第四十三話 帝級の悪魔
カリの一撃がスーラに当たるその瞬間、カリの瞳が紫色に変色して足がピタっと少しでも動いたらスーラに当たる所で止まる。
足を元の位置に戻して、自分の体の隅々まで興味深そうにさわる。
「うん、いい感じの肉体かな。時間をかけて育てた意味があるね」
その声はカリに酷似していた。だが、その行動や言動は別の何かが乗り移ったようなものだった。
「さてと、どうしますか……」
カリらしき人物はスーラの方を見る。
「あぁ、スーラか……うーん……」
カリらしき人物はバッタたちに妨害されているスエイとリンを横目に電流によって座りながら気絶しているスーラの顔を覗くようにしゃがみ腕を組んで考える。
「レインの配下だし……殺しておくか」
カリらしき人物は満面の笑みを浮かべながら恐ろしいことを淡々と言い指先に紫色の液体を生み出してスーラの口に入れようとする。
「「やめろ!」」
リンとスエイが同時にバッタ達の妨害をなりふり構わずに突破してカリらしき人物を殺す勢いで近づく。
「は?黙れよ、雑魚がたてつくな」
カリらしき人物が後ろに振り向いて手の平を上から下へと振り落とす。すると、
「クソ……が」
「ウッ……」
魔力による上からの単純な圧力でスエイとリンが地面に倒れ込む。
「あれ、調整ミスったかな。まぁいいや、これからは雑魚が帝級に歯向かわないことだね。ホント、ボクで良かったね、ラグナかレアだったら君たち死んでたよ」
カリらしき人物がリンとスエイに近づき面白がるようにしゃがんで笑っている。
「その目……まさか……疫病様じゃ……」
リンはカリらしき人物の瞳の色と自分たちを圧倒するような悪魔で彼女が帝級の一人疫病__リリス様だと判断する。
「誰がしゃべっていいって言ったかな」
リリスは笑みを顔から消滅させて冷酷な表情を浮かべて立ち上がりリンへの圧力を強める。
「がはっ」
リンが血を吐きながら地面にへこみが浮かび上がるほどの圧力で地面に倒れる。
「そうそう、それでいいんだよ。雑魚は雑魚らしく地面にくっつくのがお似合いだよね」
リリスは笑みを浮かび直してスーラの方に近づく。泡の小悪魔たちがリリスに立ち向かうがどうでもいいとばかりに壁にはじいていく。
「さて、殺しますか」
リリスが球体の液体をスーラの口に入れる。
「はーい、よく飲めましたね」
気絶したままのスーラが飲み込むところを見届けてリリスが中腰で人形を可愛がるようにスーラの頭をなでなでする。
「なら次は……」
リリスが後ろに回り指で魔方陣を書こうとスーラの背中に指を当てる。
「そこまでですよ」
突然、リリスの腕を背中から青と半透明な水色が交差している瞳を宿した黒の長ズボンと白シャツを着た女性が現れる。
「はぁ、めんどくさ」
リリスは振り向かずにその声だけで誰が来たのかが分かり手をスーラの背中から手を放す。
「なんで来たのかな、レイン」
「なんでって私のスーラを殺させないためですよ」
そういうと、レインは指でスーラの体から半透明な紫色の液体を取り出して自分の近くまで動かす。
「これで大丈夫ですね」
レインはそれを解析して無害な水に変化させる。
「あーあ、せっかくいいところだったのに!邪魔すんな!」
「そういうなら悪魔らしく、力づくでやったらどうですか、最も今のあなたに出来ないでしょうね」
「くっ……」
レインの言葉は正しかった。リリスはついさっきこの世界__現界に来たため力を蓄えてられておらず、数百年前にすでにこちらの世界に来ていたレインと戦ったら恐らく負ける。
「ここで戦ってこの場で死にますか、リリス」
その言葉にリリスが一瞬考える。
「いや、戦わないね。ボクはバカじゃないんだ。メアやラグナと違ってね」
「賢明な判断ですね。流石はリリスです」
レインはリリスの判断をほめながらリリスをおもちゃのように抱いて頭を軽くなでる。
「ちょっ!?子供扱いすんなし!!」
リリスはレインのに憤慨して力強く振りほどこうとするも振りほどけない。
「ふっふっふっ、あなたは帝級の中だと一番フィジカル面が弱いのにプラスしてこっちに慣れていないなら私の力でも振りほどけませんよ」
「ぐぬぬぬ……」
そして、これからこの状態が続いた。