第七話 矢と魔法の戦場で輝く者
2025年11月2日 読みやすさの改善及び脱字を修正。
空気に緊張した魔力が流れる。息の一つ一つが重く流れる。
そんな時、クーが行動を起こす。
「鬼式流 ・・・」
クーが自らの魔力を使い剣を形成し、突っ込む用意する。
その隙を見逃すほどの甘い敵ではなく、その隙に合わせて全員が動き始める。
「居合鬼り!」
クーが勢いよく切りかかり、それが危険だと感じたのか土の壁を何枚も作るがそれを壊して壊してクーは前進していく。それでも勢いは徐々に落ちていき三人の体に届くことはなくコルドの大剣で止められ、激しい火花が散る。
鬼式流・・・鬼族本来の力を利用する剣の流派の一つ。
「まったく、あの人は」
僕はあきれながらもクーの次の行動に合わせるように動く。ユウカが指向性のある弓を何発も放ち、近寄るのに苦労する。
クーは後ろに下がり次の攻撃を仕掛けようとする。前に出ようとした瞬間、クーの足元で魔方陣が発生する。
「お嬢様、下がってください!」
クーは一歩後ろに下がり、直後クーの足元の岩が勢いよく爆ぜる。
「あっぶな~~」
クーが冷や汗をかき、緊張感がより一層上がる。
「チっ!外したか。めんどくさいな」
コルドが舌打ちをしていたので爆発の魔法を使ったのはコルドだと分かった。となるとさっき洞窟を壊したのはコルドだなと頭の片隅で思い、戦いに集中する。
動きを止めた僕にリバルが襲いかかる。力強い複数の拳が僕に殴り掛かる。
「キュウク、私の手を煩わせるなといっただろう爆発!」
リバルの拳を受け止め、魔方陣を展開し、リバルに対して、数々の爆発が襲う。
リバルは軽々避けユウカの前に立つ。
「セロナ、感謝します」
「感謝するほどではない。強者として正しいことをしただけだ」
セロナに感謝し後ろに下がる。こういう展開が10分間続き、膠着状態になっている。
◇◇◇
「セロナは中央突破お願いできますか」
セロナだったら、真ん中を突破できると思ったので、お願いしたら、‥‥‥それが崩壊につながった。
「私に命令するな!」
急に激怒して、隙ががばがばのまま突っ込み始めた。
「ばかっ!」
止めるのも遅れて、先へ先へとセロナが進む。
ユウカが何発も矢を打ち、それはセロナの自動防御魔法で防いでくれているが、
「もう限界だろ」
コルドが大剣を大きく振るいセロナに当てようとする。
「そんなもの何度やったって効かない!」
セロナが効かないと思い余裕をもって行動する。それが誤りだった。パリパリと魔法の壁が崩れていきセロナにあたろうとする。
「危ない!」
僕がそれを言う前にクーが行動しセロナにあたる攻撃を庇う。
「お嬢様!」
普通なら受け流せるような攻撃も疲労が重なっていたためもろに攻撃を受けクーは岩にぶつかり、右腕につけた魔道具が赤く光った。
「ごめん、しくった」
そういい残しクーの足元に魔方陣が現れやられた人が集まっているところに飛ばされた。そんなことも気にせずセロナは敵を倒しに行った。
「止まれセロナ!」
大声で止めてもセロナは敵に向かう。
「まだまだぁ!!」
もう限界のはずなのに数々の魔法をはなつ、火のツララに雷のツララなど様々なツララが放たれては壊されてを繰り返す。
どうやってもセロナは止まらないので魔法を使う。
「入れ替え!」
後ろの岩と僕、セロナを入れ替える。
ちょうど、セロナの魔法の影響で周りは見えにくくなっているで時間は稼げる。
「何をするキュウク!!あたしの邪魔をするな!」
「お前こそ、一回止まって状況考えろ!」
自分勝手な行動を続けるセロナに怒りが募り堪忍袋の緒がぶちぎれる。セロナは僕のいつもの様子からは想像もできない態度に驚いていた。
だがそんなものに意識を向けるほどの余裕は持っていない。
状況はクーが抜けたことで拮抗した。バランスが一気に崩れ、不利になっていく。
「お前は一人で動くしかできないのか!バラク家は一人で突っ込むことしかできないのか!?作戦を聞いてその通りに動けないのか!?お前のせいでお嬢様がやられたんだぞ!」
怒りをあらわにしバラク家そのものを否定する勢いで言葉を続けセロナに怒鳴る。
「はぁ!?あたしは強くなるために行動した。助けなんかいらない!作戦なんていらない!キュウクあんたはクーガが死ねば自分も死ぬのか!あたしにはスチラー家の考えに吐き気がする!何が調和だふざけんな!あたしは最強になるために動く!」
