第六十五話 掃除と気持ち
クーとセロナ、カリの三人と暮らすことになり今は全員それぞれの個室をそれぞれで清掃している。
とりあえず僕の部屋はある程度綺麗には出来たけどもクーとか大丈夫だろうか‥‥‥‥‥‥ものすごく、この上なくイヤな予感しかしない。
「クーガなんでそうなるんだ!」
「知らないよ! ここは私の部屋だよ邪魔しないで!」
はい予想的中‥‥‥いくらなんでも早すぎじゃないでしょうか。呆れつつも部屋を出て声がした方へ向かう。
◇◇◇
「おいっ!! クーガお前どうしてそうなる!?」
「いや分かんないって、うぉっ!?」
絶句したという言葉が一番似合うのだろう。それぞれで掃除を始めて丁度一時間いくかいかないかくらいなのだがクーの部屋は見事なまでに汚れていた。
あちこちに散らかってる紙くずやほこりに日用品のもの、そこに元々の汚れも相まって普段以上に汚かった。普段はうわっ散らかってる‥‥‥程度で済むのだがこれはほんとやばい。
セロナは恐らくすぐに掃除を終えてクーガの方を見に来て手伝っているのだろう。ただ、セロナが物を片付けるたびに何故かクーガがすっころびセロナが綺麗にした分以上にさらに散らかしている。
「何があったのキュウク君‥‥‥ってなーるほど邪魔したかな?」
「別にしてないと思いますがね」
カリが横から声をかけてきた。藍色のジャージを着ながら頬に若干な汚れがついて青いタオルを首元にかけていた。
「キュウク君は終わったの?」
「大体は。あなたはどうなんですか?」
「ボクは最初は綺麗に片付ける派なんだよ。まあどうせ後で散らかるけどセロナちゃんに頼ればいいでしょ」
絶ッ対セロナ切れるからな。逆に今のカリの部屋を見に行きたい、とても気になる。綺麗なカリの部屋ってどうなっているのだろう。
「おい、そこで見学してる科学バカと狐? 手伝え」
「はいはーい」
「分かりましたよ」
その笑みから漏れ出てる怒りがとても怖い。とにかくこいつを縛って抑えろというのがセロナから聞こえてくるような。
「すこーし静かにしよっかクーガちゃん」
「創造使用、クー黙っててください」
「ちょっカリにキュウ!? うぐぅっ!?」
カリが後ろから近寄り腕組をして抑えているところを僕が創造を使って創った縄でクーの身体をぐるぐると縛る。余った勢いのまま床に倒れたのだがそれでもクーはバタバタと手足を動かし暴れていた。
「ここは私の‥‥‥!」
「ああそうだな、ここはお前の部屋だ好きにすればいい」
「そうだよね! だから‥‥‥」
「けどこのゴミの量は駄目だ。ただでさえまだ色々生活基盤が揃ってない状況でな。キュウクとカリ少しこいつを外に出しといてくれ」
セロナに言われるがまま僕とカリは縛ったクーを持ち上げ部屋を出ていく。
「離してふたりとも!」
「「‥‥‥」」
なんと偶然にもカリと無言で無視するという選択が重なりクーを連れて行く。何故かここで喋ったら後ろで獣のような殺気を向けているセロナさんからホントに殺されるような予感がしたから。
いや獣なのはセロナは獣人だからか。ははっ乾いた笑いが出る。
『あ? キュウク?』
『すんません殺さないでください』
念話で脳内に話しかけてきたセロナは重々しい声だった。怖いあの夢と張り合えるくらいには怖い。特に悪いことはしてないのだが本能的に謝ってしまった。
解せぬ。
『早く連れてけ、しばくぞ』
『はい‥‥‥』
◇◇◇
一時間後、僕はカリと台所の掃除をしていた。洗面のところを僕が魔力を通して使うコンロの部分をカリが掃除していた。
普通に魔法の水や火を使って料理してもいいのだが安全性や効率を考えるとなんやかんや魔方陣が描かれたものを使う方がいい。
「ねぇキュウクくん、今さ魔方陣描く用のペン持ってない? コンロの魔方陣若干はがれてるんだけど」
「うーん、昔一回買いましたけどタイミングが無くて捨てたんですよ確か」
「ああやっぱり? 高いわりに使う機会ないよねぇあれ」
「そうですね」
コンロや照明などに魔力を通すための魔方陣を描くためのペン、正式名称は覚えてないが使い勝手以上に値段は高いし使うタイミングもそこまでという微妙なものだった。
「んじゃ、今日はキュウク君の手料理は食べれないか」
「です、‥‥‥‥‥‥ってなんで僕が作る想定なんですか!?」
「ええっ!? 作ってくれないの!? クーガちゃんが今日はキュウク君が作ってくれるって話してたんだけど?」
「なんですかそれ!?」
ちなみにクーは今セロナと浴槽の掃除をしに地下へと向かっている。水はまだ繋がっていないため自分達で入れて沸かすしかないだがなんだろうか、さっきのことも考えて喧嘩にさえなってなければいいんだけど。
最悪の場合、この家が崩れ落ちる。
「ちぇ、キュウク君の料理気になったのに‥‥‥‥‥‥ねぇキュウク君」
「? なんですか?」
いきなりカリの表情が険しくなった。思い当たる節はぱっとは浮かばなかった。
「‥‥‥んーやっぱなんでもないや。あっそうだボクバックからインクを作るための材料取ってくるね」
「そうですか、‥‥‥それを理由に逃げないでくださいね」
「いや分かってるって」
そう言い残しカリは駆け足で自室へ戻っていった。何を言いたかったのだろうか。流石に聞く気にはなれないので黙々と掃除を続けるとしよう。
◇◇◇
ああもうなにやってるんだろうボク。この胸がもやもやする気持ちキュウク君になら話せると思ったのにいや話そうとするとどうして止まっちゃたかな?
