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仕えるもの語  作者: マッド
禁忌あるいは、奇跡
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第五十五話 方法

 ◇◇◇キュウクside



「「カリ!!」」


 光が晴れると壊れてぼろぼろの学院の廊下が視界いっぱいに広がっていた。

 ところどころには多くの血が散らかっていた。

 それを見るだけでここで壮絶な戦いが起こったのが見て取れた。


 だが、そんなことなんかに意識を向ける事より目を引くものがあった。


 カリの姿がどこにもなく代わりに黒の軍服に紫色の髪の少女がいた。

 殺気なんて一切感じなくその雰囲気が逆に身体全身に危険信号を送るほどの悪寒がめぐる。


「カリをどこにやった‥‥‥!」


「そんなことこのボクが話すとでも? 笑っちゃうよボク」


 うざい。ただただうざい。へらへらと笑っているその顔がうざい。

 深呼吸を深くしながらいつでも動けるように集中する。


「もう一度聞きます、カリをどこn‥‥‥」

「だーかーら、このボクがそんなの話すわけないよ。あっ! けど土下座でもしてくれれば話してあげるけど」


「どこにやったの‥‥‥」

「クー?」

「? なんだって?」


 隣に立っているクーの声が静かにけど確かに力強く廊下に響いた。


「どこにカリをやったの!!」


 瞬間、大声が少女に向けて放たれた。


「まぁそこまで言うんだったら教えてあげるよ。そのカリって魔族はボクの器となったよ。帝級の悪魔の器となったんだから本当ついてるよこの肉体」


 は? カリは‥‥‥カリは‥‥‥!!


「カリは僕たちの友達だ!! 決してお前の器なんかじゃない!!」


 怒りに身を任せて刀を振りかざしながら少女に斬りかかった。


「へぇやる気じゃんか、ねぇ!!」


「ガハッ‥‥‥」


 刀を片手で止められた。そしてそのまま横にいとも簡単に身体ごと壁に投げられた。


「キュウ!」

「次は君だよ、ってね」


「うっ‥‥‥!」

「意外とやるじゃんか」


 少しぼやけている視界から見えたのは少女の拳を剣で受け止めているクーだった。僕もすぐに起き上がり刀とは別に弓矢を取り出した。


「君たちのさ求めているカリって子はボクの肉体になった方が幸せなんじゃない?」


 は? 何言ってんだこいつ‥‥‥!


「「ふ、‥‥‥」」


「何だって?」


「「ふざけるな!!!」」


「鬼式流 居合鬼り!」

重い矢(ヘビーショット)!」


 僕は矢を放った。確かな殺意をのせた一撃を放った。


「あぁうざったいなぁ‥‥‥っ!?」


 弾かれると思ったその瞬間だった‥‥‥少女の身体はぐらっと揺れてがわき腹をかすってクーの剣も少女の頬に傷をつけた。


「あぁクソ、トリガーお前上級風情が‥‥‥!」

「うっ‥‥‥」


「クー!」


 少女はすぐに身体を持ち直しクーを後ろへと払った。そのクーを僕は急いで身体を動かし抱くように抑えた。


「あっありがとうキュウ」

「どういたしましてですけどどうします?」


 あの少女は強い。それは認めるしかない、でもカリが取り込まれているなら絶対に助けないと。


「ねぇキュウ、精神に入れる組み合わせ持ってない? あればカリをたたきだせる」

「いやそんなの持ってないですよ‥‥‥」


 事実、僕の能力は物理的に関与する系統が多いので精神に関与する組み合わせどころかそもそも関与できる能力自体がない。

 いや『破壊(センゴク)』ならできるちゃ出来るだろうけどそれは壊すだけであって‥‥‥。


「そっかぁ、じゃあキュウお願い、カリを助ける方法を考えて。私の従者なんだからそれくらい出来るでしょ?」

「それは‥‥‥! 分かった、いや分かりました。その代わり‥‥‥」

「少し踏ん張っててことでしょ!」

「頼みます」

「もちろん!」


 クーは立ち上がり少女に向かって突撃した。


 それだけ見て僕は自分に任されたことに集中する。


 回せ、頭の中を細胞を全速力で回転させろ。


 第二段階『加速(アクセル)』、第四段階『吸収(カレン)』同時使用__『超加速(ブースト)』発動。


 脳が焼き切れる? そんなもん『知識(ブック)』使って細胞の形覚えてから『創造(デザイア)』で創り続ければいいんだよ!!


 少女を倒す? ダメだ、カリも死んでしまうかもしれない。『破壊』で壊すか? 駄目だ駄目ださっきも考えただろう。だったら『知識』でユグドラシルに入って最適な方法を‥‥‥時間が馬鹿みたいにかかるし弾かれて再度入室するのに時間を食ったら余計最悪になる。

 どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする?


 ふと自分のポケットに触れた。何か入っている。


 取り出した。それは澄んだ青色の液体が入った瓶だった。


 ついさっきカリにもらった瓶だった。


「どこかで‥‥‥」


 さっきもらった物だからだろう、そんな声が耳元でひっそりとささやいてくる気もするが確かにどこかで見覚えのあった液体だった。

 瓶の底を見た。


 そこには【シビレックス】と黒い文字で不器用にけど可愛く書かれていた。


「あっ‥‥‥!」


 思い出した、そうだ! なんで忘れた? カリと僕が出会うことになったあの忌々しい薬じゃないか。


「ハハッ、なんなんだよカリ(あいつ)


 殺してほしかったんじゃないのかよ。


 全能力、停止。


 僕は立ち上がりカリの薬剤やらなんやらが詰まっている部屋へ駆け出す。


 ◇◇◇


「あの子逃げたけど大丈夫なの君?」


 リリスは余裕そうにクーの剣戟を受け流し続ける。


「当然! 私はキュウを信じているから!」


 クーガはこの中でも笑い剣を振るう。それはキュウクがカリを助ける方法を見出したから__そうでなくても何か思いついたのだと思ったから。


「あっそっ」


 リリスはどうでもいいと言わんばかりに応えた。

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