僕とセロナの意見拮抗する。僕の言葉にセロナが強く反発する。
「最強ってのは、助け合いも出来ない奴なんかになれるわけないだろ!」
僕の強気の姿勢にセロナが急に黙る。
「お前はもうここに留まっていてくれ。捕縛」
腰のポケットから蜘蛛の糸を出し、セロナを捕縛した。
「なっ!?外せキュウク!」
「それは無理な要求です」
その蜘蛛の糸はクーが作った糸で本当に何かあった時に使うもので、そうやすやすと外れるほどやわな粘着性ではない。
セロナにそれだけ言い残しセロナの周りに土の壁をドーム状に形成し、敵に向かっていった。
◇◇◇
「さて、やりますか」
片眼鏡を外し、髪や生えている耳を漆黒の色から濃い金色の色に変え、尻尾もはやした。
普段は絶対に他人に見せたくない姿。
「味方はどうした、仲間割れか。どうした攻めて来ないのか?降参するか?」
リバルが警戒しながらも、こちらを挑発させる。その挑発に乗ることはなくただ一言。
「あんな奴、いない方が都合がいい」
冷酷な光り輝く金色の瞳を相手に向けながら行動を始める。
「コルド後ろ!」
ユウカがそういうと、コルドは後ろに大剣を構え、後ろに現れた僕の拳を受け止め後ろに衝撃を抑えるために後ろにとんだ。
ユウカが反応するのがほんの少しでも遅れていたらコルドはやられていただろう。
「まさか、ヒビが入るとは。めんどくさいな」
コルドは自分の大剣を見ながら言う。確かにヒビが入っているが、壊せなかったら自分の中では今の攻撃は0点だ。
「次は‥‥‥」
僕はリバルに目を落としながら、リバルの後ろに回る。
「虚無なる破壊」
燃え盛る炎の弓を再び構え実技テストで放ったやつよりも強く、速い矢を何発も放つ。
むろんこの技は集中してこそ本来の実力を発揮するのだが、クーがいない今この場所がどうなってもいいので連射する。
「重い一撃」
ユウカがリバルに背負わせられながら、一撃の矢を打つ。
その矢は僕が打った矢の一本と当たり半径二メートルくらいに強い重力の力場を発生させる。
連射したうちのほとんどがそれによって止められるが、2、3本は突破しリバルの背中に襲いかかる。
「しょうがない。これは捨てるか」
そういいコルドがリバルの背中に高速で移動しヒビが入った大剣を前に突き出した。
その大剣に重力の力場を突破した数本が当たり、大剣としての形を残さないほどに捻じ曲がる。コルドは腰から別の剣を抜き構えた。
「そのチームプレイは厄介だな」
僕は小さくつぶやき、次の攻撃について考える。一人やれれば一瞬で崩せるだろうけどそれが難しいな。
ユウカが相手の動きに反応し、コルドがそれを防いで、リバルが攻撃に移る。厄介だ。なら、あれを使うか。
「第二d…」
その時、ドカーンとセロナを閉じ込めていた場所が激しい炎が燃え盛りながら爆発した。
燃え上がる爆炎の中からセロナが肌を火傷をしながら歩いてくる。
「まじか‥‥‥!?」
その光景に驚きを隠せず、言葉を漏らす。
◇◇◇__数分前
「それは無理な要求です」
その言葉を最後に暗闇が光を覆う。
「くそ!どうする、どうする」
この状況に悔しさと焦りを覚え、まともに動かせない手足をバタバタと動かし、どうするか考える。
嫌な考えが真っ先に浮かんだ。
「バラク家の考えが‥‥‥あたしの考えが間違って‥‥‥る?」
そんな考えはすぐに振りほどいた。けど若干の疑問が心に残る。
「最強ってのは最強ってのは・・!」
最強とは圧倒的個の力、助けられるなんてもってのほか。助けられるなんて‥‥‥
キュウの言葉に自分の何かが大きく揺さぶられている感じがする。
「助けられるのも最強につながる‥‥のか?・・・」
小さい声で静かにつぶやいた。
二ヶ月クーガとキュウクといっしょに行動を共にして助けられるのもいいのかという気持ちが湧いてきた。
「助けられることも‥‥‥強さの一部なのか?いや‥‥‥けど、それは」
複雑な感情がセロナの中で今、セロナを縛っている蜘蛛の糸のように絡まる。
自分を縛っている蜘蛛の糸が緩くなって簡単にほどけた。
頭を手で強く振るい、自分の中の複雑な迷いを振りほどく。複雑な感情を考えるなんて自分らしくない。
「この状況を壊してから、それからだ。それから後のことを考える」
それがあたしだ!
