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仕えるもの語  作者: マッド
禁忌あるいは、奇跡
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第五十話② 出会った夜

テスト終わりました!!!

《チーター! オクトパス!》


 エルクは二回レバーを倒すとベルトからチーターとタコの幻影が現れてエルクの装甲の足に吸収される


「はぁっ!!」


「‥‥」


 目で追えないほどに速い速度で墨を巻き散らせながらリベラに何度も何度も拳を打ち込む。リベラは防ぐのを諦めて無言で静かに深呼吸をしながらエルクの拳を受け続ける。


「舐めているのか、アホ天才(ジーニアス)。前より軽いぞ」


「なっ‥‥!?」


 その一瞬の衝撃が土埃を生む。土埃が晴れるとそこにはエルクの拳を正面から受け止めているリベラが立っていた。


「存外、昔の親友と殺し合うのは嫌なんだな。お前は本当に変わらなすぎだ、先輩が死んだときからな!」


《確・殺・連・鎖》


「‥‥‥っ!! ガハッ!?」


 リベラの言葉に仮面の下でエルクが一秒に満たない間だけ顔が何とも言えない困惑した表情になった瞬間、リベラはベルトのくぼみを一回押し込んでからエルクから手を離し腹部の装甲に赤い拳を連続でぶつける。そのたびに赤い閃光がこの夜に輝くと共に火花が散る。


「お前は‥‥お前は!! どうして先輩が死んだときも眉ひとつ変えず生活できたんだ!! そんな薄情な奴にカリを渡すわけにはいかない!!」


 十メートル以上先まで吹っ飛んだエルクに近づきながらリベラはそういった。


「そうだよ‥‥まったくもって同意するよ、君の意見は正しい。正しすぎるよ。あーもう、そうだよ!! 私は元々感情がなかったんだよ! けど! 君やクジサ先輩が私に感情を教えてくれた。だからこそ、今度は私がカリちゃんを救ってあげたいんだよ!!」


 エルクは身体がよろけ荒い呼吸もしながら立ち上がり仮面の下でまっすぐすぎる目を輝かせる。


「ふざけるな!! 何も知らない、それこそ今日出会ったばかりの奴がでしゃばるな!!」


《確殺‥激殺‥‥必殺!!》


 激高してリベラはベルトの頂点についている赤いボタンを三回連続で壊れる勢いで押す。するとリベラのベルトから拳に赤いエネルギーが伝わっていく。それと同時に装甲に纏わっている火車もその右拳へと移動していく。


「逆に君は変わりすぎだよ、だから止めてあげるよ。それがせめてものクジサ先輩へのけじめだ」


《ライオン、ゴリラ、ワニ、トラ、サメ、タカ、カブトムシ‥‥‥》


 エルクはそういいながらベルトのレバーを何度も何度も倒す。そのたびに様々な生物の幻影が現れていく。そして、左拳へと幻影たちの力が集まっている。


「はぁはぁ、これで実験‥‥終了だ」


《オールオールオール!! フルユニゾン! オーバーフィニッシュ!》


「あぁそうだな! これで終わりだ!!」


 エルクとリベラどちらも相手に向かって風を置き去りにするような勢いで突っ込みながら拳をぶつける。


 黒い閃光と白い閃光が衝突し真っ暗の夜が昼のようになる、‥‥はずだった。


「「!!!??」」


 エルクとリベラ二人の拳を手で止めていたのは10歳くらいに見える赤髪の少女だった。その光景がありえな過ぎて二人も後ろに下がった。


「あはは、流石は学院を救ったと言われているかの三英傑の内の二人。流石の余でも手を使って完全には防げないとは」


「誰だ、お前」


 笑っている少女に対して先に口を出したのはリベラだった。エルクは少女の身体を観察していた。


「余はねぇ、『神に反逆する者(プロメテウス)』っていう組織の『喜怒哀楽』怒り担当のドン・アジサイって言うんだー。影武者もドンって言うからさアジサイって呼んでね」


 少女__アジサイはにっこりと笑いながらエルクの方を見た。正確に言うならばエルクのバックルの方を見た。


「あっそれがワールドコアの一つなんですね。イデア様復活に必要なパーツの一つようやく見つけました。これでキン様喜んでくれるかなぁ」


「ワールドコア? まさか君、このバックルの構造を‥‥!?」


「あはは、それはどうでしょう。知ってたとしてもそうじゃないにしても、余は科学者の端くれですから見ただけで大体の構造を理解できますよ。余はね極力人殺しとかはしたくないんだよ。だからさそのバックルをくれればお二人の命は取りませんから」


