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仕えるもの語  作者: マッド
禁忌あるいは、奇跡
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第三十九話 始まるハザード、氷の涙

 自分の後ろからジパングで感じたカリのどす黒い魔力を振り向かなくても背中を通してじかに感じる。


「カリ!」


 カリを心配するようにセロナは後ろに振り向こうとする。すると、カリの機械じゃない方の腕がセロナの肩の上に乗っかかる。


「ごめん、セロナちゃん……」


 セロナの目に移ったカリの姿は黒色のロングコートで身を包み青と赤が交差しているの短い髪が黒一色に変わっていた。その姿を確認すると共にセロナの足元に青い光を放つ魔方陣が浮かび上がる。


移動(テレポート)


 セロナの体だけを魔方陣からあふれる光が包みセロナはそれが何を表しているのかが分かった。


「カリ!お前も……!」


 セロナは一線の涙を流しながら無理して作った笑みを浮かべているカリにいう。


「ごめん……」


 セロナの掛け声にカリはにっと笑いながら返す。

やめろ、やめてくれ……セロナはその顔を見て言葉が出なかった。代わりに一滴の涙が出てボロボロの頬を伝って地面に落ちる。


 ◇◇◇


 次の瞬間にはさっきまでいた魔王城の訓練場の景色が移り一瞬だけきょとんとして、その次に訓練場の芝生に膝から倒れて突っ伏す。


「ああああああ!!!!」


 セロナは大粒の涙を大量に流しながら、何度も、何度も何度も芝生を強く自分を殴ろうとする勢いで、手の皮がむけるまで叩き続ける。


「あたしが!あたしがああ!!!」


 ただただ、自分が弱かったことに、カリを守れなかったことに嘆き悲しんだ。自分にはもう魔力が残っていないし体はもう動けないほどに限界、カリを助けに行けないその事実を一秒一秒じっくりと長く感じる。


 ◇◇◇


学院で___


 セロナがいなくなったことで廊下を支配していた氷と冷気が一気に溶けて気温が上昇し暖かくなる。


「……スエイ、リン……後……お願い……寝る」


 スーラは温かくなったことに満足したのか泡の気泡を集めて椅子の形をつくりそこに優雅に座ってすやすやと寝始める。


「ちょっ、スーラ!ここからがいいところなんだよ!?」

「まったく、あなたはホント、自由ですね」


 スエイはスーラの体を少し突っついて、リンは腕を直しながらスーラの自分勝手な行動に呆れながらカリの方に目を向けようとする。


 その時、カリの黒い魔力で覆われた拳がリンの目の前に飛んでくる。


「は?」


 リンは困惑しながらも間一髪で顔をそらして避ける。カリはリンが立っていた所に着地し、リンに目を移す。その目はただ、目の前の敵を倒すことしか頭に入っていないような眼だった。


「これは最高だね!」


 スエイがカリの姿を見て、笑みを浮かべ手加減をせずに本気で殴り掛かる。その拳はカリが片手で軽く受け止めて蹴りをスエイの腹に入れて壁に弾き飛ばす。


「マジかよ‥‥」


 スエイが壁にぶつかった後に立ち上がり、強者と戦えることに喜びながらもそれ以上に蹴りによる一撃が重いことに驚いた。

 スーラはこの状況でも寝ているが泡の椅子から小動物サイズの泡で出てきた小悪魔たちが出てきて遠くに自分達の主を避難させようとスーラを起こさせないように椅子を引っ張る。

 カリは黒い魔力で出来たロングコートを安定させ長袖、長ズボンの黒い軍服にして身にまとう。

 そして、今、この状況で最も怪我をしていて倒しやすいと判断したリンに無言で攻撃を始めようとする。

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