一階の浴槽の手前付近にある自分の部屋につき材料をとりながらボクは胸を押さえていた。最近、何故かもやもやする。言葉ではうまく表現ができない。
もやもやするようになったのはサイエン家のいざこざが一段落してセロナちゃんたちの自主退学について知ったときくらいだろうか。
エルクやリベラお姉ちゃんならこのこともわかるのかな?
「うぅ気になるぅ」
こうして自分のことを気軽に考えられるのは嬉しいんだけどね。
「あとはこれかな」
材料を揃えボクは廊下に出ていく。気持ち足取りは軽やかだった。
「カリ! なんかあったの?」
「! なんだクーガちゃんか別になんでもないよ」
後ろからの声にびくっと少し驚きながらも振り返るとそこにはクーガちゃんが重そうな瓦礫を持って立っていた。
「なにその瓦礫?」
「いやさセロナと一緒に今崩れてた瓦礫を撤去してるところなんだよ!」
「へぇー」
元気だなぁ、ホント悩みなんて持ってなさそう。‥‥‥! そうだクーガちゃんにならこのもやもや打ち明けるのでは?
「クーガちゃん」
「ん? 何?」
「もしだよ、胸がこうなんかもやもやするのってなんでだと思う?」
「うーん‥‥‥」
眉間にシワを寄せ真剣に考えてくれていた。正解の返しが出てくるなんて思ってないけどなんかヒントになることでも返ってくればありがたいけど。
「気になっている人がいるとか?」
「‥‥‥‥‥‥!?」
ど、どどどどいうこと!? 想像打にもしない返しが来て理解するのに時間がかかった。
「だから好きな人がいるとか? って言ってるよ。確かねお母さんがお父さんと告白?するまえとか胸がもやもやしたってお母さん言ってたんだ!」
「あっあぁそう、なんだ。なんかありがとねじゃあ頑張って」
「うん!」
クーガちゃんは瓦礫をもち足早に外に出ていった。残されたボクは床にしゃがみこんだ。
「す、好きって一体‥‥‥?」
今ボクは頬を赤らめているはずだ。鏡を見なくても分かる気がする。
「まさかボクキュウク君のことが‥‥‥?」
いや、いやいやいやないない。だってキュウク君はただの友達だよ。そんな異性として見れないって何考えてるのボク?
それにもしそうだとしても今までそんなこと思ったことないじゃん。
「そうだよ、そんなはずない。うんだよねボク」
『‥‥‥かもな』
軍服のボクに聞くと少し間が相手から答えが帰って来た。軍服のボクとはなんやかんやこうして話せるくらいの関係になった。
『感情はボクにも基本共有されるから厄介だ。はやく治せ』
「そう言わないでよ。よく分かんない感情なんだから」
うん、治せと言われても方法が今はまだ分からないからどうしようにもないんだ。
『ならキュウクに告って見ろそれで終わりだ』
「い、いやいやそそそんなことじゃないから!?」
ものすごく動揺した。脳内で喋ってるだけなのに動揺が手に出てしまいぶんぶんと振ってしまった。
『はぁ、まぁ嫌ならボクが代わりに告っといてやろうか』
「! いや君を外に出すなんて危険‥‥‥」
『あれは戦闘の時だけでサイエン家に居た時も夜こっそり代わってリベラ姉さんに会いに行ってたぞ? 聞いてないのか?』
初耳情報でさっきまでの気持ちがどこかに吹き飛び唖然としていた。お姉ちゃんからも聞いたことないんだけど。
『で、いいのか? いいんだったら今すぐにでも告ってるが』
「だ、ダメ! ダメだよ! なんかその、えっと‥‥‥とにかくだめだからね!」
『そうか、ならせいぜい自分で頑張れ』
会話が切れボクは顔を赤らめながら廊下を歩いて行く。このもやもやする心を残しながら。
あと一話あと一話だけ出せる気がする! 多分、セロナ視点での様子かな?




