第七十一話 動き出す歯車
まずい、構成はできてるのに文字にできねぇ。
「やっぱお前は最高だよ!」
「だから違うって言ってるだろうが! 離せガラ!」
セロナの手をガッチリと掴んで離れないガラを横目に僕はクーとカリの二人と話し合っていた。
「えっーと、あのガラって人はセロナのライバルってことで合ってるの?」
「いやいやセロナが違うって言ってるから違うのでは?」
「そうなんだよ。そこが判断を狂わせるよね」
うーんと頭をかしげる僕達。ちらっとセロナの方を見ると「こいつどうにかしろ」と無言で圧をかける表情でこちらを見ていた。
もう少し待っててください。そう軽くお辞儀をしながらアクセルやミストの方を見る。
二人は先程の山賊の遺体を観察していた。
「んーなぁミストこれどう思う?」
「どう思うっていわれても‥‥‥」
骨を素手で拾い上げる様子にはあの二人だしと思いながら納得するも投げ捨てるように扱うのは流石にどうだが‥‥‥
「デザ兄とかブックなら多少は分かるんだろうけどさ、バカアクセルはともかく私でもなんにも分かんないね」
「は? 喧嘩なら買うぞ?」
「まっさかー。手間増やすわけないじゃん」
ミストの割には更に火種を燃やさないなんて! あとでなんかあげようかな。なんやかんや
「あ、そっ。貧弱弱虫」
おっとアクセル、お前煽らなくていいんだぞ。嫌な予感がしながらミストの表情を伺うとニヒルな笑みのまま飴玉をかみ砕きトレーナーの裾をゆっくりとめくっていた。
「は? やろうよ、今すぐ喧嘩しようか」
よしさっきの言ってもない言葉は撤回するとして先にあいつら黙らせよう。そう思考しながら立ち上がろうとしたときクーが先に立っていた。
「ミスト私も混ぜて!」
「え、ちょっ!?」
さっき戦えなかった反動もあってかクーは全速力でミストたち二人に絡んでいった。
思考を切り替えまたカリと話し合うことにした。
「というかあのあの子オルカって名乗ってたからオルカ家なんだろうけどキュウク君聞いたことある?」
「ないですね」
カリの質問をきっぱりと否定する。スチラー家とオルカ家、特段仲がいいわけでも接点があるわけでもない。
記憶がない時期に知り合ってる可能性もあるがガラのあの反応的にそれはありえないと判断する。
「というかオルカ家ならカリの方が‥‥‥」
「ボクがそういうこと教えてもらってたとでも?」
「あ、そうでした。ごめんなさい」
「いや、いいよいいよ」
痛いところをついてしまった。なんかこうどうしてもいつものカリを見てると時々サイエン家だということを忘れてしまう。
気にしていなさそうだからいいけど。
「ああくそ! おりゃぁ!!」
「おっ!?」
セロナが切れながらガラを腕を掴んで上空へと投げ飛ばした。
「はぁはぁ、いい加減にしろ!」
地面にきれいに着地しているガラに指をさしながらセロナは声を荒げた。
「ま、確かにそれもそうか。テンションが上がりすぎるのは駄目だな、うん。では改めて。俺はガラ、ガラ・オルカ。オルカ家次期当主だ! 客人なら歓迎しよう、海の街サーペントにな!」
服についたほこりをはたきながら手を胸に当てガラは笑みを浮かべながらそう答えた。
◇◇◇
「ベル様、ガラの奴が接触をいたしました」
オルカ家宅の執務室にてベル・オルカは部下のラサ・セルバという男に差し出された水晶を通して眺めていた。正確にいうと水晶に刻まれた魔法陣に魔力を通して空間魔法【観察眼】を使用しキュウクたちの様子を見ている。
「あいつ、次期当主なんてあとで説教だな。ん? あれは……」
呆れたため息をつき映像をつまみ感覚で見つつ資料に目を通していく中、ベルは一人の少女に目がいり見開いた。
ベルが見た少女はミストであった。
ミストの姿を見て資料の上で踊っている筆の動きを止めた。
「ラサ」
「なんでしょうかベル様」
「この水色髪の少女を実際に見に行く。準備だ」
「承知いたしました」
壁にかかっている黒を基調に赤のラインが裾に水が流れるように描かれているローブと刀を持ち出す。
「勘違いじゃないといいが‥‥‥」
そう呟きながらベルは部屋を出ていく。
執務室の棚にはいくつかほこりが被っている写真が飾られている。それは幼き日のベルの頭をワシャクシャに掴み笑っている男たちの様子やある船の甲板での宴の様子がなど様々あり‥‥‥そしてそこにはミストにそっくりな顔立ちの少女がいた。ベルと隣に並んでいる写真、酒を飲んでいる写真などほぼ九割の写真にその少女が写っていた。
くすんだ水色でセミロングの髪に海賊帽を被っているその少女の名は―――