心の中で強く拳を握り、魔法が発動する。
「爆発」
密閉された空間、使ったら無事ではない。けど!そんなことは考えない、ただただこの空間から出る事だけを考える。
発動すると、空間が赤く燃え土の天井を壊し、服の一部が燃え火傷を負う。
光が差し、燃え盛る炎の中を一歩一歩力強く歩き炎を脱出する。
◇◇◇キュウクside
炎の中から出てきたセロナはこっちに来た。
「よく出て来れましたね」
「お前のおかげで多少は考えを改めたよ。感謝するよ」
ぼろぼろになりながらセロナはそういう。
「キュウク、あたしは何をすればいい」
「えっ!?今…なんて?」
セロナからは聞くことができないと思っていた言葉が出てきて、緊張感が抜け間の抜けた声を出す。
「だから、あたしは何をすればいいかって聞いてるんだよ。どうなんだ」
「変わりましたね」
前のセロナと変わって自分で好き勝手に動こうとせずに話を聞こうとしている。
「変わって悪かったか?キュウク」
口調は多少は変わっていて、その心も変わっているように感じた。
「何も。では、コルドの動きを少し止めといてもらえますか。」
「了解。あたしの行動に感謝しろよ」
前言撤回、口調は一切変わってない。
セロナと僕が前に進み、敵を倒そうとする。
ユウカが僕たちに向かって矢を連発する。
最初の時より速度が下がっていて綺麗にすべてをよけきる。
「氷柱雨」
先程よりも小さいが鋭く早い氷柱を放つ。
コルドはそれを全て叩き落とすがそれが狙い。
コルドの体にセロナが触れる。
「移動!」
セロナとコルドの体が光り、ここから200メートルほどのところに飛ばした。
「これで楽になる」
リバルとユウカを前に立ちそういった。
◇◇◇
「分断されたか。めんどくさいな」
コルドがそういいセロナの方を見る。
「来ないのなら、こっちから行くぞ!破壊の氷!」
セロナが魔法を発動しコルドの真上に魔方陣を発生させる。
「氷は、もう見飽きたよ」
剣を上に構え降ってくる氷塊を切ろうして上に飛ぶ。
その時、コルドの真下の地面に別の魔方陣が現れる。突然の魔方陣の発生にコルドは混乱し、一瞬のスキができた。氷塊がコルドの体にクリーンヒットし、腕につけている魔法具が赤く光りクーのいるところにコルドも転移する。ちなみにコルドの真下に発生した魔方陣はただの偽物だった。
「ふぅー、これでいいんだなキュウク」
深呼吸をし、キュウクのいるところに走り始めた。
◇◇◇キュウクside
「分断しただけで勝てると思うなよ」
リバルが誘導でユウカが隙を狙って打つ方法にシフトチェンジした。
ユウカの数々の矢を華麗に避け、リバルと対峙していた。
「その体術戦法、鬼式流の一つだろ」
「それがどうした!」
「いや、それなら対処は簡単だなと思ってな」
少しだけ笑い、リバルの拳を受け流しスキを伺った。鬼式流は王妃やクーがよく使うから何となくわかるんだよね。
「けどまぁ最後は譲りますよ。入れ替え」
僕の体が光り姿が消えて、走ってくるセロナがと入れ替わる。
「感謝するぞキュウク!爆発!」
セロナがリバルの顔に手を掲げ、爆発を起こした。リバルの顔が焦げ肩につけた魔法具が光り、コルドと同じところに飛んだ。
残ったユウカに目を向け倒そうとする。
‥‥‥その時、チャイムが鳴りこの時間の授業が終わった。
「終わりだ!がっはっはっ!」
それと同時にガンダ先生の声が訓練場全体に響き渡る。
「終わった~」
ユウカは終わったのを知ると殺意が無くなりかわいらしい女の子の声になって、腰の力をぬきぺたりと座り込んだ。
「終わりですか」
「終わりか。もう少しやりたかったな」
一気に疲れが押し寄せ体に疲労がおりてくる。セロナも口調は強気だったがとても疲れている感じだった。
こうして、今日の実践型の授業が終わった。