「「ふざけるな!!」」


《ゴリラ! パンダ! チーター!》


《確・殺・連・鎖》


 エルクとリベラの声が怖いほどに綺麗に重なった。それと同時に二人ともアジサイに急接近して拳をぶつけようとする。


「一科学者としてこのバックルを君みたいなやつに渡すわけにいかないね!」


「命を取らない‥‥だとわたしはお前より弱くなんかない!」


 考え方は全く違うけど、この瞬間の目的は同じだった。

 目の前の敵を倒す。それだけだった。


「じゃあもういいですよ。死んで」


 がっくりと頭を地面に向けるアジサイは迫マりくる二人をごみを捨てるかのように突然龍の尻尾を出して二人とも全くの同時に弾き飛ばす。


「うっそ‥‥!?」

「くそっ!?」


 突然のこと過ぎてエルクとリベラどちらともまともな防御や回避をできずに直当たりして後ろに吹き飛ぶ。


「いやあなた達くらいの命の結末くらい余が決められるんですからね」


 尻尾をしまいながらアジサイは静かにそういった。


「ふざけんなっ!!」


 深呼吸を一回してからリベラが何にも考えずただ本能のままに突っ込んでいった。


「おいフィジカルバカ止まれ!」

「離せ、エルク!」


 突っ込んでいくリベラの腕をエルクは強く握って掴んだ。そんなエルクにリベラは振り返って激しく怒った。


「フィジカルバカ一回止まって考えるぞ」

「はぁ!? そんなことする暇があるんなら‥‥‥」


「あのね余は早く仕事を終えたいんだ。だから余を差し置いて喧嘩とかされるとむかつく‥‥‥」


 もめているリベラとエルクを不貞腐れた表情でアジサイは見ていた。

 アジサイは、はぁとため息をついた後に先程より数倍大きい尻尾を出して二人とも叩きつぶすために上から勢いよく振り落とす。


「避けるよ、バカ」


 空を覆いつくようにも見える尻尾を見て冷静にそういいながらエルクはリベラの腕を引っ張ってよけようとする。

 だが、リベラの身体はまるで大岩のように一切動かなかった。

 は?まさかこいつ、そう思いながらエルクはリベラの方を見た。


「受け止める」


 エルクからしても衝撃の言葉がリベラの口から飛び出した。

 いやリベラらしくはあるんだが久々すぎて忘れていた。馬鹿なのだとつま先から脳まで筋肉で出来ている脳筋なんだとエルクは思い出した。


「はぁっ!? いや私のユニゾンシステムならともかく君の呪怨システムなら避ける方が安全だろ!」


 エルクの言う通りリベラの呪怨システムはとにかく攻撃に特化させているため守りには対して向いてはいない。

 だから、普通の戦闘なら避けに徹しながら攻撃をぶつけるのだが。


「甘いな、わたしはお前と別れてからも鍛えてたんだよ、はっ!!」


 そういいながら振り落とされる尻尾を拳一個で対抗した。


「は?まじですか」


 アジサイが拳で自分の尻尾が止められている事驚きの顔を隠せなかった。


「マジかよ、君‥‥‥」

 

 それと同じでエルクもアジサイまったく同じと言っていいほど驚いていた。


「ぐっ、これは‥‥‥」


 リベラの身体はほんの少しずつ地面にめり込んでいった。いくら強かったとしてもリベラは結局のところ一人の魔族。

 身体の数十倍下手したら数千倍はある圧倒的な質量の前ではただ鍛えただけの生物にはどうにもならない。この世界の常識である。


「さっきの言葉少しだけ撤回するよ。フィジカルバカ、君にも変わってない部分があったんだね。肩借りるよ」

「は?」


《ファイヤー!! パワーユニゾン!! アッチィィィッ!!》


 エルクの足に真っ暗なこの夜に熱く燃え上がるエネルギーが溜まっていく。

 一つだけ息を吐き勢いよくリベラの肩を土台として回し蹴りを尻尾に当てる。


「はぁぁぁぁ!!!!」


 尻尾は勢いよく空へと吹き飛んだ。


「ははっ超むかつく。だるいなー。なんで余が‥‥‥」


 その光景を見てアジサイは乾いた笑いをした。それと同時にどこからともなく青い指輪を取り出した。


「こんな奴らに指輪使わないといけなのかな‥‥‥アクト『水』」


 アジサイは右指に指輪をはめる。はめると指輪から魔方陣がひっそりと青く浮かぶ。

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