べてくれるし、ポテトフライが食べられたこともこれはこれでいいなと思いながら頑張った会という名のパーティーは続く。


__数十分後


「寝ましたか」

「…可愛いな」

 クーが元気な様子から打って変わって可愛い寝顔を浮かべ眠ってしまった。セロナも寝顔を見て可愛いという言葉を漏らす。

 そう、そうなんだよ!クーの寝顔は世界一といっても文句が言われないほどかわいいだよ。心の中で密かに思いつつクーが寒くならないように布団をかけた。

「キュウク、一つ聞きたいことがあるだがいいかい」

 ポテトフライをおいしく平らげたセロナが質問してくる。


「いいですよ」

「君たち二人は混血児かい?」

「なんでそう思ったんですか」


 セロナが突拍子もない突然の質問をする。

「キュウク、君の耳が獣人の以外にもエルフの特有の耳があったからね」

セロナがそういうと同時に顔に近づき僕の耳を見る。

「そうですね。私は狐とエルフのハーフ、お嬢様は鬼と蜘蛛のハーフですよ」

セロナは一瞬だけ表情を変えた。


「そうなのか」

「驚かないんですね」

セロナが顔を離し床に座る。

 混血児といえば生まれてもその場で死ぬのが大半で珍しいものだと思うだけれど。確か五十人に一人だっけ。


「そうだね。あたしが知りたかったのは、今日の戦闘でキュウク、君だけが魔力量に何の変化がなくて不思議に思ってな。もしかしたらエルフの血が入っていて混血児なのではと考えていたさ」


 エルフ、それはこの世界で唯一魔力を自分で形成できる種族

 狐、それはこの世界で魔力を貯められる量が最も多い種族

父が狐で母がエルフ。この世界で探したら同じ血はたぶん存在しないと思う。


「けど生きにくいかっただろう。その姿では」

「そうですね。この髪色に狐とエルフの混血児はあの災厄とほぼ同じですから」


 1000年前、世界を襲った災厄を起こした魔族、名前は記されてないが体の特徴が金色の髪に妖狐とエルフの混血児。初代魔王様や初代勇者が協力して倒したとしかいい伝えられていないが、それから同じ見ための同じ種族の混血児は根絶やしにされた。


「9歳まで姿が変えられなくて外を歩いて混血児だってバレると石を投げられたり店を出禁にされたりしましたから」


 セロナに言ったのはやられた行いでもマシな部類で、ある時は、殴られたり、食べ物に毒を盛られたり、親の仇だからって殺されかけたり、友だちだと思ってたやつに崖から落とされそうになったり、誘拐されかけたことだってあった。絶望のど真ん中で僕は魔族が人が信じられなくなってきたんだよ。


 迫害についての唯一の救いはスチラー家という名家に生まれたことかな。

 スチラー家だから殺されなかった。スチラー家だから生まれた瞬間に殺されなかった。お父さんやお母さんには感謝してるし、その親に対してなんで自分なんか生んだんだよとも思ったことがある。

 心に関してはクーが事情を知っても明るく普通の魔族として接してくれた。たぶんクーがいなかったら今頃、死んでるかもしれなかった。


「…そうかい」

 セロナが話を聞き、小さくつぶやく。秘密を明らかにして今まで明るい空気が流れていたのに重い空気が流れる。

「質問は以上ですか。早く部屋出てもらえますか。明日は休みといっても早く寝たいんですよ」

僕はクーを背負いながら部屋に戻そうとした。

「そうだな、ならもう一つ。いつから姿は変えられるようになったんだい?」

「そんなことですか。その質問には正確に答えられません。まぁ10歳以降のどこかだとは言えますが」

「らしくないね。何か隠し事があるのかい」

 片眼鏡を付け、姿をいつもの黒髪に変えながら質問に答える。

「僕とお嬢様は10歳から13歳の記憶が抜け落ちているんですよね」

 詳細を聞こうとしても、このことだけは何をやっても魔王様もお父様も他のいろんな魔族たちも答えてくれない。その時から、見た目を偽装できるようになった。


「…悪かった」

「何か言いましたか?」


 セロナが答えを聞いてひどく黙り始め何か小さくつぶやき部屋に戻っていった。

クーも部屋に戻し、自分の部屋に戻った。


「あぁ・・・」


 ベットに横になり顔に手を当て目を隠し久々に過去を話して嫌な記憶が浮かんでくる。

 絶対に克服できないだろうと思う最悪の思い出。

 最悪な思い出と同時に出てくるクーと初めての出会い、耳をわざと隠しながらもうっかり見られ、また嫌われると思いクーの方を伺った時、手を差し伸べて変わらず笑顔向けた瞬間。この世界で初めて感じた明るい笑顔。


 そんなことを思い出しながら部屋の電気が自分の記憶を消去するように消え僕は寝始める。

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